第214話 娘の反抗期なのか単に機嫌が悪いのか

 サーキットに、いつの間にかぞろぞろと車が集結し始めた。

 仙台本部の車が到着したのだ。どれもこれも新しくて綺麗で高級な車ばかりだ。妖や魔法を使う人間と戦わなくてはならないという任務の性質上、高性能な自動車が戦闘要員として選ばれるのはある意味当然だ。

 

 さて、その中のWRXに乗ってやってきた美冬の父は、娘と一言二言交わしたら、なぜか娘からそそくさと退散してしまった。

 

「なあ、朝乃……」

 そして、暇そうにしていた進の姉に絡みだした。

「娘の反抗期なのか単に機嫌が悪いのかわかんないんだが」

「両方じゃないの」

「……」

 父はうなだれた。

「すぅは?」

「進は……たぶんアリスのところ。みふちゃん、進がアリスばかり構うって言ってヤキモチやいて怒ってんの」

「そうかアイツのせいか」

 

 娘の主だし、娘が気に入っている人間だからと面倒を見てやっていたがしかし、こうなれば話は別だ。殺すしかない。

 

 と思ったら、進が現れ、美冬に抹茶ラテらしきペットボトルのジュースを渡した。何か一言二言喋った後に、美冬は機嫌を直したらしく、仲良さそうに手を繋いでどこかへ行ってしまった。

 進の完全勝利である。

 

 振り上げた拳と怒りを向ける場所を失い、残ったのは敗北感のみ。

 

 さて、そんな進は

「さっきみふパパっぽい人影を見たんだけど」

「気のせいですよ」

「いやでも挨拶くらいしておきたいし」

「気のせいですって」

 美冬によって、美冬の父と会うことはしばらく無かった。

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