三十五日目 覚醒

 腐った生ゴミと、澱んだヘドロが混ざりあった悪臭。同じ色をしたドス黒い雲は今にも雨を降らしそうにゴロゴロと鳴いている。

 この大陸屈指の都市と言っても、路地裏の環境はそこらのごみ溜めと変わらない。蛆と蠅と鼠が跋扈する不衛生の楽園だ。

 僕もその中に只たたずんでいる。腰を下ろして室外機に寄りかかって、四肢はただぶら下がっているだけ。

 先の削れたパイプの足は通行人の邪魔になるかもしれないが、まぁどうでもいいか。

 こんなつま先のない足で、僕は一体どこに向かおうとしていたのだろう。帰るべき家はなかった。持っていた名前も奪われていた。

 立場も顔も声も体も全部奪われていた。


 ――奪われていた……?


 それは違うか。

 元から無かった。僕がそう思い込んでいただけの、元々彼の持ち物だったものだ。


『あなたは、人間ではないのかもしれません』


 楔のように僕の心に突き刺さった彼女の言葉が、頭の中で反響する。

 僕は一体何なのだろう。

 機械の肉体を持ち、機械の魂を持ち、彼の記憶を持つ僕は、一体何なのだろうか。

 喧しいニセモノの鼓動が激しさを増す。カメラのピントがずれて、視界がぼやけて不明瞭になる。

 頭を、水滴が叩きだす。


 ずっと、考えていたことがある。

 ゴミ島で目覚めてから、最初に考えたことだ。生きる決意をして、心にメッキを施した後でも、時折思い出しては僕の心を重くした一つの疑問。


 ――どうして僕なんだ?


 何故、どうして。その理由が知りたかった。

 もしこれが罰だとするならば、目覚める以前の生活を考えても、僕は何か罪を犯したような記憶はない。こんな罰を受ける道理なんてないはずだ。もし道理があるのなら、知りたかった。納得は出来ないかもしれないが、少なくとも理解は出来るだろう。理解が出来れば、このわだかまりからは解放されるはずなのだ。

 ぐつぐつとマグマが煮えたぎっている。噴火のその瞬間を、今か今かと待ちわびている。

 砂利をかみつぶしたような感触がして、口から異物を吐き出す。奥歯が砕けたようだった。粉々になって雨に濡れるそれを見て、僕はこの苦しさから逃れる一つの光明を見つけ出す。

 コートの袖を捲って、右手のヒュッテバイヤーを露出させる。その指で人工皮膚の残っている左手、その親指をつまむ。手の甲に向かって、徐々に徐々に力を加えていくと、鈍い金属音と共に根元から折れて動かなくなる。

 何もできなくなればいい。足が動くから、指が動くから、思考がやめられないからこんなに苦しくなる。まだ動けるのに諦めるから苦しいんだ。なら、全部動かなくしてしまえばいい。

 そうすれば、やっと言い訳が出来る。


 ――しょうがない。


 やれることはやった。心は折れていないけど、体が動けないからもう駄目だ。あと少しのところまで来たんだけどな。グロリィにもおじさんにも申し訳ないな。マザーとレジン達にも謝らないと。ああ、本当に残念だ。僕はまだ諦めてなんていないのに、体が動かないばっかりにもう前に進めなくなってしまった。でも、まぁ、


 しょうがない。


 きっとみんな許してくれるだろう。だってここまで頑張ったんだ。あんなちっぽけな体で目覚めて、三つも大陸を渡って、世界中を旅して、修理して戦って殺して脅して奪って隠れて逃げて騙して沈んで落ちて苦しくて。

