第26話 黒いスライム
魔王を乗せて奴……黒いスライムがいる場所に向かっていると、変なものを感じ始めた。なにと表現すればいいのか分からないけど、とにかく嫌な雰囲気だった。
『ねえ、魔王この嫌なやつって……』
「ああ、奴が出しているものだ。これは……思ったより、デカくなるのが早いな。シキ、今回の奴はなにかが違う!気を付けてくれ!」
……私の感じた嫌な予感はこの事だったのかな?
『分かった!……さて、もうそろそろ着くみたいだよ?』
「了解だ。だが、奴から少し距離を取った方が良いだろう。なにがあるか分からないからな。ここら辺で降りてくれ」
『確かにそうだね。じゃ降りるよ!』
着地して魔王を降ろす。ちょっと離れたところに奴がいるみたい。さて、どうやって倒せばいいのか……。
『ねえ、魔王。アレどうやって倒せばいいの?』
「そうだな、通常は何も無い空間に封じ込めれば自然消滅するが、……今回はそれも厳しそうだ。なにせ、今回の奴は成長するのが数倍早い。封じ込めてもすぐに出てきてしまうだろう」
え?……ちょっと待って、いや、気のせいじゃない。さっきより奴が小さくなっている!?それから、だんだん形を変えていっててなんだかヤバい気がする!
『魔王、のんびり話している暇はないみたいだよ。とりあえず、私が攻撃しておくから魔王は倒し方を考えといて!』
「了解だ!」
奴に走って近づき尻尾で叩きつける。でも、なにかを潰したような感覚はない。……どこに行った?後ろを振り返ってもいない。じゃあどこだ?
っ!背中が焼ける様に痛い!なんとか、スライムを引きはがして叩きつける。そして能力でスライムをエネルギーに変える!……駄目だ。出来ない。それじゃあどうすればいい!
……こうなったら、やけだ!スライムを掴んで思いっ切り上に投げる!オラァ!そして俺も飛び上がり、空中で両手を組んで思いっ切り叩き落す!ベチョっと音が聞こえた。
……やったか?地上に降りて確認すると、黒い水たまりみたくなっていた。生きているのかどうかを確認するために、爪でつつくとぴくっとなって動いた。また溶かされると思って手を引っ込める。
……しばらくしてもなにもしてこない。なにがしたいんだこいつ?
「ぴー」
スライムが鳴いて(?)近づいて来る。……懐かれた?倒して仲間になるとかどこかのゲームかよ!それはさておき、仲間(?)になったなら名前を考えないとね。
スライムがジャンプして私の肩に乗ってスリスリしてくる。なんだかかわいい!そっと上の部分を撫でてみると
「ぴー!」
嬉しそうに鳴いた。かわいい。……それはさておき、名前を考えないといけない。うーん……、あっ!そうだ、スライムからとってライにしよう!
『よし、今からお前の名前はライに決まりだ!』
「ぴっ!」
『いいか?今から私の家に帰るけど暴れたり勝手に溶かさない事!分かった?』
「ぴぴっ!」
どうやら分かってもらったみたいだった。そうだ、紫月に知らせておこう!鳥さんおいでー!……よし来た。
『紫月ー!なんだかしらないけど、黒いスライムが仲間になっちゃった!ライって名前にしたんだ!』
「……はぁ。なにかあったら連絡するとは言ってたけど、まさか仲間にする報告を聞くとは思わなかったよ。ねえ、色ちゃん魔王さんいるよね?ちょっと代わってくれる?」
『良いよー!魔王、紫月が聞きたい事があるから代わってだって!』
「……分かった」
私から通信用の鳥さんを受け取ると、魔王は歩いて少し離れた所に行った。なんでだろう?
……そういえば、一回怪我したんだっけ。ということは……説教!ヤバい、説教だけは勘弁してほしい!でも、紫月の事だからなにがなんでもするよね……。
今からでも治せばバレないのでは?よし、やるか。
『ライ、ごめんね。一回降りてもらえる?』
「ぴっ!」
ライは私の肩から降りた……と思いきや、背中の怪我している所に移動した。そしてぴたーっとくっついて動かなくなった。
それなりの時間が経って肩の所に戻ってきた。なにをしたのか分からなかったから、怪我している部分を触ってみるとなかった。怪我が触った感じだと治ってる!これってもしかしなくてもライが治してくれたんだね。優しいなー。
『ライが治してくれたんだね!ありがとう!』
「ぴー」
いつの間にか近くに来た魔王が
「おいシキ、シヅキが早く帰ってこいと言っていた。なんでも、話があるそうだ」
『……なんの事だろう?分かった。今すぐ行くけど、魔王は帰りどうするの?』
「そうだな、私は自分で帰る事にする。幸いな事に私の城はこの近くにあるのでな。では、またな」
魔王はそう言うと、鳥さんを何故か私の頭にのせてスッと消えてしまった。今のはなんだったのだろうか?んー魔法かな?そういうの読んだ事あるし、きっと合ってる。……あっ!早く帰らないと!とりあえず、鳥さんにバイバイしてっと。
『ライ、今から飛ぶから肩じゃなくて背中に乗ってて』
「ぴー!」
ちゃんとライが移動してピタッとくっついたのを確認して、いざレッツゴー!
それなりに時間がかかったけど家に到着!
『ライ、ここが私の家だよ。一回、私から降りて』
「ぴっ!」
ライが降りてから、私は小さいサイズのトカゲになって
『じゃあ、入ろうか。ただいま、みんな!』
「ぴー!」
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