第227話 仲直りえっち

 自分でもわかっている。一方的すぎるくせに、それに対する返礼を求めている。理屈と理性ではわかっている。だが、感情が割り切ってくれない。

 

 しかし、目の前で、いま拘束している進が逃げ場もなく打ちひしがれているのを見て、得体のしれない安心感に包まれている。進は間違い無く自分を想っている。そして、それを自分に伝えられずに無力感に苛まれている。

 それ自体に、心地よさを感じている。

 

「美冬は、ご主人様のこと信じてますよ」

 

 美冬は体を前に動かし、進の背中に回していた腕を、そのまま頭を抱くようにした。

「でも捨てられるのが怖くて」

「捨てるはず無い……!」

「安心したいんです」

 進が、縋るように美冬を抱く。美冬に抱かれるのに任せて、胸に額を擦付けた。

「美冬がご主人様の負担になってるなら言ってください。そう言ってくれないと、ご主人様の気持ちを無限に欲しがっちゃいます」

「負担なわけ無いだろ!」

「生殺しにされるのが一番辛いんです」

「頼むから、そんなこと言うなよ……。不安になったら、何とかして安心させられるようにするから」

 

 そろそろ、進の抱く力が強くなって、痛くなってきた。その痛みさえ愛おしく心地良い。このまま潰されて主人の腕の中で死んでいくのもいっそのこと良いかもしれない。

 先程まで納得いかない気分だったはずが、今は幸せな気分だ。

 必死に愛情を伝えようとする主の姿が、愛おしくてたまらない。

 

「ごめん……ごめんね、みふ……」

「わかりました。わかりました。美冬も言い過ぎました。男の子がそんな情けない声しないでくださいよ」

 顔は必死に隠して見せてくれない。きっと今までで最も可愛い顔をしているはずなのに。

「さっきの続きで、仲直りしましょ?」

「……?」

「仲直りえっち」

「──ごめん今そういう気分になれない」

「なら無理やりします」

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