第25話 奴が現れた!
まだ一日もたっていないのに魔王が来た。前に帰ったばかりじゃん!たまに来るとは言ってたけどね……。流石に来るの早くない?どういう事なんだろ?
『……魔王が一日もしない内にまた来たよ』
「えっ?本当?今度はどうしたんだろう」
紫月が不思議そうに言う。
私もなんで来たのかさっぱり分かんない。
『マジかよ!魔王ってあの有名な、魔王様かよ!俺も見に行けば良かったー!』
グイスがキラキラした目で、でもちょっと残念そうにしている。
でも私には不思議だった。言うと悪いかもしれないけど、魔王は私から見ると変な人だからなー。
『え?魔王ってそんなに凄いの?』
『勿論だ!何でも、動物が人間に殺されかけた所を助けたとか色々凄い事をしているひとなんだぞ!俺も一目見てみたいぜ!』
魔王ってそんな事してたんだ。普通に良い事してるじゃん!
『へー。優しいんだね。てっきり悪い事でもしていると思っていたよ。それに見る位なら魔王も気にしないんじゃない?』
『よし、俺も一緒に行くぞー!』
ワルトと一緒に外へ出る。そこにはやっぱり魔王がいた。
『おお!本物の魔王様だー!スゲー!』
「……私を知っているのか。これは嬉しい事だな」
『それでまだ一日もたってないのにどうしたの?』
「ああ、それがな……奴が出たんだ!」
……えっと奴ってなんの事?魔王が警戒するほどの事なの?
『奴って何?』
「あれは、黒いスライムだ。奴は周りにあるもの全てを喰らい尽くす化け物。生まれたばかりこそ小さいがどんどん巨大化していき、やがて全てを飲み込んでしまうだろう。そうなる前に、力を貸して欲しい。頼む」
そう言い終わると魔王が私に向かって土下座してくる。こっちにも土下座ってあるんだー!ってそんな事思っている暇ないじゃん!
まあ私達に手を出す事が最初から分かっているなら、面倒くさくなる前にやるのが一番だよね!
『そこまでしなくても、良いよ。だって友達の頼みだもん、断る理由がないよ!』
魔王は驚いた様子で立ち上がる
「ほ、本当か!……嘘ではないな?」
『嘘じゃないよ。でもちょっと待ってて説得する必要があるから。……ねぇ紫月聞いているんでしょ?』
私は言いながら振り返り後ろの方をみる。そこにはやっぱり紫月がいた。
「……聞いているよ。でも、行くんでしょ?私が止めても」
紫月は悲しそうな顔をする。それでも私はやめる気はなかった。私達に危害を加える奴は許せない。誰であろうと。それで私がどうなろうともやめる気はない。
『ごめんね、紫月。でも友達が危険なままで私が何もしないのは、私が許せないからね』
「そうだよね……。色ちゃんならそう言うと思った。……でも、怪我したら説教だからね!絶対に帰って来てね!」
『勿論だよ!ちゃんと帰ってくるから、安心して待ってて!』
私は紫月を安心させる為に、かつ爪で傷付けない様にそっと抱き締める。
「……分かったよ。魔王さん、色ちゃんを頼んだよ」
「ああ、分かっている。では行くぞ、シキ」
私は紫月から離れて魔王の方を振り向く。
『じゃあ行こうか魔王。私に乗って』
「ああ、分かった」
魔王は私に乗ってとある方向を指さした。
「シキ、こっちの方向だ」
『了解!じゃ行くよー!』
私は何故なのか分からないけど、早く行かないといけない気がして勢いよく飛び立った。
だけど、勢いが良すぎて魔王が落下した。地面が近くて良かった……。魔王も怪我はないようだからセーフ!
……なんだか締まらないね。
『ごめんね、魔王。落としちゃって』
「大丈夫だ。私こそちゃんとつかまってなかったからこうなってしまった。済まない……」
紫月がなんとも言えない顔をして言う。
「色ちゃん……。どうしてあんなに勢い良くしたの?私が乗った時はそんな事なかったのに、魔王さんだけ早くするなんてなにかあったの?」
『えっと、なんだか嫌な予感がしたんだ。それで早く行こうとしたらね……。こうなった』
紫月がハッとして少し焦ったように早口で
「嫌な予感!それだったら、魔王さん早く色ちゃんに乗って行かないと!碌な事しかないと思うから!」
「ああ、分かっている。シキ、乗るぞ!」
『分かった。……よし、ちゃんと乗ったよね?じゃあ行くよー!しっかりつかまっててね。えっと、あっちの方角だっけ?』
「そうだ。シヅキも言ってたように遅れればそれだけ被害が増える。一刻も早く、奴のところに行かなければならない。シキ、頼むぞ!」
って事は私かなり責任重大!?今度こそは魔王を落とさないようにしないとね!あっそうだ!なにかあった時に紫月に言っておこう。
『分かった!じゃあ、行くよ!紫月、なにかあったら知らせるからその時はよろしくね!』
「そんな事があったらね。ない方が良いけど、分かったよ。いってらっしゃい!」
『行ってくる!』
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