第2話

いつもの喫煙所でタバコをふかしていた


あれ、今日はベンチに居ないんだ

なーんだ

少し残念だなと思った自分がいた

さて、仕事に戻るかな



「だーれだ」

手で目隠しをされた

古臭いことするなと思いながら

「いやーわかんないなぁ」


「バーカ

こんな美女の声わかんないの?

今日もどこか連れてってよ」


「仕事いつ終わるかわかんねぇよ」


「いいよここで待ってるから」


「おい、勝手だなぁ」

嬉しそうに手を振って走ってった



仕事終わったらちゃんと行ってやるか

仕事早く終わるかな



▽▽▽▽▽▽▽▽▽



あれ?

待っている時間がドキドキ出来るなんていつ振りだろ

今日はどこに連れてってくれるだろう

どんな話しをしよう

そんなこと考えてたらあっという間に日は傾いた

待ってる時間って永遠だと思ってた





「私待ってるから

待ってるんだから

絶対に来なきゃ許さない」



私泣いてる

最後にあなたにそう言ったんだ







あ、いたいた

「悪い悪い遅くなった」


「待ったぞ大変待った」


「勝手に決めたのにちゃんと来た俺に感謝しろ」


「ふふふ

本当に来てくれてありがとう

お仕事頑張って偉いぞ」

身長の高い俺をナナコが背伸びをして頭を撫でた


「ガキじゃねぇんだから」


「お、照れてるのか

今日はどこ連れてってくれるの?」


「ドライブでもするか」


「行く行くー

ふん」

繋ぐ?みたいな挑発した顔だった

無言でその手を掴んで歩き出した



▽▽▽▽▽▽▽▽▽

「へぇ外車なんだカッコいいじゃん

ちょっと古い?」


「そうだろ!カッコいいだろ!

子供の頃から乗りたくってさやっと買えたんだ

1990年式だから俺と同い年だな」


「ふーん意外、そういうとこあるんだ

ねぇねぇ乗っていい?」


「おお!いいぞ」

ガチャ

「どうぞ

それでこの車はな、、、、、、」

車のことはよくわからないけど

この車について話しているケイタさんは

すごい楽しそうだった

子供みたいに熱く語っちゃって



気が付いたらケイタさんの顔をずっとみていた





「このバイクのすごいところはさ、、、」

そういえばあなたも好きなものの話しになると

ずっと話してたね

あなたが好きなものは私も好きになった







「あれ?聞いてたか?」


「うん、聞いてたよ

ケイタさんて彼女いないの?」


「いるよ」


「、、、いるんだ」


「うそだよー

焦った?」


「焦ってねぇしー」


「ふーん

いねぇよ、こんな車乗ってるようじゃな

乗り心地悪いし、音はうるさいしな」


「ふーん

でも私この車好きだよ

ケイタさんみたいで」


「それどういう意味だよ!

ガタガタうるさいってことか?」


「そうそう」


「まったく

着いたぞ」


「凄い綺麗

ケイタさんってロマンチストでしょ?」

どうしてこの人はこんな素敵な場所知ってるんだろ?

丘を上った先には光の絨毯が広がっていた

「いいだろ?この夜景!

ロマンチストでセンチメンタルな男

俺、ケイタ」


「ハハハハハ!!!

本当バカ

バーカバーカ」


不思議な人でも気になる人




▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽





「送ってくよどこまで送っていけばいい?」


「ありがとう

あのベンチまで送ってって」


「あそこでいいのこんな時間だぜ?」


「うん戻らなきゃ」

これ以上は言えなかった

そこは俺には踏み込めない領域で

ナナコは今からでもまだ迎えに来ない誰かを待ち続けるんだ




やっぱりナナコは大切な人を待っている

顔も名前もわからない誰かに腹が立った



▽▽▽▽▽▽▽▽▽




ケイタさんまた会ってくれるかな

「じゃーな」


「うん、じゃーね

、、、あれ?」

ドアが?あれ?

「あ?開けられない?ちょっと待ってろ」

車から降りてケイタさんはドアを開けてくれた

「よし、古いとダメだなぁ、それじゃ気を付けてな」


「う、うんありがとう

ねぇ、また会ってくれる?」


「あぁいいぞ」


「ありがとうじゃーね気を付けてね」



さっきのあれ


私いったいどうしちゃったの?

あの時のあれって、、、


怖いよ












誰か助けて助けてよ

「どうしたナナコ?

具合でも悪いのか?」

ケイタさん!!

私はケイタさんに抱きついた

「おいおい、どうした?大丈夫かよ」

大丈夫、大丈夫

私は私

「ごめんね、大丈夫」


「本当か?」


「うん」

もう昼間?さっき別れたばかりだと思ったのに

「顔色悪いぞ

ちゃんと飯食ってるか?」


「ご飯?う、うん」


「はぁ、ちょっとここにいろ」

ケイタさんは走ってコンビニに向い

そして走って戻ってきた

「俺昼休みもう終わるから

これ食っとけ

また仕事終わったら来るから

ちゃんと食っとくんだぞわかったな?」


「ありがとう」


「それじゃーな」

ケイタさんは大きな手で私の頭を撫でて行ってしまった





あれ?あれ?

いつからご飯食べてないの?

なんでお腹空かないの?

とにかくケイタさんがくれたご飯食べなきゃ



袋が、、、

ケイタさんがせっかくくれたのに

袋がつかめない

通り抜けちゃう

やっぱり私

私って







冷たい、、、雨だ

ブルルル

もしもし?

そんな?そんな!わかったすぐ行くから

タタタタタ

キキーッボンッ







思い出した



私死んでるんだ

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