第6話 カラスがやってきた!

 『……とまあこんなものだな』

「ありがとう。グイス。追い払ってくれて」


 六日目以外は平和?で良かったけど、この様子だと明日また来るよね。


「だけど、このままだと明日大変になるかも……。移動するしかないかな」

『だが……また私が追い払っても良いのだぞ?』

「追い払えなくなったら、最悪死ぬより酷い事になるよ。無理にここにいる必要はないから、さっさと行かないと」

『そうか……。分かったが、近くになにかいるぞ!』


 意識を集中させると……確かになにかいる。これはなんだろう?直接見るしかないか。


「グイス、確かめに行こう」

『了解』


 外に出てそこに行くと、1mはないけど70cm位の大きい真っ黒なカラスが。


「カラス?何故、ここに来たの?」

『俺は噂の人間に会いに来たんだ!お前がそうか?』

「噂ってどんな?」

『そうだなー。オオカミを従魔にしている不思議な人間って噂』


 不思議なってそこまで言う?


「……そうなんだ。まあ、確かにグイスは私の従魔だけど」

『じゃあ、お前なんだな!これからよろしく!早速、名前を付けてくれ!』


 ……急だね。まあいいけど。どんな理由で来ても友達になれるのなら嬉しいからね!


『……おい、お前。急過ぎるぞ、シキだってついていけてない』

『オオカミは、黙っとけ!今は俺の番だ!』

『なんだと!?そもそも、お前がな……』


 ……喧嘩が始まった。仲が良いね!喧嘩するほどなんとかって言うからね!

 それは置いといてよし、名前を考えよう。それにしてもカラスかー。どんな名前にしよう?


「……決めた!ワルト。それが貴方の名前。それで良い?」

『ワルト……。カッコイイ名前じゃないか!気に入った!これから俺はワルトだ!』

「そっかー。良かった!気に入ってくれて!」

『シキ、良いのか?……こんな奴を従魔にする必要あるのか?』


 それはそれで良いと思ったけど、これは流石に言わないとね。


「グイス、こんな奴って言わないの。同じ従魔仲間なんだから、仲良くしないとね」

『……分かった。これからは気を付ける事にする。ワルト、済まない』

『こっちこそ、済まねぇ。……グイスが従うとはな。シキは凄いんだな』

「当たり前だよ!だって、グイスは大切な【友達】だからね!」


 私を信じてくれる、大切な存在。もう、人間なんか信じられないから。


『そうかー。……なぁシキ、俺もその友達に入れてくれないか?』

「えっ?何言ってるの?もう、友達なんだから入ってるよ?」

『……これは頑張らないといけないやつだな!俺、ちょっとここら辺見てくる!』


 バサバサっと飛んで行っちゃった。それにしても、張り切ってたな。なんでだろう?


「ねえグイス、なんでワルト張り切ってたの?」

『期待されていると思ったからじゃないのか?ワルトの事はまだよく分からないが』

「期待されている?そんなこと言ったっけ?」

『……まあ、その内分かると思うぞ。ほら、ワルトが帰ってきたぞ』


 ……?なんだか急いでる?なにかに追われてるような感じ?


『はぁはぁ、やっと、着いた。……大変だ!何故だか知らねえが、人間が沢山こっちに向かって来ている!』

「人間か……。仕方ない。グイス、ワルト、ここからすぐに離れるよ!」

『了解』『了解だ!』


 私達は、走った。とにかく走った。だけど、遅かったんだ。もうすでに人間が先回りして私達を囲っていた。


「……。どうしよう?」

『私がいこう』


 グイスは駆け出して人間を倒し始めた。


『おい、大丈夫なのかよ!』

「グイスなら大丈夫。私とだから。本当は、なってほしくなかったけど……」

『シキ、それはどういう事なんだ?』


 私は言う事に戸惑いを感じていた……。でも、友達なんだから隠し事はしない!


「私とグイスは……ほとんど死んでいる様なものなの。エネルギーさえあれば生きていける。意識すれば五感なども無くすこともできる。……もちろん、痛みもね。そんな存在にグイスがなってしまった。私のせいでね……」

『シキ、アイツの事は会ってから間もないけどな、きっと喜んでいると思うぞ。シキと同じ存在になれたとな。悲しむ必要はないぞ?だって、俺もなりたいからな!』

「ワルト……」

『ワルトの言う通りだ。私はシキと同じになって嬉しいぞ』


 いつの間にか帰ってきたグイスが言う。そうなんだ……。だったら良かった!これで嫌われたら、私は何も信じられなくなる……。


『それにしても、人間達はなにしに来たんだろうな?』


 うーん?確かに。なにか言おうとする前に倒しちゃったから、分からないね。

 ……あまり考えたくないけど、グイスを狙ってきたとか?それがありえるかもしれない。


「もしかしたらグイスを捕まえるために来たのかも?」

『何故だ?私は追い払っていただけだぞ?』

「人間は珍しいものを見ると、色々知りたいから捕まえて研究するんだ。それで来たのかも。早くあの平原に行った方が良いかもしれない。人間から逃げるために」

『分かった。それじゃ行くか』『おい、ちょっと待て!あそこに人間が隠れているぜ!少し、ぶっ飛ばしてくる!』


 ワルトがそこに行って蹴り飛ばすと、「ぐぇっ」確かに人間の声がした。


「ありがとう。ワルト。それじゃあ行こうか」

『おうよ!』『了解』




 

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