第10話 グイスとワルトまた喧嘩!
……まあ昔話はこの辺にしておいておこう。
空を見るともう虹は消えていた。流石に消えるよね。ちょっぴり悲しい気分になった。
『あるじさま、にじまたみれるかな?』
「うん。きっとまた見れるよ」
『やったー!つぎもあるじさまとみるのー!』
こんな私で良ければ、何回でも一緒に虹を見よう。
「そうだね。また一緒に見ようか」
『うん!いっしょにみるの!』
……駄目だ。思考が暗くなっている。あいつらはここには居ないんだ、だから大丈夫大丈夫。
深呼吸して……よし。戻ったと思う。
『おい、シキ。いつの間にこんなの作ったんだ?』
『こんなのじゃないのー!クラーだもん!』
『分かった。クラーだな。それでシキ、どうしてクラーを作ったんだ?』
なんだか、微笑ましい事になってるなー。
「なんだかねー。成り行きでこうなっちゃった。えへへ」
『成り行きでこうなる訳がねぇよ!第一な、魔法でやったとしても自我が芽生える事なんかないんだぞ?変な材料とかを使わない限りはな!』
変な材料ってなんだろう?気になる!……でも私は変な材料とかなにも入れてないはずなんだけどな?
「特になにも変な事なんてしてないって!エネルギーを入れただけだよ?」
『シキ、お前の能力のエネルギーはな、常識外れな力を持っているんだよ!じゃなきゃ、クラーみたいな存在が大量にいるはずだ』
マジか……。私はいつの間にか、凄くなってしまったようだ!
「でもあっちだとそんな事起きなかったんだよ?出来てもエネルギーが切れたらすぐに止まったし」
『あっちとこっちは別の世界だ。仕組みとかが違うんだろ。だからなシキ、何か実験するときは必ず声をかけろよ!絶対にだからな!』
念には念を入れてくるね。
「うん。分かった。そこまで言われたらするしかないね。でも、実験をやめろとは言わないんだね?」
『ああ、やめろとは言わない。やめさせたらグイスがうるさいからな』
『……誰が、うるさいだと?なあ、ワルト。ちょっと話があるんだが?』
『誰もうるさいなんていってねぇよ。なあ、クラー?』
……そこでクラーに振る?どうなることやら?
『ワルト、うそはだめなのー!ちゃんとしょうじきにいわないとめっなの!』
『グイス、ワルトが【やめさせたらグイスがうるさいからな】っていってたの!』
おっ!ちゃんと言った!
『なっ!クラー裏切ったな!』
『あるじさま!クラーがんばったの!えらい?』
「クラーはちゃんと言えたね。偉い、偉い!」
『……ほう?そうだったのか、クラー。……ワルト、覚悟は良いか?』
ギャー!と叫び声が聞こえた気がしたけど気のせいだよね!
『……クラー、覚えてろー!』
『ここでクラーを呼ぶ余裕があるとはな。……まだまだする必要があるようだな!』
なんかさっきより激しくなった気がするけど聞こえない、知らない。
『あるじさま!ワルトとグイスはなかがいいんだね!』
「そうだよ。たまにああやって遊んでるんだよ」
『クラーもなにかであそびたいのー!』
うーん。遊びか。適当にボール投げでも良いか。魔素を使ってパチンコ玉位の大きさのボールを作る。
「じゃあボール投げをしようか。私がこの球を投げるから、クラーは取ってきてね」
『わかったのー!』
「じゃあ、投げるよ!それっ!」
『ごーなの!』
それなりに飛んだはずのボールが少しするとクラーが持ってきた。クラー、速い!
『あるじさま、楽しかったの!もういっかい、やってほしいの!』
「それは良かった。じゃあ、もう一回投げるよ!それっ!」
また、少しするとクラーはボールを持って戻ってきた。やっぱり速い。
『あるじさま。おなかがすいたの……』
「そっかー。はいこれ、魔石を小っちゃくしたものだよ。食べてみて」
『おいしそうなの!』
クラーは私から魔石を受け取るともぐもぐ食べ始める。
……かわいいね。いつまでも見れそうな気がする。
やがて食べ終わるとけぷっっていってまた、それがかわいい!癒されるなー。
『あるじさま!おなかいっぱいなったの!』
クラーが大きなあくびをする。それもまたかわいい……!
このまま見ていたいけど、あまりにも眠たそうにしているので
「クラー、お昼寝する?」
『うん……するの……』
私の手に乗って丸くなったと思ったら、クラーはそのまま眠ってしまった。
すーすー眠っているのを見ていたら、私も眠くなってきた。
魔素で布団を作ってクラーを起こさないようにしながら、敷いて布団の中に入る。
それでクラーのクッションも魔素で作ってそっとクラーを置く。そして私も眠り始めた……。
『おい、クラーもシキもいつの間にか眠っちまってるぞ』
『そうだな。このまま寝かせておいてやろう』
『全く、相変わらずシキには甘いんだな。グイス』
『ワルト、……またさっきの続きしたいのか?』
『いや、遠慮しておく。これ以上は勘弁してくれよ』
『そうだな。止めておこう。シキとクラーを起こしたくはないからな』
『ああ、そうしてくれ……』
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