第9話 魔素で実験!

 雨が降り続けている。私達は雨がやむのを待つ。


「……暇だなー。なにもやる事無いし」

『ふむ、そうだな。人間に狙われた時は忙しかったが、今では暇すぎて逆にキツイな』

『なぁなぁ!ほら、さっきは魔石を作ってただろ?シキの能力って他になにが出来るんだ?』


 能力で出来る事か……。


「エネルギーを吸収したり、物も吸収できるよ。後、エネルギーを使って物を作ったり、そんな感じかな」


 物を作る……あっ!そうだ!魔素を作る機械を作ろう!大きさは手のひらサイズで一メモリにつき十個位の設定でっと。こんな感じかな?

 よし、出来た!うん、いいかんじ!


『なぁ、またなんか作ったのか?』

「うーんとね、魔素を作る機械作ってみたんだ!うまく動いているみたいだからよかった!」

『マジかよ……。魔素って普通作るもんじゃねぇと思っていたんだが……』

『本当なのか!これで多く作っても平気になったな!』


 グイスは嬉しそうに尻尾を振ってる。


「だけど、一日三個は変える気はないよ?これは研究用に使うんだから」

『なん、だと……』


 グイスがガクッと落ち込んでしまった……。よほど食べたかったんだね。


「……グイスが残念そうにしているから、もう一個作るよ」

『本当か!良いのか!』

「グイスはそんなにも、魔石食べたいの?」

『アレは格別だ……!今までに食べた事のないあの食感と味!アレがたまらないんだ!』


 グイスって前は何食べてたんだろう……?ちょっと気になる。でもここまではまるとは思わなかった。魔石凄いなー。


「一応、グイスも自分で魔石作れると思うけど、もう一個機械を作ってから試してみてね」

『シキ、それは本当か!』

「うん、ワルトも同じくね。……これでこうすれば、出来た!はい、グイスこの機械から作ってね」

『よし、じゃあ作るか』

『俺も作れるのか!グイス、俺もまぜろ!』


 グイスとワルトが魔石を作って遊んでいる内に私は実験をしよう。

 まずは魔素を色々なものに変化させてみる。水、火、雷、土、草、鉄、鳥モドキ……思いついたものに変化させることが出来た。

 これは、能力の代わりにできるかもしれない。

 遊びで10cm位の大きさの赤いドラゴンを作ってみた。動かすためにエネルギーを少し入れる。

 すると、右を向いたり左を向いたりしてキョロキョロしてる。そして私と目が合うと


『あるじさま!これからよろしくなのです!』


 ……あれ?おかしいな?自我を作ったつもりはなかったんだけど?どうなってんの?


『……あるじさま?どうしたのー?』


 とりあえず、落ち着こう。どうしてこうなった?エネルギーを入れただけでこうなった事がないから分かんないんだけど……。


『あるじさま……?』


 でも家で同じことやった事はあるけど、エネルギーが切れたら止まったんだ。だから今回もそうなるはずだと思いたい。


『あるじさまが、わたしのこと、むしして、いじめるー!』


 ……だけど、今はそれどころじゃない!ドラゴンが泣きそうになってる!


「ごめん。ちょっと考え事していただけなんだ。だからいじめてた訳じゃないよ」


 頭を撫でながら言い訳をする。


『……あるじさま、ほんとう?』

「うん。本当だから許してくれる?」

『うん!わたし、あるじさまのことゆるすのー!』


 撫でていた指にギュッとしがみついてきて、かわいい。


「ありがとう」


 ……ふう、なんとかなった。このまま泣かれたら大変な事になりそうだったから良かったよ。


「貴方に名前を付けようと思うんだけど、良い?」

『うれしいの!あるじさま、ありがとう!』


 よし、ドラゴンの名前を考えよう。うーんと……クラーに決めた!


「それじゃあクラーでどうかな?」

『わたし、クラーになったの!やったのー!』


 かなり喜んでる。やっぱり名前って大切なものなんだなと感じた。

 あっ!雨がやんで虹が見える!綺麗だなー!


『あるじさま、あのきれいないろしているのは、なになの?』

「あれは虹っていうんだよ、クラー」

『にじ!きれいなのー!』

「そうだね、綺麗だね……」


 虹を見ると思い出す。地球あっちにいた時の事を……。大抵ろくでもない事だらけで大変だったな……。


『おっ!虹じゃねぇか!……いつ見ても綺麗だな』

『そうだな。綺麗だな』


 まあ、そんな感傷にひたっている暇なんてないだろうけどね。

 でも、今だけは思い出そうかな。少しだけ。





 私をいじめている人達が帰った時の事。少しすると、雨がやんで綺麗な虹が見えた。


 「私も虹みたいに綺麗になりたかったな……」


 私が言った言葉は風に吹かれて消え去る。……悲しくはなかった。私には唯一優しくしてくれている人がいたから。

 ……でも本当は知っていた。私に優しくしてくれている理由はただ一つ。絶望させるため。私にはもうこの世界にいてはいけないのかもしれない。

 救いなんてなかった。あるのは絶望。わざと、明るい態度で紛らわそうとしたけど逆に苦しくなった。

 私が何かやったわけじゃない。何もやらな過ぎただけ。

 泣きそうだった。だけど抑える。私は人間らしくいてはいけないのだから。



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