 もう十分だろう。ここまでやったんだ。もともと、僕の力では到底かなわない望みだったんだ。それがここまで来て、自分の家まで戻ることが出来て。

 ゲームならハイスコアだ。一生自慢できる。


「しょうがない」


 呟きながら、人差し指を折る。さっきよりも少し甲高い音がして、細い指がひしゃげて戻らなくなる。


「しょうがない」


 中指を折る。人口皮膚を突き破って指の骨組みが外気に触れる。落ちてきた水滴が、壊れた関節部の油を流していく。


「しょうがない」


 薬指を折る。目を閉じて力だけを籠める。指を全部折ったら目をつぶそう。何も見えなければ、何も判断しなくていいはずだから。


「しょうがない」


 小指に力をかける。今までの感触からして、ちょうどいい力をかけたつもりだったが折れない。さらに力をかけると、徐々に小指が手前に倒れてくる。アクチュエーターの悲鳴が振動として伝わってくる。

 あと少し、あと少しで。

 しかし、小指は中々折れてくれない。少しだけ瞼を開けてみる。

 僕の小指の状態は分からなかった。ヒュッテバイヤーに付属している指でつまんでいることは分かるが、肝心の小指は隠されていて見ることが出来ない。


 それは人間の手だった。柔らかくて暖かい、ちゃんとした心臓をもった生き物の手。

 それは女らしかった。額に張り付いた前髪のせいで、その眼を見ることは出来ない。雨が降っているというのに傘もささず、ただ僕の小指を握っていた。

 女の口が動いている。何かを叫んでいる。同時に悪ふざけみたいな量の雨が、彼女の声をかき消している。

 口の動きを読み取ってみる。


「ら」

「い」

「あ」

「と」


 何故。

 何で君がここにいる。

 僕を責めるために来たのか。

 悪かったよ、ごめんなさい。

 謝るから、どうか指を折らせてくれないか。

 僕はもう立ち上がってはいけないんだ。


「ライアット!」


 その名前を呼ばないでくれ。それは僕の名前じゃない。彼がネット上で使っていただけの、架空の名前なんだ。

 そんな名前の人間は存在しない。

 彼女は必死にその名前を呼び続ける。その小さい体の一体どこにそんな声量を出すエネルギーがあったのか、力の限り叫び続けている。


「駄目、ライアット! 指、放して!」

「うるさいな」


 自分でも驚くほどに冷たい声が、疑似声帯から吐き出される。


「もう、いいんだよ。何で来たんだ」

「心配だったからに、き、決まってるでしょ!」


 そんな理由で、彼女は海を越えてきたのだろうか。きっとそうだろう。彼女は僕を人間だと思っているはずだから。何故ここにいるかなんてわかりきっているじゃないか。

 僕が騙していたからだ。

 本当に、どこまで人に迷惑をかければ気が済むのか。


「もういいんだ。グロリィ」

「いいって、なに」

「僕は人間じゃなかったんだ」


 万雷の拍手みたいな雨音を聞きながら、僕は魂の仕組みをグロリィに説明してあげた。どうか分かってくれますように、騙していたなと怒ってくれますようにと。僕だと思っていた誰かは実は生きていて、それが有名人であることも、慎重に、丁寧に説明をしてあげた。

