第二章
第27話 勇者誕生
「う、う〜ん」
良太郎が静かに目をさますとそこは何もない真っ白な空間だった。
「どうやら戻ってきた……ようだな」
ゆっくりと立ち上がり背伸びをすると大きな欠伸をした。
「ふぁ〜あ」
良太郎が寝起きの体をほぐすように左右に腰を回していると何処からか良太郎を呼ぶ声が聞こえた。
「うん?」
何気なく良太郎が見上げるとそこにはドーリス式のキトンのような服を着たとても美しい女性が宙に浮いていた。女性は体全体が淡い光に包まれていてとても神秘的な様相を呈している。
女性は良太郎に語りかける。
「勇者よ、勇者良太郎よ。よくぞ五年の旅から無事帰還しました」
良太郎はその女性をみて優しく微笑みかける。
「おお、ディアか。五年、長いようであっという間だったな」
良太郎に語りかけている女性は大精霊ディア。この世界を作った神だった。
「お、どうやら現実の世界でも身体つきは変わってるようだ」
勇者になる前とは比べ物にならない筋肉の鎧で覆われている自分の体を確認する良太郎。
「はい、サナダが作り出した仮想世界の経験は全て現実世界に反映されます」
良太郎は自分の右手を見ながら何度か握っては広げる動作を繰り返した。
「うーん、力が漲るなぁ。これなら復活した魔王を倒せるかな?」
そう言いながら自信満々の表情でディアを見る良太郎。だが、それに対してディアの表情は少し暗かった。
「それは……」
ディアが何かを言いかけると良太郎の後ろから白井の声が聞こえた。
「残念だが無理だ。朝井、わかってるだろう?」
良太郎が後ろを振り返ると白井が微笑みながら立っていた。
「先生か、フッ まあな。勇者の力を得ても仲間がいなければ勝てなかったからな。復活した魔王を倒すには涼子達の助けが必要だ。だが、今のあいつらでは力不足。足手まといになるだけだ」
白井は軽く頷くとさっきのまでの笑顔が消え険しい顔つきに変わる。
「そうだ。それに……」
「ああ、わかっているぜ。先生、クラウスだろう? あいつは復活した魔王より手強い。今の俺があいつと戦ったら秒殺だろうな」
「そう、問題は復活した魔王よりもクラウスだ。奴にディアの剣を奪われてはならない」
「奴は今、何処にいるんだ?」
「あいつはディアの剣を俺が持っていると思っているだろう。きっと必死で俺を探しているはずだ」
「なるほど、そこで俺がディアの剣を持って身を隠していればいいわけだ。だが、それだと一生あいつから逃げ回る事になるぜ」
「ああ、勿論逃げ回るだけじゃあ、駄目だ。最終的にはクラウスを倒さなければならない」
「どうする? 何か策があるのか?」
白井は力強く頷いた。
「勿論だ。クラウスを倒す方法は二つ」
「二つ?」
「そうだ、一つは涼子達五人の救世主だ」
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