第27話 紫月達による説教……

 ドアを開けて入った時に見えた紫月の顔が……怖い。なんで?私なにもやってないよ!若干涙目になりながらそう思う。


「ねえ、色ちゃん。私達が、どんな思いでここにいたか分かる?色ちゃんに置いて行かれて、その上で最悪色ちゃんが死ぬ。残される私達はどういう気持ちになると思う?」

『……ごめん。全然考えた事なかった』

「そうだよね。色ちゃんはいつもそう。私達が大切だから自分はどうでも良いみたいなことを考えているんでしょ?」

『……はい。そうです』


 図星だった。私がいなくても、みんなはきっと大丈夫ってずっと思ってた。少し考えてみれば分かる事なのに。本当に私って馬鹿だな……。

 紫月は、はぁーっとため息をついて


「……どんだけ、薄情だと思われているの私達。少なくとも、そこにいるスライム……ライだっけ?は分からないけど色ちゃんの事を大切に思っている。だからもう少し自分を大切にしてよ!」

『分かった。今度からは、私も死なない様に気を付ける』

「分かってくれたら良いんだよ……って今までは死んでもいいと思っていたわけ?」

『……うん。そうだけど』


 今まで大人しく聞いていたグイスが怒り気味っていうか怒ってる言い方で


『それは聞き捨てならないな。おいシキ、私が捕まっていた時もそう思っていたのか?』

『うん……』


 私の返事を聞いたグイスが呆れたように言う。


『……はぁ、なんて言ったらいいのか。とにかく、二度と自分を大切にしない行動をするな!分かったか?』

『はい。了解しました!』


 ちゃんと反省はしているけど、こんなにもみんなを心配させている私をぶっ飛ばしたい。でも、それをすると怒られるのは分かっているから。……なんて言うか、もどかしい!

 ワルトが身を乗り出してきて


『なあ、話は変わるけどよ!そこにいるスライムが敵だったんだろ?なんで仲間になったんだ?』

『それは……私も知りたいよ!いきなり攻撃してこなくなったと思ったら、近づいてきてすりすりされたんだよ?どういう事なんだかさっぱり分かんない』

「ぴー!ぴぴーぴぴぴっ!」

『へぇー!そうなんだ!えっとね、こう言ってたよ「それはねー!わたしがーまけたからだよっ」だって』


 いつの間にかひょっこり顔を出したもう一人の私がそう言った。ってか、よく分かったな私!なんとなくは雰囲気で分かるけど、詳しくは分からなかったからなー。


『なんだと!?……そうだったのかよ。確かにそれなら納得できるぜ』

『なにが納得できるの?』

『それはな、この世界では魔物……つまり動物と人間以外のものを指すんだけどよ。例えばそこにいるライ……だっけか?まあ、魔物に分類されるもの達を一回倒すと仲間になってくれるんだ。勿論、殺すと仲間になれないがな。説明はこんなもんだな。分かったかよ、シキ?』


 倒すと仲間になるのか、本当にこの世界って不思議だなー。


『な、なるほど……。なんとなくは、分かったつもり。それだったら魔王は、魔物なの?』

『それは、違うんだよ。魔王様はな魔人……人間と動物が混ざっている様な見た目なんだが、それの王様なんだよ!』


 それってつまり、一面ケモミミだらけって事だよね!今度魔王に行ってもいいか聞いてみよう!そしたらへへっ……。


『へー!今度ちゃんと許可を貰って魔王の国に行ってみようかな!楽しみにしておこう!』

『だけどよみんなで行くとしたらシヅキは人間だ、あの国は人間を良く思っていない魔人が多い。なにされるか分かったもんじゃねえぞ?』

『そっかー。……でも出来なくはないと思うよ?私と同じ体質になれば動物にもなれるし、ケモミミも生やせる。だけど、それだけの為に紫月はやれるの?』


 紫月は首を横に振る。……そうだよね。こんな人間離れしたものになりたくないよね。


「違うよ、色ちゃん。私はね確かに、その国に行ってみたいって言うのもある。だけどね、それ以上に色ちゃんとグイス、それにワルトと同じ身体になれるっていう事が出来るの。それが嬉しいんだ!だから、逆に私の方が感謝している位だよ」


 それを聞いて私は何故だか、泣きそうになった。なんでだろう?自分でも分からないけど、もうとっくに涙は流れているみたいで


『シキ!どうかしたか?!』

『おいおい、急にどうしたんだよ!?』


 ワルトとグイスには心配されて


「もう、色ちゃんはこれ位の事で泣かないの!」


 紫月には頭を撫でられて


「ぴー!」


 いつの間にか、私と同じ位の大きさに小さくなったライがすりすりしてきている。それにクラーは心配そうにこっちを見ていた。それを見た私が気を使ってくれているのが嬉しくてまたそれで涙が出るという、無限ループみたいなものになっていた。

 ようやく私が泣き終わってみんながホッとする。でも、今度は眠くなってきてそのまま寝てしまった。





 色ちゃんが泣き疲れてすやすや眠っている。


「全くこんな所で寝ると風邪引くよ?色ちゃん……って聞いてないよね。じゃあ、みんな私も色ちゃんと一緒に寝るから。おやすみ」

『『おやすみ』』


 私は色ちゃんをそっと手に乗せて寝室に行く。そして私の枕の横に小さめのクッションを置いてその上に色ちゃんを乗せて小さい毛布をかける。これで良し!私も布団をかけてもう一度言う。


「おやすみ」

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