第23話 帝国に行かされた

 少しすると動くのが止まった。


「どうやら着いたみたいだな。早く行ってこい」

『分かった。でも皆殺しするからね』

「ああ、構わない。兵はいないからな、好きにしろ」


 王様が格子の扉を開けた。……ある意味信頼されてるのかな?戦争かなんかは知らないけど、戦力が私だけって思い切りがいいのかどうなんだか。

 どうでもいいけど、この王様ってかなりの物好きだと思うんだよ。傍から見たら得体の知れない真っ黒なトカゲの私を捕まえて戦力として戦争に送るとか……。私だったら考えられないよ。


『じゃあ好きにするから。文句は言わないでね』


 私は、格子の外に出て人間達が群がっているところに向かう。

 適当に尻尾を使って近付いてくる人間達をぶっ飛ばす。

 そうだ!念のために送っておこう。能力を使って小さいトリを二匹作って片方を紫月の所に行くように指示を出して向かわせた。

 よし、さっさと終わらせるか。人間達に向かって攻撃しようとした瞬間、トリから声が聞こえてきた。


『色ちゃん、聞こえてる?聞こえていたら、今すぐ帰ってきて!』

『分かった。だけどちょっとやる事があるから、それが終わったらすぐに向かう!』

『了解!早めにね!』


 能力を使ってまとめて人間達を吸収してと。うん、終わった。じゃあ行きますか。

 私はドラゴンになって私達の家に向かって飛び立った。

 少しして到着してトカゲに戻る。何故かそこには沢山の人間と動物達がいた。


『紫月、着いたよ。それでなにがあったの?……ってなにこれ』

「色ちゃん、それがね……、魔王様が私達と手を組みたいらしくて来たんだって」

「その通りだ。そして私が魔王だ。お前が一つ国を消した奴か?」

『まあ、あれは事故に近いけどね。それがどうしたの、何か悪かった?』


 あれはあそこの人間達が悪い!グイスを殺しかけたのはまだ許してないからね。


「あれを事故と言うのか。そうだな、お前は悪くはない。あいつら人間が悪いな。だがお前を呼び出してくれた。やはり、面白いなお前」

『私ってそこまで面白いものなの?……まあ、良いよ手を組んでも』

「本当か!ならば、ともにこうして話し合おうではないか!お前の話は面白い。また聞きたいのでな。今度は私だけで来るとしよう。では、またな!」


 この世界の魔王は戦闘狂じゃなくて良かった。ここで戦いを挑まれても困るだけだしね。それにしても、話を聞きたいって不思議だなー。そんなに面白いの?

 そんな事を思いながら魔王とその仲間達は歩いて帰っていったのを見送る。これで、一見落着と私は思っていたのだけれど……。


「……ねえ、色ちゃん。そういえば、さっきまでどこにいたの?ねえ?」


 ……大変だ。紫月が怒ってる。なんとかしないと……。


『……えーっと、どっかの、帝国?』

「なんで帝国なんかに行っていたの?王様が戦争しようとしていた国じゃん。そんなに危ない所に行ってなにしていたの?」

『王様が無理矢理、連れてきて、そこにいた人間、食べちゃった、です』


 あっ言い方間違えた。ヤバイ!また説教が始まってしまう……。


「はぁ。あいつ、色ちゃんに何食べさせているのかな……?」

「やっぱり、一回し……体験しないと分からないのかな?」


 なんかブツブツ紫月が言っている。やっぱり、怒られるよね……。仕方ない、素直に受け入れるしかない!


「色ちゃん、あいつ倒しに行こうか!」

『ごめん……ってえ?倒す?どういう事?』

「そんな事は気にしないで早く行くよ!」


 問答無用で手を引かれて歩き始める。全く、訳が分からないよ!


『……というかどこに行くの?』

「王様の所だけど?それがどうしたの?」

『なんで行くの?』

「なんでって言われても……。言ったじゃん倒しに行くって」


 そういえば、そんな事言ってたね。でも、いきなり王様を倒しに行くってどうなればそんな考え方になるの?不思議だねー。


『分かったけど、王様のいる場所知ってるの?それに歩きで行くつもりなの?』

「知らないし、歩いていくつもりだけど。それとも色ちゃんが乗せってて飛んでくれるの?」

『じゃあ、そうするよ。ドラゴンになるからちょっと待ってて』

「分かった!でも、ちょっと待ってボールみたいな物を外してから」


 紫月が私についたボールみたいな物を取ってくれた。


『そういえば、ついていたんだっけ。紫月ありがとう』

「これもどうせあの王様がつけてきたんでしょ?……本当にムカつく!どれだけ泣き叫んでも絶対に許さない……」


 わー。紫月が凄い事言ってるー。正直、怖い……。こっちに矛先が向かないうちに急いでドラゴンになる。


『……紫月、乗って。王様を倒しに行くんでしょ?』

「……あっ!そうだね。よし、乗ったよ。じゃあ早く行こう!」


 紫月が落ちないように気を付けて飛び立つ。多分まだ帝国にいると思うんだけどどうだろう?

 少しして帝国に来て上から探していると、あっ!いたいた!あの王様、服装が独特だから他と違って分かりやすいんだよね。


『紫月、王様が見つけたよ!……一応聞くけど、倒すって何するつもりなの?』

「色ちゃん、そんなの決まっているじゃん!仕返ししに行くだけだよ?」

『……(怖いから)具体的には聞かないことにするよ。じゃあ、降りるよ!』


 そして王様の近くに着陸したのだった。

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