7芋 〇〇選びは戦争

「じゃあ、俺はこれだな」

「私はこれにするね!」

 じゃんけんに勝利した俺と夏は4つの中から自分の好みのものを選んだ。

「残りは2つ。この禍々しいものを私か、雪乃ちゃんが手にしなければならないという状況……」

「絶望的状況……ああ、なんて卑劣」

 じゃんけんに負け、残されたふたつを取り合う凛と雪乃の表情は真剣。

「では、いきますよ逝きますよ?」

 雪乃が頷いたのを見て、凛が腕を動かす。

「じゃんけん……ぽん!」

 その直後、歓喜の声と絶望の声が同時に聞こえた。



「なぜ、何故このようなことに……」

「お前がじゃんけんに負けたからだ」

「それはそうですけど……。ただ日本で最も有名で簡単で、総プレイ人数が最も多い国民的遊戯であるじゃんけんに負けたくらいで、何故このような仕打ちを……」

「元はと言えばお前が悪いんだろ?」

 やたらじゃんけんという遊びを高評価する実妹の頭を軽く撫でてやる。


 あれは今から1時間半前。

「兄さん、買い物に付き合ってくれてありがとうございます!」

「いや、それは別に構わない。妹との時間は大切にしたいからな」

「では、他になにか不満が?」

 という言葉に引っかかったのか、凛がそれとなく追求してくる。

「不満というか……」

「なんですか?はっきり言ってもらわないと直しようがないです!」

 俺は、ほっぺをふくらませて怒るかわいい実妹の言う通り、はっきり言ってやることにした。

「雪乃と夏の買い物は片手で収まるくらいなのに、なんでお前のはこんなにあるんだ?!」

 そう、今俺は手押しのカートを押しながら歩いている、それも2台。

 ただのデパートでここまでの買い物をする高校生金銭バカはきっと、この世界にこいつしか居ないだろう。

「なんで1度の買い物でここまで買う必要が……」

「それはもちろん、兄さんに持って頂くためです。殿方の持つ買い物の荷物は、重ければ重いほどいいと聞いたので……」

「どこ情報だよ」

「知らないんですか?『fiξフィクシー』というティーン向け雑誌です」

「その雑誌、ろくな事書いてないな……」

 前にもそいつのせいで夏に殺されかけたし。

「お待たせ、陽」

「待たせちゃってごめんね!」

 そこにそれぞれ1つずつ、紙袋を持った雪乃と夏が走ってきた。

「ああ、意外と時間かかったな」

 俺がそう言うと、3人は揃って俺に冷えた目を向けてくる。

「兄さん、そこは『待ってないよ』ですよ?」

「陽、その返しはありえない」

「女の子は文句言わずに待ってくれる男の人に惚れるんだよ?」

 それぞれに不満があるようだ。

 だが、俺も3人に対して、冷たい口調で言い放った。

「いや、妹だからいいだろ」

 その後、散々文句を言われたことは言うまでもない。


「あ、兄さん、ちょっと待ってください」

 意外にも陸上部に入っている夏に片方のカートを任せた俺は、凛に呼ばれて立ち止まる。

 ちなみに、雪乃は俺の押すカートに乗って楽している。

 良い子は真似しちゃダメだぞ。

 雪乃はいろんな意味で悪い子だから放置だ。

「兄さん、ここで買っていきましょうよ」

 凛がそう言って指さした店はケーキ屋だった。

 いかにも女子高生が映え映え言ってそうな店だ。

「おお、いいな。夏と雪乃もいるか?」

「うん!」

「わたしもいる」

 全員がいると答えたのを確認して、その店に入る。

「私はこのイチゴの乗ってるのがいいですね」

「わたしはこのモンブランがいい!」

「私はこのチョコの……、チョコは私のMP補給源」

「じゃあ俺はこれにするかな」

「あ、待ってください!」

 注文しようとした俺の腕を凛が引っ張る。

「兄さん、こうしましょう。みんなの好きなケーキを3つ買います。嫌いなのをひとつ買って、合計で4つ。じゃんけんかなにかして、負けた人にはその嫌いなのを食べてもらいましょう」

