長い一日の終わり

「良い風。」


駅の外に出ると、心地のいい夏風が吹いていた。

さっきもらったスマホを見ると、時間は21時00分だった。


私は駅員さんの言う通り、自分の家に帰ることにした。

一瞬体が違う方へと行こうとしたが、意志を強く持って家へと足を進めた。

その足は段々と早くなり、最後には全力で走っていた。


「はあ、はあ・・・。

 帰ってきた・・・。」


玄関の前にゆっくり近づき、出来るだけ音をたてないようにドアノブに手をかけた。

ゆっくり捻ると、案の定玄関のドアが開いてた。

出来る限り音を立てずに進むと、家族全員と僕が死んでいた。

一瞬吐きそうになったが、直ぐに冷静になれた。

辺りを見ると赤色で大きく『俺を探せばこいつらと同じようになるぞ』と書いてあった。


私はその言葉に圧倒されたが、この光景全てを脳裏に焼き付けた。

それであることを思った。


『絶対見つけてやる』と。


私はとりあえず警察を呼ぶことにした。

とてつもない怒りで酷く冷静だったか、電話越しにも警察官に不審がられてしまう為、パニック状態を演技しながら電話した。


10分くらいで警察官の人が家に入ってきた。

そして誰しもがこの光景を見た瞬間足を止めていた。


私は女性警察官に連れられて、パトカーで島田警察署へ向かった。

道中では女性警察官から肩を摩られながら、「大丈夫、大丈夫」と慰められた。

私はそれに耐えきれず本気で泣いてしまった。


警察署に着くと、クーラーの付いた部屋に案内された。


「何か食べる?

それとも何か飲む?」


女性警察官が私に優しい声で聞いてきたが、私は今何も口に入れたくなかった為、首を横に振った。


「部屋に無い物で何か欲しくなったらいつでも私に言ってね。

隣の部屋にいるから。

今日はここに泊まっていいからね。」


女性警察官は笑顔で手を振ると、部屋を出て行った。


私は奥にあった布団を引いて、いつでも寝れるようにした。

そして布団の横に用意してあった衣類を持ち、部屋のお風呂を借りた。

最初は自分の今の体に興奮したが、直ぐにその気持ちは申し訳無い気持ちに変わった。 何もかもが気持ち悪かった為、早くリフレッシュしたかった。

最初は体が違ったこともあって、洗い方が全く分からなかったが、この人自身の体が覚えていた為、スムーズに体全身を洗うことが出来た。

湯船に浸かる習慣は無かったが、今の気分は入りたかった。

家のお風呂と違い、足が伸ばせて体の芯からリフレッシュ出来た。

10分程湯船に浸かったら、少し感情が落ち着いた。


お風呂から出た後もそのリラックス状態は続き、いい具合に眠くなってきた。

電気を消し、布団に入ってスマホを確認した。

パスワードが掛かっていたが、指に身を任せたら自然とロックを解除できた。

最初の画面を開くと、僕の姿がトップ画面になっていた。

私はとてもびっくりしたが、次の瞬間和んだ。

画面の下の方を見ると、メールが30件くらいきていた。


私は色々この人の事をスマホから調べようと思ったが、非常な睡眠欲に囚われて寝落ちした。

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