第11話 やつらが……!
……んー。目が覚めた。クラーはまだ寝てるか。うーん。起こすのもかわいそうだし、起きるまで待っておこう。
『おお、起きたかシキ』
「うん。起きた。クラーは起きるまで待ってるとして、グイスとのあれは終わったみたいだね」
『流石に終わるぜ。シキが結構寝ていたからな。というか、元々と言えばシキが何の宣言の無しにクラーを作るのが悪いんだよ!』
結構寝てたんだ。これは今日の夜寝られなくなりそう。
……だけどそれじゃ、私だけ悪いみたいじゃん!
「そうかもしれないけど、私だってまさか自我が芽生えるなんて、思ってなかったから私のせいじゃないもん!」
『そうかもしれないが、シキも少しは悪いんだからな。止めなかった俺も悪かった。だから、許してくれ』
「……。分かった。許してあげる。でも、グイスを説得するのは自分で頑張ってね」
そう、この時にはすでにグイスがスタンバっていたのだ。
『ワルト、もう一回やるか……?』
『グイス……!やる前にせめて、俺の言い分を聞いてくれよ!』
『問答無用だ!そんなのは聞かん。じゃあ、シキ。ちょっとワルトと話をしてくる』
『マジかよー……!』
ワルトはグイスに連れていかれた。……頑張ってワルト!私はちょっとだけ応援しておくよ!心の中で。
ぴっと声がしてクラーを見ると
『あるじさま……?どこなの……?』
寂しそうな声で言う。私はそっとクラーを手に持って
「ここにいるよ?どうしたの?」
なるべく優しい声で聞いてみると
『えへへ。あるじさまだー……。あったかーい……』
そう言いながら、私の手にスリスリしてくる。ああ、かわいい……。
『うーん……。あるじさま……ずっと、いっしょだよ……』
「うん……!ずっと一緒だからね。どっかにいかないでね……?」
『……それがあるじさまのねがい?』
「うん。グイスにワルト、それからクラーとこれからの友達とずっと一緒にいたいんだ!」
『わかったの!これはクラーからのおくりものなの!』
クラーから貰ったのは宝石みたいに綺麗な虹色の石だった。それが私に溶け込むように消えた。
なんだか心が暖かい。……こんなのは久しぶりだった。いや、違うか初めての事だ。私は……本当に、こんなにも暖かい所にいて良いのだろうか。
【いて良いんだよ。貴方はもっと幸せに、ならないといけないのだから。ちゃんと受け止めて】
うん。分かった。ありがとう……。これからも頑張るよ。
『良いところで悪いが、シキ。人間が来た。それでシキに話があるんだと、どうする?』
この時何故か嫌な予感がした。まるで来てはいけない者が来ているみたいな。そんな気がした。
だけど、行かないといけないのだろう。拒否したら誰かが死ぬ。
「……分かった。行く。だけど、ワルト達は万が一の為に逃げといて」
『クラーもいきたい!』
「駄目。みんなが傷つくのを見たくない。私はあいつらと話さないといけないことがあるんだ。グイス、ワルトとクラーを頼んだよ」
『……そこまで言うのには訳があるようだな。分かった。ワルト、クラーも行くぞ』
グイス以外が納得できないという表情をしている。仕方ない。言うか。
「ねぇ、ワルト来た人間って二人で両方髪の毛が黒で片方女の人だった?」
『ああそうだよ。何で分かる?』
「そうだな、前の世界の知り合いとでも言った方が良いな?まぁ、そんなに親しいわけじゃないけどな?」
……ちっ、来やがったか。糞どもが。
「グイス!早く行って!」
『分かってる!早く行くぞ!』
グイス達は逃げた。後は、私がこいつらをなんとかすればいける!
「せっかくの仲間だったのに行かせて大丈夫かよ?なぁ、色?」
「お前達には私一人で十分だ!」
「ふーん。いつまでそんな強気でいれるか知らないけど、私達に逆らう事がどうなる事か知っているでしょう?ねぇ、色ちゃん?」
言い終わったすぐに鎖で拘束された。身動きが出来ない。だけど、能力を使えば……。
あれ?出来ない。能力が発動しない。何故だ?
「駄目だよ、色ちゃん。貴方の能力は使えない。当たり前でしょ?そんなチートみたいな能力は使わせないよ!」
「お前を殺した後に仲間達も送ってやるから、安心しな!」
「……じゃあ早速、俺達に逆らった罰だ。受け取れ!」
思いっきり、お腹を殴られる。痛い痛い痛い痛い!!
「っぁあ、あ……」
……早く、痛みを感じさせ……ないようにしな、いと!
……これも、出来な……い⁈
「こんなもんで終わるわけがないだろう?もっとだ!もっと!」
また、殴られる……!
「ちょっと待って貴方は色ちゃんの仲間を追いかけて」
「はぁ?なんで俺に指図するんじゃねぇ!」
「そういう約束でしょ?何言ってんの?」
「ちっ!……そうすればいいんだろう?分かったよ」
男は走り出した。やばい、グイスたちが!早くなんとかしないと!
でも、私には何も出来ない。どうすればいい?
「ねぇ、色ちゃん。私ね、貴方と本当は普通の友達になりたかったの」
「……」
「そんなの嘘と思っているかもしれないけどこれは本当」
「だからさ、元の世界に戻らない?」
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