 俺は思った。

 この実妹はバカなのかと。

 目の前に安全に進める道があるのに、わざわざ茨道を進むなんて。

「なんでわざわざそんなことをするんだ?」

 凛はウィンクしてこたえた。

「ギャンブルですよ、ギャンブル。ギャンブルは楽しいですからね〜♪」

 どうやら彼女は、悪い方向に育てられたのかもしれない。

 美少女女子高生の口からギャンブルという言葉は聞きたくなかったな。

「そんなの2人がいいって言うわけ……」

「いいよ〜♪面白そうだもん」

「私は別に構わない」

「2人とも了承しちゃったよ……」

「じゃあ、私の案で買いましょう!」



 というわけで今に至る。

 結果的に言い出しっぺの凛が罰ゲームを(本当の意味で)らうことになった。

「こんなことするなんて、兄さんは最低です……」

「言っちゃえば自爆だろ?」

「それは言わない約束ですよぉ!」

 またもほっぺをふくらませて怒る凛。

 彼女の前に置かれたケーキ、それはブルーベリーとベリーのたっぷり乗ったケーキだ。

 実のところ、妹達は3人揃ってベリーが大嫌いだ。

 俺は別に好きでも嫌いでもないから、負けても勝ってもどっちでも良かったのだが……。

 目に涙を溜めて睨みつけてくる凛がちょっと可愛かったから、2人にバレないようにこっそりとケーキを入れ替えてやった。

 こういう甘いところが、きっと妹たちには悪影響なのだろう。

 だが、仕方ないと思わないか?

