第193話 仕返しにおっぱい

 美冬の尻尾をドライヤーで乾かしたのはいつも通り。

 だが少しいつもどおりでは無いのが、進の心境だった。

 変に負けず嫌いなのが彼の悪い性格で、どうにも美冬に誂われたままなのは面白くない。

 進に寄りかかってソシャゲに勤しむ美冬の顔を見て、決心する。

 

 美冬を抱きかかえて、あぐらの上に座らせる。

「んっ……何ですか急に」

「さっきの仕返し」

「仕返しにおっぱいですか? えっち」

 ワンピースの裾を上げても、抵抗しない。

「明日学校ですよ」

「みふのせい」

「えへへ。仕方ないですね」

 

 笑って誤魔化しているあたり、確信犯だった。

 スマホを置いて、座る位置を直す。

「ぁっ、まって」

 触れられて声が漏れるのを誤魔化すために、急いで振り向いて抱きつき、口を主人の唇を使って塞いだ。

 

 †

 

 朝。

 またしても、美冬に叩き起こされなかった。

 ほぼ同時に美冬も目を覚まして、起き上がる。しばらく抱き合って「もうこんな時間……」と気付く。

 

 いつも通り朝の作業をこなして、家を出る時間になる。

 寝巻にしている薄手のワンピースにエプロン姿の美冬に玄関で送り出される。

「もう下手にあのブス女に深入りしないで下さいね。それと早く帰ってきてください」

「うん、わかってる」

「ならばよろしい」

 気を付けて行ってらっしゃい、と口では言う割に、指がシャツを掴んでいる。

 少し心細くなる儚げな表情。

 

 つい、抱き上げて、珍しく進の方から口付けしてしまう。

 一瞬美冬は驚いたが、すぐに両手で進の頬を掴む。

「んっ……」

 進がやめようとしても、美冬が離さない。

 

 しばらく攻防が続き、やっと離れると、だがすぐに美冬が抱き着く。

「今日は学校お休みして、お家に居てくれませんか……?」

「流石にそれは出来ないよ」

「でもいきなりちゅーされちゃったから……もう我慢できないです」

「ごめん、帰るまで我慢して」

「んんっ……じゃぁ……帰ってきたら……続き、してくださいね……?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る