皇城にて7(一人称視点)

※今回もハルト君の一人称です。



 その夜、私はグレイス様の部屋の前に立っていた。


 覚悟を決め、扉をノックする。


「どなた?」

「私です、姫様。ハルトムート・ゼクスです」

「入ってらっしゃい」


 姫様からの許可を聞き届けると、いつものように扉を開ける。

 しかし、いつもながら、妙に緊張する。


 何を隠そう、姫様は私の素肌に触れていないと攻撃性を発揮されるのだ。


 謎でしかない特性をお持ちである。

 ただ、この特性を裏切られた事は、無い。


 


「ねえ」

「はい!」


 私は姫様の言葉に脊髄反射で返答し、すぐに扉を開ける。


 この後おっしゃったであろう言葉は、「いつまで待たせるつもりなの?」だ。

 危ない危ない。


 あんな事を言わせようものなら、尻と胸板を叩かれるだろう。姫様は女ではあるが、意外と一撃が重く……つまり痛いのだ。


「遅いわね。

 まあいいわ、上半身を脱ぎなさい」


 いつもの儀式だ。

 私は言われた通り、上半身の服を全て脱ぎ去った。


 そしてゆっくりと姫様へと歩み寄り、抱きしめる。


「ふふっ……。

 待っておりましたわ、騎士様」


 途端に、姫様の攻撃性が引っ込む。


 美しく、優しく、柔らかな体で包み込んでくれただけで、私は安堵を覚えたのであった。

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