 妹と言っても女子高生。

 女子高生といっても美少女だ。

 これは男のさがとして認めてもらわざるを得ない。

 そんな自己完結をして目の前のケーキを口に運ぶ。

「うん、美味い」


 食べ終わった妹たちと自分の使った食器をキッチンに運んで洗い、手を拭いていると、雪乃がやってきた。

 手に何か持っているようだ。

 トランプのようだが……。

「陽、兄か妹かゲームしよ」

「そのタイトルは予想外だった」

 なんだ、兄か妹かゲームって。

 ちょっとどんなゲームか気になるじゃねぇか。

「やることも無いし、混ぜてもらおうかな」

 そう答えると、雪乃は少し嬉しそうな顔をして、凛たちのいるところへ戻って行った。

 俺もそれに続いてその輪に加わる。

「で、どんなゲームなんだ?」

「説明しよう」

 すると、凛が某有名モンスターアニメの博士のように説明を始めた。

「このゲームは、親札全240枚のキャラカードからランダムに20枚ずつ選び、その効果で戦う対戦型ゲームじゃ!」

 いつもと雰囲気の違う実妹に対して、俺は心配になったので、兄として言葉をかけてやった。

「どうした凛、熱でもあるのか?」

「ちょ、ちょっと雰囲気に浸っていただけです!いいから始めましょうよ!」

 ほんのり顔を赤く染めた凛は隠すようにすとんと座り、親札をいじり始めた。

「最大プレイ人数は4人ですから、兄さんが入って丁度ですね」

「それは都合がいいな」

「世界は案外、都合よくできているもの」

 義妹様がよくわからないことを言っているのはスルーするとして、いまいちルールがよく分かっていない。

 4人はそれぞれ適当に配られた20枚の山札を手元に置いて、向き合う。

「では、先程痛い目を見た私から始めさせてもらいますね」

 そう言って凛はカードをドローした。

 実際罰ゲームを受けたのは俺だけどな。

 そこは実妹の面目のために黙っておいてやろう。

「兄さんのために流れを説明しておきますね」

 凛はそう言うと、2枚のカードを俺に向けて差し出した。

「このゲームにおけるキャラカードには2種類あります。ひとつがこちらのキャラカード、もうひとつがキャラ効果カードです」

 緑色の方がキャラカード、紫色の方がキャラ効果カードらしい。

 ちなみに裏側はどちらも同じ色で、めくってからどちらのカードなのかが分かるようになっている。

「そして……」

 凛の説明が長かったため、要約しておこうと思う。


『山札はそれぞれ20枚。

 ゲーム開始時に全員が3枚の手札を持ち、自分のターン開始時に1枚を自分の山札からドローする。

 キャラカードは攻撃のみを行える。

 キャラ効果カードは、そのカードに書かれた効果を発動できるキャラカード。

 その効果はそれぞれだが、強力なものが使えれば、1ターンで場をひっくり返すことも可能。

 また、キャラカード、キャラ効果カードの両方にHP、攻撃力というのがあり、HPは1~10。攻撃力は0〜10の幅で存在する。

 なお、プレイヤーにもHPがあり、そのプレイヤーの前にモンスターがいない場合のみ、直接攻撃を行える。

 また、モンスターからモンスターへの攻撃の際、双方に攻撃力分のダメージを与え合うが、その際にモンスターHP分を超えた攻撃は、プレイヤーへ対する攻撃になる。

 基本、プレイヤーHPは30とする。

 プレイヤーHPが先にゼロになったプレイヤーは敗北し、トドメをさした敵プレイヤーに残りの山札にあるカード数分のHP回復カードを渡す。

 なお、カードを1枚も出さないというターンはあってはならない。』


「かなり複雑なゲームだが、他のと大差ないか」

「ええ、HPと攻撃力の値が小さく設定されているので、簡単にプレイできます」

「ちなみに3人以上プレイの時は、誰を攻撃してもいいんだよな?」

「ええ、ですが、攻撃するということは、仕返しを食らう可能性が高くなるということ。その辺は気をつけたほうがいいみたいですよ」

「そうか……」

 まあ、考えるより感じろだ。

 プレイしてみたら理解できるかもしれない。

「じゃあ凛から始めようぜ」

「では、ドローして、召喚です」

 凛がプレイしたのは普通のキャラカードだ。

「召喚したそのターンには基本、攻撃できません。『迅速じんそくに働きますぜ、親方!』という効果を持つキャラのみが召喚したターンに攻撃可能ということです」

 そのまま凛のターンは終了。

 時計回りに進んでいくから、次は雪乃だ。

 ドローして、手札を見比べて。

「わたしはこれを召喚する」

 雪乃が出したのもキャラカードだ。

 そのままターン終了。

「じゃあ、次は俺のターンだな」

 ついに回ってきた自分のターン。

 ドローして、手札を見てみると、紫色のカードの効果に違和感を覚える。

「この効果の横に書いてある兄と妹の文字はなんだ?」

「兄さん、それは兄妹効果です。このゲームは基本、兄と妹でプレイすること前提に作られていて、そう出ない場合は初めに兄役、妹役を決めてから始めます。私達は実際に兄と妹なので、そこはスキップですね」

「自分が兄なら、兄の効果を発動できる。妹なら妹の効果を発動できる。そういうこと」

「つまり、お兄は兄の効果を使えるってこと!」

「なるほど……」

 ただ、その効果が問題なのだ。

『妹、敵の場にモンスターがいるならこのモンスターの攻撃力を+2


 兄、妹のほっぺにキスをしたら攻撃力+2』


「え、兄の代償が大き過ぎないか?」

「そんなことはありません!妹のほっぺにキスするなんて、兄なら当たり前のことです」

 まあ、確かに幼い頃なら有り得るだろう。

 でも、自分たちはもう立派な高校生だ。

 さすがに恥ずかしい。

「で、陽。誰にキスするの?」

「えっ?」

「全員でもいいですけど、この場合はおそらく、妹であれば誰でもいいということになりますね。なので、誰のほっぺがいいか、選んでください!」

「まじかよ……」

 うっかり召喚してしまったばっかりに、妹にキスをしなければならなくなってしまった。

「誰ですか?」

「誰にするの」

「私だよね!」

「いえ、私ですよね!」

「きっと私」

 目の前で妹3人が俺のキス(ほっぺ)を奪い合っている様は、なんとも言えない光景だ。

「じゃ、じゃあ近いし、雪乃で……」(ちゅっ)

