第25話 勇者はお前だ
「せ、先生…… と、言う事は本当の預言は救世主は六人いて、そのうちの一人が僕と言うことですか?」
やっと口を開いた良太郎は鳩が豆鉄砲をくらったように狼狽していた。
「そうだ」
「先生の預言と言うのは信じてもいいものなのでしょうか?」
良太郎は疑心暗鬼に陥る。だが、白井は自信を持って答えた。
「ああ。魔王を倒した瞬間、光に包まれ、そして未来が見えた。お前たち六人が復活した魔王討伐の旅に出てる姿がな」
白井の言葉を訝しむが同時に疑問が生まれた。良太郎はその疑問を白井に投げかけてみる。
「とてもじゃないけど、信じられない…… だけど、もし本当なら、なぜ、そもそも嘘の預言書なんて作ったのですか?」
良太郎の疑問に白井は一瞬だけ悲しい表情を浮かべた。だが、すぐに笑顔に戻ると話を始める。
「朝井、まずはその理由から話そう」
「は……はい」
「それはクラウスという男からお前の存在を隠しておきたかったからだ」
聞き覚えのない名前に良太郎はどう反応すればよいかわからかったがとりあえず質問をした。
「クラウス……? 誰ですか…… それになぜ僕の事を隠すのですか?」
白井は軽くうなずくと話を続けた。
「クラウスは俺と一緒に魔王を倒した仲間。救世主の一人だ。だが、奴は……俺たちを裏切り魔王側についた」
「裏切り……」
「そうだ、魔王を倒してから数ヶ月後、奴は突然、俺を襲ってきた。魔王討伐当時の俺とクラウスの実力は拮抗していたが、襲ってきた時のクラウスの強さは俺を遥かに凌駕していた」
「勇者の先生よりも……」
「奴は魔王に忠誠を誓う事により大いなる力を得る事ができる『忠誠の儀』を行ったのだ。『忠誠の儀』は魔王から直接施しを受けなければ出来ない。奴は魔王討伐当時から裏切っていた。そして、クラウスは俺を殺そうとするだけではなく『ディアの剣』を奪おうとした」
「『ディアの剣』…… 確か選ばれた勇者だけが持てる魔王を倒せる剣……」
「そうだ、実は『ディアの剣』は魔王を倒すだけではなく魔王をさらに進化させる力を持っている」
「……魔王をさらに進化ですか!」
「ああ、俺は大怪我を負いながらもなんとか『ディアの剣』を奪われずにクラウスから逃げる事が出来た」
白井はそういうと右手を広げた。すると空間がビリビリと裂ける音が聞こえ裂けた空間の中から一本の剣を出てきた。
「これはもしや……」
「そうだ『ディアの剣』だ。この剣は絶対クラウスに奪われてはならない。……そして、この剣はお前がクラウスから守るんだ。それがお前の存在を隠さなければない理由だ」
「ええ! 何故ぼくが?」
驚きのあまり目を白黒させている良太郎の肩を白井は力強く摑む。そして衝撃な真実を打ち明ける。
「それはお前が勇者だからだ」
良太郎はまるで後頭部を殴られるような衝撃を受けた。
「ぼくが勇者! そんなバカな! 救世主だってのも信じられないのに勇者だなんて展開が急すぎます」
慌てふためいている良太郎を尻目に白井は構わず話を進める。
「これは事実だ。俺が見た未来ではお前が『ディアの剣』を装備していた」
「か、仮にぼくが勇者だったとしても今のぼくにはなんの力もありません」
「今はな…… だが、お前は今日勇者の力を手に入れる」
「今日ですか?」
「そうだ、お前は五、六時間後ぐらいには勇者になっている」
良太郎はあまりの突拍子もない話に悲鳴にも似た叫び声をあげた。
「そんなの無理に決まってますよ〜!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます