第184話 どこにいるんですか?
そして進の番が回ってきた。
本当なら趣味とか興味があることとか、何も言わずにフェードアウトするつもりだった。
「魔法とか妖怪……心霊現象なんかに興味があります」
クラス中が「何だあいつ」みたいな反応になる中で、根暗女子の反応だけ、信じ難いものを見るような反応だったのを、一瞬だけ捉えた。
午前中には学校は終わったが、午後にやることが出来てしまった。
特別にボランティア精神が強いわけではないが、見て見ぬ振りは出来ない。
しかし、進に急に話しかけるなんて言う度胸もない。
それに、突然話しかけて、一般人からすればわけのわからない話なんかしたら、ヤバイやつ確定だ。無理だ。絶対無理。
故に、話しかけずに追いかける事にした。
何も知りませんよ、みたいなフリをして、他の下校中の生徒に紛れ、さり気なく同じ車両の電車に乗り、スマホを見るフリをして、根暗女子を観察した。
見れば見るほど、勘違いではないということがハッキリしていく。
薄いがしかし、確実にいる。
根暗女子の首に巻き付く、小さな蛇。
電車を降り、根暗女子の後を追う。傍らで、姉に電話を入れる。何回かのコールの後に『ほいほい』と久々に聞く声がした。
「姉さん今、仕事中?」
『休憩中だよ〜どうしたの』
「ちょっと嫌なもの見ちゃって」
閑静な住宅街を歩いて進み、根暗女子の家に辿り着く。
いくつも綺麗で新しくガレージ付きのそこそこ大きな一戸建てが並んでおり、根暗女子もそのうちの一つに入っていった。
『嫌なものって?』
「首に蛇が巻き付いてた。憑き物かなんかだと思う……」
『うーん……お姉さんも今色々抱えてて手が離せないんだよねえ。憑き物も専門外だし。詳しいのは……葵さんかなあ。それ、進の同級生か何か? クラスと名前がわかれば一応上には報告しておくね』
「そう、同じクラス。2Dの……確か……井上だったと思う。
『イノウエフヨウね、おーけー』
報告する前提で名前をしっかり覚えておいてよかった。
『一応伝えるけど』
「動くとは限らない、でしょ」
『そう、ね、だから進の方でも警戒しといてね。憑き物って、放っておくと大変なことになっちゃうから』
憑かれている本人が、死ぬ。
それだけではない。例えばそれが、誰かが意図をもってやった呪いの憑き物であった場合、根本から解決しなければ、また他の者が呪いの標的となる。
朝乃との通話を切って、帰ろうとした瞬間、美冬から電話が来た。まるで朝乃との通話が終わるのを待っていたかのようなタイミングで。
寄り道したので帰りが遅くなっているのを心配しているのか。
今すぐ帰る旨を伝える為、電話に出た。
『どこにいるんですか?』
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