第13章 ケモミミっ娘に戻れなくなった
第202話 精神的なところから来てるんだろうね
何の気まぐれか。進が家に帰るといつも美冬が出迎えるのだが、最近は狐の姿で出迎えてくることが多くなってきた。玄関を開けると、黄色い目のプラチナ狐が上品にお座りして待っているのだから、人間としてはこれほど癒されることもそうあるモノでもない。
進はその美冬を抱き上げて部屋に上がり、荷物を置いてからひとしきりモフって手洗いうがいに向かう。
そしてまた、部屋で丸くなっている狐を無理矢理抱き上げては問答無用にモフったり吸ったりする。
少しの間、そんな生活が続いていた頃。
「──あれ」
夕飯を作るからと、進から抜け出し台所に立ったプラチナ狐が素っ頓狂な声を上げた。
しばらくウロウロと台所を歩き回り、ピタッと止まっては首を傾げる。
何かがおかしい。
「んん? んんんん……??」
その場でぐるぐる回ってみてもだめ。
そもそも普段はこんな事せずに良いのだが。
居間から覗いていた進がやっと「どうした?」と聞いて、やっと美冬が恐る恐る自覚し始める。
「なれないんです……人の姿に……」
†
「精神的なところから来てるんだろうね」
淡々と、医者が告げた。
「精神的なところ……」
「ストレスとか」
「ストレス」
そして進が一言一言噛み締めるように繰り返して理解する。
美冬が、ストレスのせいで、ケモミミっ娘になれなくなったと。
進は打ちひしがれた気持ちで、ゲージに入った美冬を抱えて診察室を出た。
何か変なものでも食べたのか。体に良からぬことが起きたのか。そう思って、美冬を犬用のゲージに突っ込んで急いで妖怪を診てもらえる病院まで来たのだが……。
ストレス。
美冬のストレス。
美冬のストレスが原因。
そのストレス源といえば、これはもう自分しかない。自分以外に何があろうか。では、具体的な原因は何だ。考えて、即座に思い浮かばない。
家事を押し付け過ぎたとか、モフり過ぎたとか。
美冬のストレスとなる原因がわからないほど己が阿呆であった事に気付き、更に落ち込む。
トボトボと家に帰り着き、ふと立ち尽くす。
さほど気にしていない美冬は、ゲージから出るなりあくびをして「あーお夕飯どうしましょ」と別の心配を始めた。
「あの……みふ……」
「はい」
「俺が、その、みふのストレスの原因とかで……知らないうちにみふに負担かけてたりとかしたてたら、言って欲しい……」
「ん? 何の事ですか?」
進は拳を硬く握って、己の不甲斐なさを痛感する。
「俺はみふのこと、何もわかってなかった……。無自覚にみふを傷付けてたなんて……!」
「え? ええ? ま、待って待って待ってください何で泣いてるんですか!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます