第15章 沖縄
第229話 またご主人様にほったらかされるんですね
「あれが737で、あっちにあるのは350。今離陸したのは787です」
「詳しい……。なんでわかるの」
「大きさと会社と顔とエンジンと翼端とケツの形状で大体わかりますよ」
「みふって一体何のオタクなの? 車も詳しいし飛行機も詳しいし……」
空港にて、進と美冬は窓から外を眺めていた。
今日は修学旅行の出発日。沖縄へ行く飛行機に乗るべく、集合場所である空港まで来ていた。
「はあ……これから3泊4日。美冬はまたご主人様にほったらかされるんですね」
「タイミング見て喚ぶって言ってるじゃないか」
「でも夜は一緒に居れないじゃないですか」
「俺の世話から解放されると思ってさ」
「いま何月かわかってますよね。雷の季節ですよ。ご主人様が居ないと美冬の方が恐怖で死んじゃいます」
「大丈夫大丈夫、今週は天気良いから」
「東京はスコールが降るんですよご存知でしょう」
美冬は死にそうな顔をしながら、スマホの時計を確認する。
「一緒に居れるのもあと5分……ぅ」
「まあちょっと我慢して」
「ぅぃゃぁぁぁ……」
人目も憚らず、謎めいたうめき声で抱きついた。まるでこれが今生の別れとも言いたげに。
そろそろ集合時間もギリギリ。
完全に泣きだした美冬は、無情にも進に引き剥がされてしまった。進としても胸が引き裂かれる思いではあるのだが。
取り残された美冬は暫く虚無になり突っ立って、進が乗った飛行機が離陸して行くのを見送った。航行中の航空機を追跡できるアプリを開き、進が乗る飛行機を追いかける。進はこれから2時間半のフライトだが、美冬はバスに乗って1時間をかけて帰宅するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます