第5話

家に帰ると電気がついている

誰かが待っていると思うと

いつもの帰り道が少しだけ長く感じた

「ただいまー」


「おかえりなさい

見て!」

ナナコは見たことない服を着ている

「どうしたのそれ?まさか盗んできた?」


「そんなことするわけないじゃない!

想像したの

テレビ観ててね

あ、この服いいなぁ着てみたいなぁって

そしたら、ほら」

見せびらかすように一周してみせた

「へぇすごい

便利だなぁ」


「この服だと服も見えないんだよ

こっちきて」

鏡の前に連れてかれた

「だから、その、」

なにか言いたそうだ

「へぇなるほど

その?なに?」


「一緒に出掛けられるよね?」


「あぁそうだな」


「やったぁー!」

せっかく付き合ってるんだから外に出掛けて

普通にデートしたいと思うよなぁ

ナナコはお化けでも普通に女の子だ

「それでね買い物に行きたいんだ」


「なにか欲しい物あるの?」


「食材が全然ないから夕飯作れない

ケイタさんにご飯作りたい」


「え?なんで?悪いから適当に買ってきて食べるよ」


「ううん、私がしたいの

ご飯は食べられないけど

私作るなら出来たし、、、

それにね一緒にいる意味が欲しい

待ってるだけはなんか嫌」


「そうかわかった

じゃ


今日から我が家の料理大臣に任命する


今から買いに行くか腹減ったし」


「うん!

了解大統領!

それとね迷惑じゃなければ

洗濯も掃除もするよ」


「え、出来るの?」


「うん、なんか試したら出来た」

よく見れば部屋が綺麗になってる気がする

昨日までの溜まった洗濯物も綺麗に畳んで置いてあった

「朝ごはんといい完璧だな」


「えっへん!すげぇだろ」

ナナコは普通にいいお嫁さんになれると思った

頭を撫でてやったら喜んだ


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

近くのスーパーまで歩いて5分ぐらい

ケイタさんと手を繋いで向かっている


私はケイタさんに

料理大臣

洗濯大臣

掃除大臣に任命された


私がこの世に存在する意味を与えられたみたいで嬉しかった


「なに買うんだ?」


「なに食べたい?」


「餃子、ハンバーグ、カレー、コロッケ、唐揚げ、ステーキ

えっとそれと、、、」


「ストップストップ!

覚えられんわ」


「ふ、まず作れるのか?」


「うん余裕で作れる」


「マジか凄いな」


「とにかく今日と明日なに食べたい?」

一休さんみたいなポーズをとって悩みだした

私がまわりに見えてないの忘れてるな絶対

独り言言って悩みだして変な人だと思われるよ

ケイタさん、、、

「ハンバーグ!


カレー!」


「了解しました!大統領」


「よろしく頼むぞ料理大臣」

まわりの人達がヒソヒソしてる

「ケイタさんヤバイ人だと思われてるよ」


「え?

やば、早く買い物終わらすぞ

なに買うんだ?」


「ハハハハ

こっちだよ」








私は前にもこんなことしてたような気がした

でも

ケイタさんの鼻歌をBGMに家路につく私達にはどうでもいいこと






▽▽▽▽▽▽▽▽

昨日のハンバーグうまかったなぁ

今日はカレーだな

楽しみだなぁ


「なにニコニコしてるのケイタくん」


「別になんでもないよ」


「嘘だよ、絶対なんかあった

最近楽しそうに仕事してる

この前遅刻もしてたし

もしかして恋人でも出来たの?」


「出来ない出来ない

それより自分の心配しろよ

もう何年も彼氏いないんだろ?

行き遅れるぞ」


「あー

人が気に来てること言う

私だって話がない訳じゃないし」


「選り好みしてるんだな

選べる内に選んじゃえよ」

同期のレイコは顔はいいがどこか抜けてる

モテそうなのになかなか彼氏を作らない

この前もちがう部署のやつがフラれたらしい

「自分がいいと思える人じゃないと嫌だもん」


「まぁそりゃそうだな

おい課長がお前のこと睨んでこっち来るぞ

またなんかしたのか?」


「やっば

資料届けるの忘れてた

じゃーね



課長ー!違うんです今から行くとこでしたー!」

フッ

ほんと抜けてんな




▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「ただいま」


「おかえりなさいませご主人さま」

ナナコがメイド服を着て出迎えてくれた

「うわ、どうしたのその格好」

破壊力抜群だ

「今日掃除してたら

こんなのやあんなのや出て来て、、、」

DVDと本が積み上げて置かれていた、、、


哀れみの顔で笑われた

「いや、そのまぁ独り暮らしだし

男だし

そういうのは人それぞれだし」


「ふーん

どんだけテンパってんだよ

で?どう?ご主人さま似合ってますか?」


「完璧ですナナコさん!

たまんねぇなチキショーめ!って感じ」


「バーカ

メイド服ねぇコスプレがいいのかって思ってたらこの服になってたんだから

ほんと迷惑

便利なんだか不便なんだか」


「いや超便利だろ

なるほどそんな活用法があったのか

じゃー明日はそうだな、、、」


「もうやらないから恥ずかしい!」


「そうだプレゼント

はいこれ」


「なに?これ

携帯?」


「そう持ってなかったろ?なんかあったときにさこれで連絡くれよ

電話はわからんけど

ラインは出来るだろ」


「え、ありがとう

いっぱい連絡する」

メイドの笑顔は更に破壊力抜群だった

「いい匂いだな

カレー出来てる?」


「ふふふご主人さま

ご飯にします?

お風呂にします?」


「飯だ!我は飯を食いたいぞ」


「バーカ

出来てるぞ」


「バカって言う方がバカなんだよ

バーカ」










その夜

一通のラインが届いた




ありがとう

ケイタさん大好き

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