第28話 色ちゃんで口論?
んー!よく寝た!身体をグッと伸ばす。あれ?私、布団で寝てたっけ?……多分、紫月が運んでくれたのかな。
「あっ色ちゃん起きた?」
『うん。今起きたばかり……』
半分寝ている状態だから、そのままスーっとまた寝てしまいそう……。
……色ちゃんが二度寝をし始める。いつもなら起こすけど、今日はやめておこう。昨日頑張っていたからね。でも、このままなにもしないっていうのはなんだかもったいない気がする。
だから、そっと色ちゃんの頭をなでなでする。すると色ちゃんが撫でている私の指を小っちゃい両手でキュッと掴んできた。……かわいい。そんな事を思っていたらグイスが来た。
『シヅキ、シキはどうなった?』
「どうしたってこうされているんだよ。ほらこれ」
グイスに掴まれている指を逆の手で指さす。
『……なるほど。しかし、シヅキだけずるいぞ』
「そう言われてもねー。色ちゃんは私を選んだみたいだからね」
『なっ!?……そんなはずがない!シキならば私を選ぶはずだ!』
そう言うとグイスは色ちゃんの近くに来る。そして自分の尻尾を色ちゃんのお腹にさわさわってすると私の指から手を離してギュッとグイスの尻尾を掴んだ。
『どうだ?シキは私を選んだみたいだぞ?』
どこかしら自慢げに言うグイスにちょっとだけイラッとした。
『……それはどうでしょうかね?私が一番です!』
いつの間にか来たクラーも何故か自慢げだった。
それから、私とグイスとクラーで誰が一番かを言い争っていると色ちゃんが起きたみたいで眠たげに言う。
『……んー?……なにしてるのー?三人とも』
「えっとそれはね……」
『誰がシキにとっての一番かを話し合っていたのだ』
私が言っている途中でグイスが割り込んできた……!?これは私に対する挑発かなんかなの?駄目だ、イラッとする。
「ちょっと、グイス!割り込んでくるのやめてよ!」
『ん?なんの事だ?……まさかシヅキたったそれだけの事で怒っているのか?そうだとしたら、シヅキは一番には程遠いのではないか?なぁ、クラー?』
『そうですね。そんな事も許せないなんて、主様の一番にはなれませんよ?』
「……ねぇ。誰が、色ちゃんの、一番に、なれないって?ねぇ?」
紫月が……!めっちゃ怒ってる……!凄く怖いです……。でも、私がなんとかしないといけない……。そんな気がするから、頑張る……!
『ねぇ、紫月聞いて……』
「色ちゃんは、ちょっと、黙ってて?私は、この二人に言わないといけない事があるから」
『ほう?言いたい事があるだと?だったら、さっさと言ってみろ!』
紫月に黙ってて言われちゃった。思ってたより、結構ショックだな……。もう、どこかにでも行ってこようかな……。そうしよう。何故か涙が出そうになったけど気のせいにした時
『どうしたんですか主様?』
『……』
私はクラーに返事をしなかった。フイっと顔を背けて丸くなる。もう、いいや。
「どうしたの色ちゃん?」
『どうしたんだ、シキ?』
返事はしない。黙っててって言われたからだもん。
「おーい!色ちゃん?」
誰がなにを言おうとも、私は返事をしない!そう、さっき決めた!
「ねぇ、色ちゃん?なんで、黙っているの?」
なんでって紫月がそう言ったから、そうしているだけ。……後は涙が出ないように堪えているからっていうのもある。思っていたよりも私はメンタルが弱かったみたいだった。
「……なんで色ちゃん泣いているの?」
いつの間にか紫月が私の目の前に来ていた。そして私を持ち上げてキュッと優しく抱きしめる。それでつい
『……紫月が黙っててって言ったせいだもん』
返事をしてしまった。……ヤバい、怒られる!と思って身体を強張らせた。
「そっかー。気付けなくて、ごめんね」
しかし、怒られる事はなかった。その代わりに頭を撫でられる。それでホッとして身体から力が抜ける。
『……おい。シヅキばっかりずるいぞ!』
「色ちゃんが良いって言うなら、そうするけど」
グイスが期待しているような目で私を見てくる。……これは行かないといけないのかな?それでグイスの所に行こうとすると、紫月にギュッとされて動けなくなってしまった。
「ほら、色ちゃんは行きたくないって」
『それはシヅキが動けなくさせているからだ。ほら、シキいくらでも触っていいぞ!』
『本当!?嘘じゃないよね?』
『ああ、勿論だ。嘘ではない』
私はそれを聞くなり、紫月の所を飛び出してグイスの背中に着地する。そしてグイスの毛の中に埋もれる。わーい!もふもふ!
色ちゃんがグイスをもふもふしている。もう何分か経った今も夢中になっている。
「色ちゃんが行ってしまった……。今すぐ取り返したいけど、あんなに楽しそうにしているのをやめさせる訳にはいかないし……」
『そうだろう!今の私に勝てる存在などここにはいな……!?シ、シキ……そこを触らないでくれ……!シキ、触る……のをやめ……!てくれ』
グイスがそう言っても聞こえていないのかそこをずっと触っている色ちゃん。
「……グイス、ドンマイ」
だけど助ける気はないからしばらく放置……もとい見守っていた。
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