 他の2人よりも距離的に近かった雪乃を選んでほっぺにキスをした。

 その瞬間、ほかの2人が倒れ込んだ。

「だ、大丈夫か!?」

「兄さんが……兄さんが……雪乃ちゃんに取られてしまいました……」しくしく

「お兄の浮気者……私以外の女の子にキスを……」しくしく

「陽が私を選ぶことは前世の果てから決まっていたこと。つまり、私の勝利は約束されていたも同然」ドヤッ

「こいつら、大丈夫かよ……」

 兄からのキスが貰えなかったくらいで世界が終わったみたいな顔しやがって。

 俺は凛と夏を慰めて、席に座らせる。

 ついでに調子に乗っている雪乃の頭にチョップを入れる。

「あふんっ♡」


 妹達が落ち着きを取り戻したところでゲーム再開。

 ちなみに、俺の前に出されたカードはちゃんと+2の効果がついている。

 ついでに俺の唇にも、雪乃のほっぺの感触が残っている。

 考えたら顔が熱くなりそうだから、なるべく思い出さないようにしよう。

「じゃあ私はこれ!」

 夏が召喚したカードは『止められた息の根』

 体力が1のモンスター効果カード。

 おまけに攻撃力もゼロで、全く使えないように見えるが、効果を見てみるとあらビックリ。

『あなたが妹の場合、召喚時、このカードを含んだ場に出ている全てのモンスターを消滅させる。』

 つまり、俺がキスまでして+2したモンスターも共に消滅。

 俺の息の根まで止められそうだ。

「夏、お前、意外と性格が……」

「お兄、なにかな?」

「……なんでもございません」

 夏の笑顔がなんだか怖い。

 従妹の知ってはいけない一面を知ったのかもしれない。

「兄さん、知らないんですか?夏ちゃんはこの『兄か妹かゲーム』の全国大会で何度も1位争いを繰り広げているうちの1人なんですよ?」

「初耳なのですが!?」

 夏の方を見てみると、少しドヤ顔でこっちを見ている。

 つまり、相手はプロ同然。

 手加減したら、即狩られる。

「なら、こっちも本気で行かないとな」

「お兄、かかってきなよ」

 挑発的に人差し指をクイックイッとやる夏。

 このゲーム、なかなか燃えさせてくれる。

「では私のターンです!召喚!」

『自分が妹の場合、正面が兄なら、このカードの攻撃力+2。同時に3ダメージを両サイドのプレイヤーに与える。』

「私の命が削られて……」

「3ダメならまだ大丈夫だね」

「俺は無事か」


「私のターン。ドロー、そして召喚」

『あなたが妹、もしくは兄の横に座っているなら、このモンスターの攻撃力+3。もしもあなたが妹で、兄の横に座っているなら、代わりに+4。』

「つよい…、これなら勝てる」

「雪乃ちゃん、それはどうかな?」

「夏ちゃん、まさか……」

「えいっ!召喚!」

『このモンスターは召喚の代わりに魔法としていつでも使用できる。直前に強化されたカードを元に戻す。』

「夏ちゃん、卑怯……」

「カードゲームは戦略だよっ!」

 なんだか、とても白熱しているっぽい。


 なぜか俺の手札にはモンスター効果カードしかない。おまけに、兄の項目が何故か全部妹に対してのアクションなのだ。

「じゃあ俺はこれを……」

『兄の場合、正面のプレイヤーが妹なら、そのプレイヤーに耳元で囁かれる。するとこのモンスターの攻撃力が+4。』

「兄さんはそういうプレイがお好みですか?」

「ちげぇよ!カードの効果だから仕方ないだろ!」

「わかりましたよ、そういうことにしておきましょう。では……」

 右耳に凛の息がかかる。

「兄さん、好きです……ふふっ」

 そして凛は何も無かったかのように元の位置に戻った。

「おい、それは卑怯だぞ……」

「兄さん、顔が赤いですよ?どうしたんですか〜?」

「な、なんでもない……」

 俺は顔を隠すように下を向いた。


「じゃあこれ!」

『あなたのモンスターを一体生贄にする代わりに、あなたは兄プレイヤーに抱きつく権利を得る。』

「ほら、お兄……ぎゅぅぅっ!」

「うわっ!?」

 目の前が真っ暗になると同時に、柔らかくてあたたかい感触が……。

「って、なんでだよ!?」

 兄とのハグのために生贄にされたモンスターの気持ちを考えてやれ!