 それでもグロリィは指を離してくれない。


「それでも、ライアットは、ライアット……でしょう?」


 騒音の中、なぜか弱弱しい彼女の声だけがはっきりと聞こえる。


「違う。僕は人間じゃない何かだ。思い込みの激しいデクスと変わらない」


 皮膚のセンサーが軒並み低音を示している中、小指の先だけが仲間外れみたいに温かい。目の前の彼女は、下唇を噛みしめて眉に皺を寄せている。


「……じゃあ、どうして四年前、ラ、ライアットと連絡が取れなくなったの?」


 その質問に、どんな意図があるのかはすぐにわかった。空虚になりかけていた心に、少しだけ苛つきの炎が灯る。

 何も答えない僕を見て、きっと彼女も僕の気持ちを分かってくれたはずだ。それでも、彼女はしゃべるのをやめなかった。


「わ、分からない、んでしょ? なら……」

「うるさい」

「っ……なら、た、確かめないと。何も分からないままじゃ……」

「うるさい」

「ま、まだ、何も、終わってない!」


「うるさいうるさいうるさいうるさい!」


 小指を握られていた手を、力任せに引きはがす。小さい悲鳴を上げてしりもちをつく彼女。

 僕の心をせき止めていた何かが壊れ、苛つきに任せて汚い中身があふれ出てくる。


「お、お前……」


 情けなく、震えた声でまくしたてる。

 癇癪を起こした子供みたいに。


「お前にはないだろ! 自分の命が減っていくのを感じながら朝を待ったことなんて! 起きた瞬間に孤島に置き去りにされていたことなんて! 腹の減らない苦しみも! 眠れない苦しみも! 誰かを脅す悲しさも! 何もしてないのにこんな仕打ちを受ける理不尽も! 自分が信じられなくなる怖さも! 全部全部全部全部全部全部! 一つも分からないくせに! 『諦めるな』なんて!」


 寒くもないくせに体の震えが止まらない。異常に発熱する体からは湯気が上がり始めている。

 彼女は泣いていた。

 雨でぐしゃぐしゃに濡れて、もはやどこからが涙なのか分からないが、肩で息をしながら、それでも目だけは僕を見つめていた。

 一度タガの外れた心は、汚れたものをすべて吐き出そうと無意識に口を動かす。

 言うな、言うんじゃない。戻れなくなる。それを口にすれば本当に終わる。指一本残っていた心の支えも、全て折れてしまう。だから言ってはだめだ。それを口に出せば。


「僕はもう……疲れた」


 瞬間、ガクンと首が折れる。

 魂の疲れは自覚しにくいとマザーが言った。あれは嘘っぱちだと、今ならわかる。

 まるで僕だけ倍の重力でもかかっているんじゃないかと思うほど体が重い。体中に鎖を巻き付けて、地面に固定したように動かない。指一本、視線の一つさえも動かせない。泥の中に沈み込んだような倦怠感が魂を支配している。

 今まで僕の体を無理に動かしていた使命感。興奮剤のようなそれは、今この瞬間にその効力を無くしたのだと悟った。


「う、ら、ライアット……」


 みっともなく鼻を垂らして、それでも僕を諦めようとしない彼女は一体何なのだろう。ここまで拒絶されれば、普通は愛想を尽かせてもよさそうなものだ。


「わ、私……ひとりっこ……」


 きっと、口が動いていれば「は?」と返したことだろう。


「お、お母さん、すぐに死んじゃって、お、お父さんと、二人でぇ……お店、やってて……あの町、よそに行けないお客さんとかも、居て、そ……その人たちが困るからって、お店、う、移せなくて……」


 荒い呼吸を挟みながら彼女の独白は続く。終着点はまだ見えない。


「わ、私、嫌だった……も、もっと、都会にいき、行きたかった。でも……お、お父さん一人にするのも、可哀想で、ずっと、ずっと、あ、あの町から出てなかった。お、同い年の子もいなかったから、ライアットだけが、私の友達だったの……だから、私は」


 本当に、何を言っているのか分からない。


「私に、とっての、ほ、本物は……ライアットなの……あんな、あんなテレビで見るような人じゃなくて……だ、だから、ライアットはライアットでぇ……」


 彼女自身、何を話しているのか理解しているのだろうか。混乱して自分の気持ちと僕の気持ちをごっちゃにしているのではないだろうか。

 彼女は散らかりきった文脈をかき集めるようにして言葉を紡ぐ。


「……こ、壊れてる、マイコンとかでも、中、見たら、配線取り替えるだけで、動くように、なったりするから……だから、駄目。中を見ないと、あ、諦めちゃダメ」


「だ、だってライアットは、私とおんなじ、ジ、ジャンカー、だから」


「だから……」と漏らす彼女の言葉は続かない。雨に濡れたジャケットに押しつぶされるように地面に突っ伏してしまう。


 謝罪の言葉はいくらでもわいてくるのに、口が動いてくれない。慰めようと手を差し伸べようとしても、腕が動いてくれない。

 ザァザァと雨は激しさを増し続けている。


 僕は、どうしてこんなに頑張っていたんだっけ。

 確か、そう。家に帰りたかったんだ。でも、実際には帰る家は無くて、だから目的が無くなったんだ。そして僕だと思っていた人物は、実はこの四年間を普通に生きていて、おまけになんだかすごい賞まで取っていて、僕の居場所がなくなったと思ったんだ。

