1-7 【杉山千歳の目的】
ナナ…?
どういうことだ?ナナが犯人?
だが、先日の右腕が落ちていた事件は、
つまり…
「つまり、ナナ。お前は2週間前にここで人を食らったということだ。アナコンダも都市伝説じゃない。お前だろ」
恭が答えにたどり着く前に杉山千歳が話し出す。
食べる?人を?恭は余計に混乱する。冗談だろう。あり得ない。ナナの方をみるが、ナナは黙ったままだ。
「お前の狙いは柏木恭。2週間前の出来事は柏木恭を食べるための下準備だった。それがみつかってしまったんだろう?
バケモノが。」
「うるさいっ‼︎‼︎」
バケモノ。杉山千歳がそう言った瞬間、叫んだナナからヒュンッと何か鞭のようなものが杉山千歳に放たれた。杉山千歳は身体を斜めに傾け、攻撃を避ける。
それはナナの舌だということは容易に見当がついた。まるで蛇のような舌だった。
「なんなんだこれ…
」
驚いた柏木恭は尻餅をつく。腰を抜かしてしまった。食べる?オレを?あり得ない…コイツはなんなんだ‼︎
街灯に照らされたその姿に、もうナナの影はなかった。髪の毛は逆立ち、黒い煙のようなものが、体からじわじわ排出されている。
ゴリッバキッ
黒い煙と、関節が外れる嫌な音と共に体が変形していく。
体は蛇だった。
顔は醜く歪み、蛇が獲物を狙う目で、ナナだったものは杉山千歳を睨んでいた。
しかし、杉山千歳はひるむことなく飄々としている。
次から次に繰り出される化け物の攻撃を華麗に避ける。
ところで、杉山千歳は何者なのだ…。
この素早い動きさえ人知を超えている。まるでアクション映画のスタントマンのようだ。
「よっと!」
「!!」
杉山千歳はバケモノの上を飛び越えたかと思うと、扉とは反対側のブロック塀に垂直に着地した。ブロック塀の側面に立っているのだ。重力なんて関係ない。まるで、杉山千歳だけ重力が地球と垂直にかかってるようだった。
あり得ない。どういうことだ。なんなんだこいつら。
驚いている恭に杉山千歳が気づく。
「俺もね、元々は一緒なのバケモノと。いや、こんな身なりにはならないけどね、ナナは蛇の能力使いのようだから」
蛇…だから都市伝説もアナコンダなのか…恭は妙に納得した。
「…俺の目的は、人間の
「人間の世界…?」
「そう、俺らの世界は人間の世界の裏側にある。
さて、問題です。どうして13番街には人が寄り付かないのでしょうか」
え…??どうしてか?急に話を振られ、恭は考える。幼い頃から、この13番街にはいい噂が無かった。不法入国者が溢れているとか、ヤクザの巣窟、麻薬の密売、臓器を取られるとか。ここに来るのは自己責任で、大人も滅多に近寄らない。昔からこの街に住んでいる恭にとって、ここに近づかないことは当たり前だった。
そのことを告げると、杉山千歳は「あー、そっか、そんな感じなんだね〜」と、納得したように頷いた。
「全部不正解だよ。正解はね、」
トンッと不意に杉山千歳が電灯に照らされたブロック塀に触れる。真っ暗な世界に不自然に電灯がある。今まで気にしなかったが、なぜこの行き止まりの場所に電灯があるのか。
次の瞬間
ブロック塀が動き出し、中から扉が現れた。某ファンタジー映画のようなその扉。
「俺らの世界である異能力者の世界につながる扉があるからで〜す」
ヘラヘラとした声で語る杉山千歳。普通の人なら驚くだろう。しかし、今まで散々、非日常を見せられている恭は驚かなかった。
「…俺らは普通の人とはちょっと違う。
一人一人が異能力っていうトクベツな力を持っているんだ。」
「異能力…?超能力みたいな感じ…?」
今日が尋ねる。
「いや、もう少し危険かな?だから、いままでこの扉の向こうの世界で暮らしてたんだけど、最近異能力者を狙う異能力者が増えていてね。なんでも異能力者を食べると、異能力者の力をもらえるっていう噂だよ。」
千歳はピョンっという効果音がつきそうなほど、軽やかにジャンプし、恭の横に着地した。そして淡々と話し始めた。
この扉の向こうは異能力者だらけの世界だということ。異能力者が
「低級の異能力者は公的組織よりも圧倒的に弱く、すぐ捕まってしまう。だから法律の無くなる
扉を触りながら、杉山千歳はこう締めた。
ビュンッ
「!」
「おっと、時間がないね」
化け物の鞭が恭の頬をかすめる。どうやら、敵は杉山千歳だけではなさそうだ。どうやらナナにとって柏木恭はエサのようだが。
「元々ナナはブラックリストだった。だけど、人間の世界に逃げ出したんだ。だからナナを調べるためにナナの隣人になったんだけど、ナナは君を狙っていた。だから、君に関しても少し調べさせてもらったんだ。ごめんね」
千歳はそう微笑むと、まっすぐな瞳でナナの方を向いた。
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