第190話 いっけなーい殺意殺意
結論から、何も効かなかった。物理的な手段を取ろうとしても強固な防壁に阻まれ刃が通らず、その防壁を魔法で無効化しようとしても進とサラの最大出力による妨害すら効かなかった。
万策尽きて、時間も良い時間だ。とうとう「帰るか」となった。
一分一秒でも早く帰って欲しいと思っている美冬は、見送りも玄関出た廊下から。進はアリスと駄弁るためにわざわざ降りていった。
まず美冬の耳は狐の耳なのでとても優れている。たかだかアパートの2階の廊下から道路までの距離。そこの会話など人間でさえ聴き取れるのに、美冬が聞こえないはずが無い。
耳を澄ませずとも聞こえてくる。
まず、アリスと色々喋っているらしい。アリスは文字なので内容を知る事はできないが、なにやらデートの約束を取り付けたらしい。進とアリスはやけに仲が良いが、流石にこれはおかしすぎる。
次にサラ。サラとはあくまで業務的な話だが、モフっているらしい。とても、モフっているらしい。
そして美夏。美夏はサラにしていたモフりを自分にも、とせがんでいる。
最後に井上芙蓉。適当な挨拶だけしたらしい。
さて。
いっけなーい! 殺意殺意! 私、専業主婦! いつも主人に身も心も捧げて尽くしている可愛い可愛いお嫁さん☆ でもある日、主人の浮気現場を見ちゃって大変(涙) 車にガチ犬、それにケモミミっ娘!? もう主人の性癖には付いていけない! 次回「誰から殺せばいい?」お楽しみに♡
進が帰ってくるのを待って、家に入り、鍵を閉めてその場で進を壁ドンする。
「で? アリスとデートってどういうことですかなんで犬と愚妹をモフってるんですかどう言うことですか説明してください」
「落ち着いて落ち着いて。ただの社交辞令だから」
「いっけなーい殺意殺意」
「おお懐かしい、それ」
ひとまず、進は美冬を押しのけた。
そのまま部屋に戻ろうとするのを、美冬が後ろから抱き着いて耳に噛みつく。
「ご主人様? 明日も学校ですよ? 早くお風呂入らないとですね」
「ああ、うん」
「でもこんな時間。美冬もうるさい連中の相手して疲れちゃいました。早くお布団入りたいんですよ?」
「……うん」
「ねぇご主人様? 昨日と今日、少し二人きりの時間、足りてないですよね」
「わかったわかった。髪洗ってあげるからそれで許して」
途端、美冬がグイグイと進の背中を押して、風呂場へ直行した。
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