第200話 もっと人間の事を嫌ってる印象だった

「日戸君と美冬さんって、どんな関係なの?」

「夫婦です」

 

 芙蓉が何気なく聞いたことに対し、美冬が自信を持って即答した。

 だが芙蓉は釈然としない様子。

 それを察した美冬が、追加説明する。

「元々は美冬が召喚獣でご主人様がご主人様っていう契約だったんですけども。お互いがお互いを思う気持ちがそんな契約じゃ満足出来なくなってしまったんです。だから今はもう身も心も全部がご主人様のモノ。出来るなら、ご主人様を閉じ込めてでもずっと一緒が良い……」

 進にスリスリしながら尻尾を振る。

 あまりの熱量に周囲が若干距離を取っているのも気にしていない。

 

「そー言えば、美冬は進のどこが好きなの」

 今度余計な事を聞いてしまったのは満里奈だった。

「全部」

 そして淡々と即答した。照れる素振りもなく。

「あ、うん」

「もう好きとか低レベルな単語はあまり使いたくないんですけど、強いて言えば全部」

「あ、うん、わかった。うん。ごめん」

 満里奈は迂闊に聞いてしまったことを後悔する。

「ご主人様ね、欠点が無いわけじゃ無いんですよ? 朝も一人じゃ起きられないですし、服のセンス悪いですし、お人好しすぎてすぐトラブルに巻き込まれちゃうしで……。でも、そんなところを見てると、ああ、この人は美冬が居ないと駄目になっちゃうなあ〜って思って。美冬が一緒に居てあげないとダメなんですよ」

 満里奈は迂闊に聞いてしまったことを更に後悔する。

 初花はどこか冷たい目で美冬を見ていたが、美冬は気付かない。

  

 だが芙蓉は、むしろ感心したような反応だった。

「妖怪って、もっと人間の事を嫌ってる印象だったけど、美冬ちゃんみたいな子も居るんだ……」

 初花が頷く。

「うん。もちろん人間嫌いの妖怪も居るけど、それはもうモノによるよ。それでも美冬は少し特殊だと思うけど」

「──……」

 

 美冬が何か言い返したそうにしているのを、進が美冬の牙を撫でて誤魔化す。

 初花と芙蓉、満里奈、サラは勝手に話を盛り上げ始めたので、進と美冬は自ら蚊帳の外に出た。

 未だに狐の姿のままだが、抱き上げやすくて良い。肉球の少し硬い感触を楽しむ。

「少し爪伸びてきたね。後で切ろうか」

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