第20話 色ちゃんが心配で……

 そんな平和な日々は過ぎて、何故か人間が馬鹿みたいな数でここに来た。


「ここにいるのは分かっている!さっさと出てこい!トカゲ!」


 それにしてもなんで、私目当てなの?なにもしていないじゃん!あっ、そっか。色々してたね。町破壊したどころか、国破壊しちゃったし。それでなのか?それなのか?

 ……考えていても仕方ない!私が来るまでずっといそうだから、行くしかない。


『みんなはここで待ってて。私だけで行ってくる』

『……シヅキは連れて行かないのか?』

「そうだよ。私は連れて行かないの?」

『あそこまで人間がいると、紫月を守りきれないかもしれない。私はいくらでも復活できるけど、紫月は違う。一度死んじゃったらもう、駄目だから。連れて行かない』


 グイスが死にかけた時、私は耐えきれなかった。怒りを。

 多分敵を全滅させるどころじゃなくて周りが悲惨な事になる。前の時は本当になにもなかったからなー。それなりに大きい街だったのに。


『だから私ひとりで行く』

「……分かったけど、あまり無茶しないでね」

『なるべく頑張る。じゃあ、行くね』


 私は家を出て人間達の所に向かう。


「ようやく出てきたか!このトカゲ!いつまで待たせるつもりだ!」

『待たせるもなにも、お前達が勝手に来ただけだろうが!なんだその態度は?私に喧嘩でも売ってるの?!』

「まぁいい。第一班、やれ!」


 人間達が出したのはあのボールみたいな物。またあれか!避けるよりも、空に飛んだ方が楽かな?そう考えて素早くドラゴンになると、羽ばたいて空に逃げる。


「どういうことだ?!ドラゴンになるなんて聞いてないぞ!……仕方がない。第五班!魔法で撃ち落とせ!」


 次は魔法ねー。むしろありがたい!地味にお腹減ってたんだよね。いただきます!

 次々と飛んでくる魔法を食べていく。色んな味がして美味しいね!


「ま、魔法を食べただと!?こうなれば第三班……」


 もうこっちから、攻めてやる!魔法で鉄を作って大きいブロックにして、上から圧し潰してあげる!ドスン!グチャッ!……ちょっとグロい音が聞こえたけど、気のせいだね!

 もうこれで、終わりかな?ああ、鉄と色々を魔素に変換しておこう。よし、これでなにもなくなったね!それじゃあ地上に降りてっと。


「あぁぁ……。こんなはずではなかったのに……」

『あ!まだいたんだ?じゃあ、お話ししようか?』

「こうなるはずじゃなかったのに!こんなもの!」


 完全に油断していた私はいきなり投げられたボールみたいな物を、避ける事が出来ずに頭にカツンと当たってしまった。ぐぅう……あたまが……もう、だめ……。





 色ちゃんが心配でこっそり様子を見ていたんだけど、色ちゃんって本当に馬鹿なの?あそこでわざわざ近づかなくても良いじゃん!なのにどうしてそうしちゃうの?……って違う!今は、色ちゃんを助けなきゃいけない!


「やったぞー!これで、帰る事が出来る!王様の所にこいつを連れて行けば終わりだ!」

「色ちゃん!今助けるね!こんな奴に色ちゃんを渡すもんか!しかもあいつ、まだ懲りてないみたいだね?ぶっ飛ばしてやりたい……!」


 色ちゃんに付いているボールみたいな物をはがして、ぐでーってなっている色ちゃんをそっとなでなでしながら


「色ちゃん、私ね。……どうしても、許せないんだ」

「くそっ!早くコイツを連れて行かないといけないのに!」

「例えば、そこで糞みたいな王様に色ちゃんを持っていこうとしている人。それにそれを頼んだと思われる王様糞野郎。どうしたら色ちゃんに危害を加える人が居なくなるんだろうね?私には見当がつかないよ」


 地球では私とあいつが色ちゃんをいじめちゃったし、こっちでも他の人が色ちゃんをいじめている……。私なんかが、色ちゃんの近くにいるのが悪いのかな……。私は色ちゃんになにが出来るのかな……?


『私は大丈夫だよ。紫月はそこまで自分を責めないで。悪いのは他の人間達なんだから。それに私に危害は加えられないよ。むしろ私以外のみんなが傷つくのが一番怖い事なんだから』


 色ちゃん……。


『さあ、さっさとそいつを殺しちゃおうか』

「うん!」





 私はトカゲに戻って舌を使い、人間に巻き付けて頭からパクッと食べた。うーんあんまり美味しくない。

 そういえばこんな事しなくても、頭をはねて魔素に戻せば良かったのか。なんで早く思い付かなかったんだ、私。


「色ちゃん、言いたいことがあるんだけど」

『どうぞ』

「色ちゃんの事が心配で戦っている様子を見ていたんだ。だけどなんで最後の敵に警戒もしないで、自分から近づいちゃうの?しかも変な物にまた当たっちゃうし。私だって色ちゃんと同じ位、色々心配しているんだからね!これからは、気を付けてね!」

『うっ、うん』


 こうして私は紫月に数時間説教されたのだった。

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