 そう心の中で呟きながら、夏を押し返す。

「お兄とぎゅってしたいんだもん!」

 そう言ってまた抱きつこうとしてくる夏。

「後でしてやるから、今はやめてくれ!」

 恥ずかしいとかじゃなくてさ、実妹と義妹の目が怖い!

「夏ちゃんばかり……ずるいです……」

「陽、えこひいき……」

「カードの効果だから仕方ないよな!な?」

 兄側としてはもう必死である。


 それから何周かして、凛が負けた。

 それからまた何周かして、雪乃が負けた。

 早めに凛を倒した夏は、まだHP回復カードが8枚ある。

 3枚しか山札が残っていなかった雪乃を倒した俺にはそのまま、3枚しか回復カードがない。

 その回復カードを駆使して、張り合ってみたものの、最後は呆気なくやられてしまった。

「ふふふっ、やっぱり私に敵う者はいなかったようだね!」

 我が従妹様が満足そうで何よりだ。

 ただ、俺は精神的に疲れている。

 囁くや抱きしめるなんてものは序の口だった。

 キスや1分間耐久くすぐりなんてものは兄としては地獄。

 いかに意識せずに終わらせれるかが問題だった。

 そして極めつけは『正面のプレイヤーになんでもいいから命令してもらう。その命令をこなせなら攻撃力+4。』というものだった。

 正面のプレイヤーが凛だったこともあり、当たり前のようにキスをせがんできた。

 もちろん止めさせたが。


 雪乃と夏は宿題をすると言ってそれぞれ自分の部屋に帰って行った。

 まだ部屋に残っている凛に、ずっと残っている疑問をぶつけてみる。

「それにしても、妹には厳しい条件がないのに、このゲーム、兄に対して厳し過ぎないか?」

「兄さん、普通の兄ならば、妹とイチャイチャできるのは嬉しいことなのです。兄さんはどこかズレてるんですね」

「お前に言われたくないわ」

 凛の額に軽くデコピンをくらわせてやる。

「このゲームは、兄と妹が仲良くなるためのゲームなんです。兄さんは楽しかったですか?」

 俺はカードを片付けながら、適当なふりをして答える。

「まあ、楽しかったな」

 ドキドキもしたし、精神的にも疲れた。

 だが、本当のところ、妹たちと楽しく遊べて、とても喜んでいる自分がいた。

「実はこのカードゲーム、私が提案して父に作ってもらったものなんですよね。それが案外好評で今じゃ全国で売られてますよ」

 凛の今の父親は超大企業の社長だ。

 おまけに凛を溺愛しているらしい。

 そんな父親なら、凛の提案したものなら、独裁的に売り出しそうだもんな。

「今回はキスまでに留めましたが、『兄か妹か2』では性交渉も入れようかと……」

「それはやめとけっ!」(ズクシッ)

「あふんっ♡」

 兄と妹でそれって、やばいやつだろ。

 凛は限度ってものを知らないからな。

 まあ、そういう所もいいところだと思う。

 きっと、怖がって何にもチャレンジできない人もいる訳だしな。

 その点では、やりたいことに真っ直ぐに突っ走れる凛みたいな存在も貴重なのかもしれない。

「どうしたんですか?私のことをそんなに見つめて……恥ずかしいですよ」

「実の兄に対して顔を赤らめるなよ……」

「兄さん、大好きですっ!私の愛を受け止めてください!」

 そう言って凛は俺に向かって飛びついてくる。

「おいおい……仕方ないな……」

 そんな実妹の頭を、優しく撫でてやる俺であった。


 我が家は今日も変わらず平和です。

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