第17話「蒼流の滝」到着

「うおーーーーー!!」


 雄叫びを上げながら久仁彦はグリーンフライに向かって走っていく。


「おりゃ!」


 久仁彦は飛び上がりグレートソードを振り抜いた。だがその攻撃をグリーンフライはスイッと避ける。そして左右に分かれ久仁彦に攻撃を仕掛けた。


「うお!あぶねぇ」


 左右からグリーンフライは次々とハサミ攻撃を繰り出してく。しかし久仁彦はそれを上手に躱しながら右の方へ移動していくとそれにつられグリーンフライも右の方へと移動する。

 

(敵の攻撃を躱しつつ上手く誘導しているな。いいぞ)


 良太郎は感心しながら頷いて見ている。


「今だ、渉美。回り込んでレッドフライを倒すぞ」


 久仁彦とグリーンフライが移動したのを見て赤井は動き出した。


「はい!」


 渉美が赤井の後をついていく。赤井達は回り込んでレッドフライの方へ向かうとレッドフライが赤井達に気づき襲いかかってきた。


「渉美、スキルや魔法は使うなよ。滝までは距離がある、敵はまだまだ多い、出来るだけ"アース"を温存するんだ」


「了解です」


 渉美が剣を構える。


 ---


 久仁彦はグリーンフライを上手く誘導できたので本気を出し始めた。


「おりゃ!」


 久仁彦の剣を振り抜くとスバッという音とともにグリーンフライは真っ二つになって蒸発していく。

 

 その剣の威力に圧倒されるグリーンフライは慎重になり久仁彦と距離を取り始めた。だが、久仁彦は構わず突進していくとまたもグリーンフライを真っ二つにした。


 残り3匹となったグリーンフライ。その内の1匹がくるりと旋回して久仁彦の背後に回り込んで攻撃してきた。

 

 グリーンフライのハサミ攻撃が久仁彦を襲う。

 

 だがしかしその攻撃は不発に終わった。


 グリーンフライが久仁彦の首を狩ろうとした寸前、涼子の矢がその頭を貫いたのだ。ドン!という鈍く重い音とともに矢に貫かれたグリーンフライが吹っ飛んでいく


「 涼子、サンキュー!」


 久仁彦が礼を言うと涼子は親指を立てて「私の分も取っておいてよ」と軽口を言う。


(素早く動くグリーンフライの急所を的確に矢で貫いたか。それに矢の威力も相当だ)


 良太郎は涼子の弓の威力と正確さにまたも感心して頷く。


 グリーンフライは久仁彦と涼子だけで倒しきってしまった。久仁彦が満足そうな顔で剣を鞘に納めると涼子と沙夜香が駆け寄ってきた。


「あらら、私の出番はなかったわね」

 

 沙夜香が残念そうに肩をすくめる。


「まだまだ先は長いわ、沙夜香の魔法はまだ温存しておいた方がいいからね。この程度の敵だったら私たちで十分よ」


 涼子がそういうと「まっ! 確かに私はこの一行パーティの切り札ですから」と沙夜香は髪をかきあげフフン!という表情で軽く笑い腰に手を当てモデルのような颯爽としたポーズをとる。

 そんな浮かれた沙夜香がポーズを取ったままでいると突如、渉美の叫び声が聞こえた。


「お姉ちゃん、危ない後ろ!」


「え?何よ」


 沙夜香はカッコつけている所を邪魔されてので面倒くさそうに振り向いた。すると目の前にレッドフライのハサミが向かってきていた。思わず悲鳴をあげる沙夜香。


「きゃー」


 あまりの突然なレッドフライの攻撃に沙夜香は驚き両手を広げ何もできなかった。万事休す、そう思われたがレッドフライの後ろから誰からが飛び込んできた。


「お姉ちゃんをやらせはしないわよ!とーりゃ!」


 それは渉美だった、彼女は剣を素早く左右上下斜めと動かすとレッドフライは「ぎゃー」という鳴き声とともに微塵に切り刻まれた。


(おいおい、沙夜香、油断しすぎだっつーの。あ、あぶねーなぁ。だが渉美の剣捌き、なかなか素早い。あれは剣士のスキル『連続剣』並みのスピードだ。それを筋力だけでやるとは大したもんだ)


「もう、お姉ちゃん油断しすぎぃ〜」


 渉美が呆れ顔で沙夜香を見る。沙夜香は気まずそうな顔で言い訳をした。


「い、いや。私は渉美がレッドフライを倒しやすいようにわざと油断させて誘き寄せたのよ。そ、そんな事もわからないの!」


 沙夜香の苦し紛れの言い訳にみな、若干引き気味の顔で聞き流した。


「沙夜香、大丈夫か?」


 赤井も来て沙夜香に声をかける。すでにもう1匹のレッドフライは倒したようだ。


「し、心配無用よ、魔物は全部倒したようね。さ、先を急ぎましょう」


 赤井は沙夜香の狼狽えた様子に気づかず安心した顔で頷いた。


「わかった、滝へ急ごう。朝井! もう出てきても大丈夫だ」


 良太郎が岩場から出てくると赤井たちは滝へと向かって歩き出した。途中、何度かフライ系の魔物に襲われたが順調に倒し進んでいく。


 そして、そろそろ「蒼流の滝」に着きそうな距離まで進むと「ザー」と水が流れる音が聞こえてきた。


「これって滝の音?」


 涼子が聞くと赤井が答えた。


「ああ、着いたみたいなだな」


 全員、音が聞こえる方へ進むと広く岩場が多い場所に出た。その先には青く光輝く水が流れる滝が見える。


「わぁ、綺麗!」


 涼子、沙夜香、渉美の三人は木漏れ日が差し込み神秘的なブルーの水が流れる滝。そしてその周りをキラキラと光る草が覆っている景色を見て感動していた。


 涼子達が滝に近づこうとすると感動的な景色に似つかわしくない物体が唸り声を上げながら木々の間からゾロゾロと出没してきた。


「来たな…… 野生ゴランとポイズンウルフに群れだ。結構多いぞ、みんな、スキルや魔法を出し惜しみするなよ」


 赤井が皆にいうと全員、無言で頷いた。


「真司! 言い忘れたけど、野生ゴランは力が強いだけじゃなくて結構、体も頑丈よ」


 沙夜香のアドバイスに赤井は頷き、皆に指示を出した。


「よし!ゴランは俺と久仁彦でやる。三人はポイズンウルフを相手してくれ。毒に気をつけろよ!」


 赤井の指示で全員が配置につくと各々武器を構えた。良太郎は先ほど同様近くの岩場に身を隠した。


(さて、ゴランとポイズンウルフはフライ系の魔物とはレベルが違うぞ、それに数も多い…… どう戦うか。こっからが本番だ)


 良太郎は少し心配しながらも皆の戦いを見守った。

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