第8話 私って優しい?

 んー。おはよう。

 ……久しぶりに挨拶した気がするけど気のせいだという事にしておこう。


『おっ!起きたなシキ。おはよう!』

『おはよう、シキ』

「うん。おはよう。ワルト、グイス」


 身体を起こして伸びる。……ふぅ。頭がスッキリした。


「今日はなにしようかな?」

『なぁ、実は聞きたいことがあるんだ』

「なんの事を?」

『俺達の事だ』


 ワルトが言うにはこの世界にいる人間は、一部を除いた動物以外は少なからずは嫌がったりする。だから、私が最初から普通に接するのが不思議だったらしい。


「そうなんだ。だけど、私はこの世界の人間じゃないから関係ないね!」 

『えっ!?それ本当かよ?』『……そうだったのか』

「そうだよ。言ってなかったっけ?」

『言われてねぇよ!でもそうだな、それならおかしくはねぇな』


 あれ?言った気がしたけど、気のせいだったんだ。


『でもなそうなら、そうと言ってくれよ。混乱しちまうだろうが』

「言ったつもりだったんだよ?でも忘れてたみたいだね。ごめん」

『なぁ、シキはどうやって来たんだ異世界ここに?』

「まず、召喚されて来た。次に、お前がこの国を救ってくれって言われた。それで、出来ないと拒否した。そしたら、閉じ込められた。それから、脱出する時に魔石を持っていった。以上」


 他にやった事はないから、確かこんなもんだったはず……。


『色々されたんだな。少し、話しをして来る』

「グイス嬉しいんだけど、多分私が食べちゃったんだ。だからもう話せないよ?」

『……シキがそいつの事が許せないのなら私も許さない事にする』

「別に気にもしていなかったから、なんとも思ってないよ?」

『そうか。ならいい』


 なんでグイスがそんな事聞いてきたのか分からないけど、話しって何を話そうと思ったんだろう?

 ……でも、ならいいって言ってたしね。まぁいいっか!


『なぁ、他にも聞きたい事があるんだ。良いか?』

「もちろん良いよ!なに聞きたい?」

『シキが召喚されて脱出したところから、俺と会うまで』

「良いよ話してあげるよ!まずは……」


 それから私は、ワルトに会うまでの色々な話をした。


『はぁ、そうだったんだな。シキ以外人間が更に嫌いになったな。シキはこんなにも優しいのに悪魔って言ったとか、馬鹿なんじゃないか?俺達から見れば人間お前達の方が悪魔だよ。なぁ、グイス?』

『ああ。全く、その通りだ。あいつらはどこまで愚かなのか……。どうしようもない奴らだ』


 仲が良いのは良いんだけど、私ってそんなにも優しいのかな?普通だと思うんだけど。


「私ってそんなにも優しい?普通だと思うんだけど?」

『私達にとっては普通に優しいぞ。ちゃんと意見は聞いてくれるし、いきなり攻撃して来ないしな』

「それは当たり前だよ!グイスとワルトは大切な友達だから、そんな事はしないし。でも優しいと思う基準が低すぎるよ!」

『そうか?でも、優しい事は確かだぞ。だが、自覚は無さそうだな』


 うーん。自覚がないなら仕方ないのかな?どうなんだろう?


『まあ、そこまで悩む必要はないだろう。シキはシキのままで良いんだ』


 私は私のままで良いって、なんだか誤魔化されている気がするけど。まあ、それが一番だよね。


「よし!朝ごはん食べよう!」

『……いきなりだな?』『そうだな。食べるか』

「ワルトとグイスは何が食べたい?」

『なんでもいいぞ!』『同じくなんでもいい』


 ふたりとも特になしか……。適当にソーダ味でいいっか!


「それじゃあソーダ味のやつね!はい、どうぞ」


 前と同じく作って味だけ変えたのをワルトとグイスに渡す。


『これを食うのか?よし!』『……いただきます』

『うお!超美味い!これならいくらでも食えるぞ!』『ふむ、美味しい。魔石がこんなにも美味いとは』



  ふたりがもぐもぐしている間に私は魔石を更に濃縮して味をオレンジ味にして飴代わりに舐めていた。


『なぁ、シキ!あの食感がたまんねぇからもっと作ってくれ!』

『おい、ワルト。そんなに欲張るな。……下手するとこの辺りの魔素が無くなるぞ?』

『えー。少し位良いだろ?なぁ、シキ?』


 ……魔素が無くなるのはまずい。いざという時に回復出来なくなる。それは駄目だ。

 食べる個数を決めれば、平気かな?


「……じゃあ一日、三個までね。それなら減りすぎないし良いよねグイス?」

『それで良い。私ももう一個貰いたい』


「はい。グイスも三個までだからね」


 同じやつを作ってワルトとグイスに渡す。

 グイスが、尻尾を振っている。グイスも欲しかったのかな?


『やっぱ、美味いなー!最高だぜ!』『美味い……』


 よし、舐め終わった。でも今日はなにしよう?

 ふと空を見上げると今すぐにでも、雨が降りそうな色をしていた。

 てか、降ってきた!


「グイス、ワルト。雨が降ってきたよ!」

『雨だと!雨宿りしないといけないじゃねぇか!あっあそこに木がある!早く行こうぜ!早く早く!』

『ああ、そうだな。早く行こう』

「うん!早く行こう」


 私達は近くの木で雨宿りをする事になった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る