第207話 ご主人様は変態さんですね

「で、将来、義妹になる女との浮気は楽しかったですか?」

「楽しくないよ……」

 美冬の嫌味を込めた一撃は、妙な効き方をした。

 進は何かを思い悩んでいる様子で、美冬を抱き上げることも無く、横を通り抜けてしまった。

 流石に何かおかしいと思って、後を追いかけた。

 パーカーを脱いで落ち着いたところで「差し支えなければ」と嫌味の節を抑える。

「美夏に何か言われました? 魔導庁に戻ってこい、とか?」

「それもそうなんだけど」

 進は時計を見て、風呂でも入ろうと思いつつ寝巻きとタオルを取った。

「ちょっと、みなの様子というか……あの子も大変なんだなって思ってさ」

「美夏の様子?」

「うん。あ、みふ、風呂どうする? その姿だから要らないかな?」

「……え、入りますよ。逆になんで入らないと思ったんですか」 

 

 †

 

 シャワーで濡れた狐は、それはそれはみすぼらしい細い体になる。かと思えば、一度シャンプーでワシャワシャすれば一気に泡でモコモコな謎の生物になり、ついでに毛がごっそり抜ける。

 一先ず背中を洗ったら、ひっくり返して腹も洗う。

「なんか……アレみたいだな。羊の毛刈り。テレビでたまに見るやつ」

 だがこの感想はスルーされた。

 

「って、どこ舐めてんだよ」

「どこって、目の前で見せびらかせてたので、舐めろという暗示かと思ったんですけど」

「いや決してそう言うわけでは……!」

「わぁ、狐に舐められておっきくして。やっぱりご主人様は変態さんですね」

「クッッッッ────!!」

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