第26話 僕は勇者になる!
「朝井、大丈夫だ、お前なら出来る。自信を持て、勇者にならなければ『ディアの剣』を装備は出来ない。そして装備できなければ剣を守ることはできない」
白井は揺るぎない表情で良太郎をみている。しかし、良太郎は戸惑いながら言い返す。
「せ、先生! 自信とかの問題ではありません。五、六時間で勇者になるなんて不可能ですよ〜 先生は勇者の力を得るのにどのくらいかかったのですか?」
「大精霊に認められて『ディアの剣』を装備を出来るようになるまでご四年、魔王を倒したのがその一年後だ」
「ぶーーーー!! 普通はそのぐらいはかかりますよね」
「朝井、安心しろ。俺が作ったある物を使えば、お前は今日、勇者になれる」
「ええ! そんな便利なものがあるんですか! は、早く見せてください!」
「ふふ、わかった、いま見せてやる」
そういうと白井は近くにある壁に手をかざすとその壁が光りだした。
「うお! 眩しい!」
あまりの眩しさに良太郎は慌てて目をつぶる。
「朝井、もう、目を開けても大丈夫だぞ」
白井の言葉を聞いて良太郎は恐る恐る目を開ける。すると先ほどただの壁だった所に大きな扉が出現していた。
「せ、先生、こ、この扉は?」
「驚くなよ朝井、この扉の中はなぁ、俺の記憶を具現化した世界になっているんだ」
「せ、先生の記憶を具現化?」
「そうだ、俺の本当の名前サナダ・ユキマサという名前からわかるように俺も日本人でこの世界に転移してきた。そしてお前達と同じよう魔王を討伐を依頼され旅に出された。まあ色々あったが、結局、俺は五年かけて魔王を倒した。この扉の中はその記憶を具現化していて扉の中に入った者は俺の魔王を倒すまでの記憶を追体験できるようになっているんだ」
「ええ!先生の冒険を体験できるのですか?」
「ああ、そうだ。しかし、体験できるだけではない。この扉の中で得た経験は全て自分が経験したのと同じようにレベルアップも出来る」
「す、すごい、で、でも…… 先生が魔王を倒すのに五年かかった言ってましたけど、それならこの中に五年いなくてはいけないのですか?」
「そうだ、だが、この扉の中はあくまでも俺の記憶を具現化したものだ。だから俺が操作すれば何倍もの速さで時間を動かす事も可能だ。…… う〜ん、そうだな、だいたい八千倍ぐらいの速さで時を動かせる」
「そ、そんな事ができるんですね…… で、でも、実際は五年の年をとってしまうんですよね?」
「ああ、それは仕方がない。だが、勇者になれば不老の力が手に入る。一瞬で五年ほど年をとるぐらいどうって事ない」
「た、確かに……」
「ただ、一つ注意しなければいけない事がある」
「え? 注意? それは何ですか?」
「この扉の中で受けたダメージは全て本当の痛みで死ねば本当に死んでしまう」
「そ、そんな……」
「朝井、いきなりとんでもないお願いして悪いがこの扉の中に入って勇者になってくれ…… 頼む」
「で、でも…… 自分みたいな弱い人間に勇者なんてなれるのでしょうか?」
良太郎は不安そうな顔をしている。それを見て白井は地面に生えているグローフラワーを一本抜き良太郎の目に差し出すと穏やか口調で話しだした。
「……朝井、このグローフラワーを見ろ。この花は弱い魔法を与える事によって光を放ち続ける事が出来る。だが、強い魔法をかけてしまうと一瞬で燃え尽きてしまうんだ。つまりこの花は弱い力を与える事によって本来の力を発揮って事なんだ。わかるか?」
「は、はい」
「それと朝井、宮内を助けた時の事を思い出せ。盗賊が最初にお前を襲わなかったのは何故だと思う?それはお前を弱いと判断したからだ。弱いお前などいつでも殺せると思ったから襲われなかったんだ。だが、もし盗賊がお前を強いと判断していたら真っ先に命が狙われていただろう。そうなっていたら宮内を助ける事などできなかったはずだ。だから、朝井、弱いからって何も出来ないと思うな。むしろ弱いからこそ出来る事もあるんだ。自信を持て。お前なら絶対にできる」
しばらく悩んでいる良太郎だったが決意を固めたようでまっすぐ白井の目を見て答えた。
「わかりました。俺、やります。勇者になります!」
「そうか、ありがとう朝井」
白井は良太郎に感謝の言葉を述べると扉を開けた。
「さあ、入れ。そして勇者になって戻ってこい」
「はい!」
良太郎が力強く返事をすると扉の中にゆっくりと入っていった。
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