 居場所がなければ、生きていけないのだろうか。


『居場所がなければ、作ればいいんですから』


 認めてもらえなければ、生きていけないのだろうか。


『私たちは皆、誰かに認められたから生まれてきたんです。あとは自分で自分をどう認めていくかだけなんです』


 目的がなければ、生きていけないのだろうか。


『最初は誰も目的なんて持っていません。皆、勝手に決めて、勝手に達成しているだけですよ』


 自分で決める。勝手に決める。何をするべきかとかではなくて、を。

 僕は一体何がしたいんだ?

 心の中の僕が問いかけてくる。


 僕は……理由が知りたい。


 結末なんてどうでもいい! 納得できなくてもいい! 誰が、何故、どうやって僕をこんな風にしたのかが知りたいんだ!

 喉は枯れたように働かない。それでも力を込めて、彼女の名前を呼ぼうとする。鉛の塊みたいな右腕に力を込める。

 小指一本分、汚れた地面に擦りながら腕を動かせた。

 ゆっくりとした速度で右腕を持ち上げる。少しでも気を抜いてしまえば確実にへたり落ちるだろう。腕に落ちる雨の重さが辛くて仕方ない。


「もしも……」


 虫の羽音よりも小さい声が、やっとの事で出せた。

 聞こえたはずはないのに、彼女は顔を上げて僕の顔を見つめている。


「もし、もしも、中を見て、取り返しのつかないほどに、それが壊れていたとして……絶対に、元通りにならないとして……そうなったとき、一緒に直すのを、手伝って……」


 最後まで言うことは出来なかったし、差し伸ばした手は握り返してくれなかった。

 ただ、背中に回された腕の温かさが、頬にくっついた彼女の体温が、首筋を伝って流れる熱い涙が、何よりも雄弁に、彼女の気持ちを僕に伝えてくれた。


「あ、あ、あ、ああああ、あ――」


 ありがとう、と伝えたい。いや、それだけでは足らない。この世すべての感謝の言葉を使ったって、到底この気持ちを表せやしない。

 今の僕に出来る最大限は、まだ動かせる右腕で彼女を抱き返すことだけだった。


「うううぅぅぅぅぅ……」


 グロリィはもう涙を隠すことすらしない。唸り声をあげて、僕の体をきつく抱きしめている。


「あああ、あ、あ――」


 ただ嗚咽を漏らすことしかできない僕の額に、大粒の雨が落ちる。それは僕の目尻を通って、頬を通り、あごに集まって落ちた。


 その雨は、しばらく止まなかった。


***


「も、もういいよぉ……ライアット……」

「いや、駄目だ。いくら参ってたからって、あんな悪態をついていい訳がない」


 雨が上がって、ようやく僕の体に力が戻ってきた。

 最初にやることは、グロリィへの謝罪だった。とても酷い言い方をしたし、せっかく僕を心配してきてくれたのに、あんまりな態度をとってしまったからだ。

 腰を直角に曲げて頭を下げる。謝意を伝えるために、今はこんなことしかできないが、いつか別の形で謝るつもりだ。


「えっと……あ、じゃあ、ら、ライアットはどうしてここに来たの?」


 あまりに僕が頭を上げないからか、グロリィはそのまま話し始めた。


「ああ、母方の親戚を当たってみようかと思って、駅に……ってあれ、そういえば何でグロリィはここがわかったの?」


 今しがたの質問から考えれば、グロリィは僕がどこにいるのか知らずに、ここに来たことになる。家の住所は教えていたが、この都市とはだいぶ離れているし、その上こんな狭い路地裏だ。偶然とはとても思えない。


