第167話 ただのしかばねのようだ
そして今日も休日を無駄にして過ごした。買い物に行き洗濯機も回したので完全な無駄という事ではないが、何か生産性のあることをしたわけではなく、だらけてゲームをやって終了だ。
美冬は、風呂上がりに狐の姿になって暖房に当たりながらへそ天していた。
冬になるとよく見れる姿だ。
こうなった美冬は基本的に何やっても怒らない。怒らないというよりも、何をされても断固として動じない、と言う方が正しい。それを良いことに進はひたすら腹の毛をワシャワシャして一方的に癒されている。
ワシャワシャして、毛をかき分けてみたり、嫌がらせの如くいじくり回している。
「あの、さっきから何ですか」
流石の美冬もとうとう声をかけた。
「みふは8個なんだなって」
「はい?」
「乳首の数」
「……え、はあ?」
「キタギツネとホンドギツネだと乳首の数が違うらしくて。みふはプラチナ毛だから多分キタキツネだけど実際のところどうなんだろうと思って」
「いや、あの、妖怪……なんですけど……」
「結構綺麗なピンク色じゃん」
「聞いてない……」
美冬は呆れて、弄られる事を大人しく受け入れた。
そもそも下着には興味を示さないくせに、狐の乳首には興味津々のこの野郎は一体何なのか。ケモナーか。相当の変態なのか。もしくは、美冬が居るからこそ変態になってしまったのか。
美冬は気付く。ケモナーならケモナーで、美冬のステータスと一致するので大した問題ではない。 むしろ良いのでは? 確かに、ケモミミが性癖であるとの言質は押さえている。発言どころか、腹の吸い付くなどという蛮行にまで及んでいるのだ。それはまるで、サイクロン掃除機の如く。
相手をされている分には気分が良いので「まあ今日ぐらいは許してやるか」のスタンスで、どこを吸われようが受け入れてやることにしたのだが……。
……。
さて吸われ始めてから暫く経ったはずだ。
普段であれば蹴とばしてやるのだが、進は止めなければ無限に続けるらしい。一向に辞める気配がない。息は有るので生きてはいるらしい。
いや。
「ごしゅじんさま〜……?」
反応がない。
「ただのしかばねのようだ……?」
寝ているらしい。
この状況で寝るか普通。寝るほど心地良かった、と解釈をすれば美冬も納得するが、可笑しさの方が勝った。
まだ布団も敷いていないので、仕方なく進を起こさないように這い出た。普段通りの獣耳っ娘の姿になり、テーブルを端に寄せて押し入れから布団を取り出し、床に敷く。
進を叩き起こし、7割くらい眠っている彼を無理やり布団に突っ込んだら、美冬も電気を消してそのまま布団に潜り込んだ。
進は寝ぼけているのか、はたまた寝ぼけたふりをしているのか。美冬の胸に顔を擦りつかせて抱き着く。
明日は学校だ。仕方ない。主の快眠のために、美冬は自身の身体を差し出す事にした。
その前に、この状態をスマホのカメラに納めて、既成事実をしっかりと保存することは忘れない。
最近のスマホのカメラは暗闇でも多少の明かりがあればしっかりと写る。
そして、美冬の胸に抱き着く進の姿がしっかりと収められ、彼を弄り倒すネタが増えたのであった。
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