第114話 人間がゴミの様ですね
仙台の冬は、極寒と言うほど寒くはない。雪も酷く降るわけでもない。
東北だからと激寒のレッテルが張られているが、実は仙台と言う土地において、冬と言う季節は丁度良く綺麗に似合う場所だ。
だがしかし、コートやダウンなど、そういう防寒具を着ていない状態では非常に寒い。
うるさいよりはマシか。
寒いのには慣れている。
庭に何台も停められた車のうち、ウチのCX-5に寄りかかった。
なんでこうも我が家はマツダ車しかないのか、と美冬は改めて思う。
スマホの画面をつけ、ロックを解除する。
菊花とチャットをしていたことを思いだした。完全に、既読無視が1時間続いている状態。
1時間前に見た人混みの凄い神田明神の写真。
一応「人間がゴミの様ですね」と返事しておく。妖怪として模範的な返事だ。
田舎でも、電波はちゃんと届く。
インターネットも問題ない。
一人にはなれたが、寒い上にやることがない。
曇り空を眺めてぼーっとする。
凄まじい虚無と孤独を感じる。
虚無は心地よい。孤独も、もともと独りが好きな彼女にとっては大した問題ではない。
「違う……」
違う。
独りは好きではない。うるさいのと、他人が嫌いなだけ。
孤独は嫌だ。依存する相手が欲しい。ただ隣に居るだけとか、人肌恋しさを満たしてくれる存在が欲しいだけ。
美冬にとって、それに該当する存在が日戸進という人畜無害なモノだけだったという話。
手持ち無沙汰になると、彼とのチャット欄を開いている。
今朝の通話履歴のアイコンと、「おやすみ」とか「ごはん何食べましたか」とか、スタ爆などが映る。
客観的にみて、自分がかなりめんどくさいヤツになっていることに気づく。
電話もほぼ自分から。スタ爆も自分。メッセージの数も、自分の比率が圧倒的に多い。
どうしたものか。わかっていても、止める手立てはない。
抑制も何もない。
最大の我慢で「時間があるとき電話ください」とメッセージを送るだけ。
どうせすぐには気付かないだろうし、あっちは忙しいだろう。そう思いながら、思い出みたいなのに浸りたくてチャット履歴をスクロールして過去を思い出していく。
丁度、帰省した日の夜辺りの頃まで戻ったとき、画面にメッセージの通知が現れた。「新しいメッセージです」と。
急いで下にスクロール。
『いま出来るよ』
いや、できるんかい
その瞬間、即行で通話ボタンを押した。
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