「あ、案内……してもらったの」

「え?」


 言うまでもない事だが、案内というのは目的地が分かっていないと出来ない。つまり、僕がどこにいるのかを詳細に知っている誰かがいたということになるが、ライレアに入ってからマトモに人と関わりあっていないため、心当たりがまるでない。


「一体誰が……?」

「あ、よ、呼んでくるね」


 まだ居たの!?

 あの雨のなかずっと道端で待っていたということだろうか。大した根気だ。一体どんな人物なのだろうか。

 路地裏から少し顔を出して、グロリィが手招きをしている。

 やがて現れたのは、背の高い大人の女性。長い茶髪を後ろで一つに結んで束ね、吊り上がった目からは生来の気の強さが感じられる。ライダージャケットの上にレインコートを着た彼女は、バイクを押しながら路地裏へと入って来た。


「初めまして、ライアット。私はサフィエ。リィリスの護衛と監視を務めています」


 聞き覚えのない名前に首をかしげながら、彼女が差し出した左手を握り返す。


「えっ……と、リィリスっていうのは……」

「そこにいる彼女の事ですよ」

「……なるほど」


 後ろにいるグロリィの方を向くと、照れくさそうに口角を上げていた。女の子らしい可愛い名前だとは思うが……


「護衛と監視っていうのは?」

「言葉の通りです。私は彼女を守り、同時に、彼女が成すことを見届ける義務があります」

「……それは、どうして?」

「それは私ではなく、彼女に聞くべきかと」


 彼女から受けたパスに、グロリィは戸惑いながらも答えた。


「え、ええと……護衛っていうの、は……その、ね、念のためってことで……監視っていうのは、わ、私じゃなくて……ら、ライアットのことを……」

「……ん? 僕関係あるの?」

「えっと……あ、あの、ライアットを追いかけてる……そ、組織あった、でしょ? あ、あの人達とお話しして……もしライアットが、本当に、デクスじゃないなら、これ以上狙わないって……と、取引したの……」


 開いた口が塞がらない、とはこういうことを言うのだろう。

 僕を助けるためだけに、犯罪組織と交渉? しかも彼女の言い分なら、相手に自分の意見を飲ませたことになる。一体どんな技を使ったのかは知らないが、容易なことではないだろう。


「じゃあサフィエ……さんは、もし僕が人間じゃなかった場合……」

「ええ。あなたを回収します」


 安全が確保される代わりに、退路は完全に断たれた。

 これからの僕は二つに一つだ。人間だということを証明して組織との関わりを絶つか、証明できずに彼らに処分されるか。


「わかりました」


 返事をして、改めて覚悟を決める。

 全ての疑問を解き明かして、僕が僕であるということを証明する。さもなければ生き残れないと。


「あ、そういえば、どうして僕の居場所が?」


 彼女がついてきている理由は分かったが、何故僕の居場所を詳しく知っていたのかは、いまもって謎だ。

 聞かれた彼女はきょとんとした顔で答えた。


「いえ? 私は貴方がどこにいるのかなんて分かりませんから。案内したのは……」


 そうやって人差し指をに向ける。

 刹那の思考の後、乾いた笑いが口から漏れた。


「は、ハハハ、は」


 確かに可能性はあった。だが、考えもしなかった。まさかそんな、そんな奇跡的な事が起こるだなんて。


「えっと、初めまして……かな」


 僕の挨拶に、彼はブンブンと頭を左右に振る。その頭のよさに感心しながら、僕はあいさつを改めた。


「そうだね、ごめん……久しぶり、テレメラ」


 ヴルルルゥ


 ハンドルを握られたテレメラは、歓喜の声なのか、ライトを点滅させながら小さく唸り声を上げた。

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