第5話 欲するは力ではなく
なんで、どうして繋がらない!?
僕の能力『
簡単に言えばWi-Fiのようなもの。
発信する側か受信する側に問題が発生していれば接続されることはない。
そして今のところ僕はさっきと特に変わったことはない。
強いて言えば時を経たことくらい。
今まで連続で能力を使用しても能力は使えた。―――つまり能力の制限はなかった。
それはつまり、数多と美香の危険を意味する。
「なんで、どうして……」
どうして僕は考えなかった。奴らは大量殺人犯だ。
それも1つの学校にいる人間を全員殺した奴らだ。
どうしてたった二人だと考えた!?
どうして他の可能性を模索出来なかった!?
心底自分に腹が立つ。
己の無力に。己の無知に。
何のために僕は今日まで欲してきた。
無論、あの二人のためじゃない、自らのためだ。
なのに
僕の力は何のためにここにある?僕が今まで求めてきた力は何だった。
こんなんじゃないだろ。ぼくの望んだ力は。
こんなはずじゃねえよ、僕の欲した力は。
「『
何度でも、何度でも二人をよぶ。
声が枯れるまで、例え声が枯れようとも僕は二人を呼ぶ。
どれだけ呼んでも返事はなく、徐々に声が出なくなる。
力なく空気だけが吐き出される。
「ハア……ハア……」
しかし、前を見るのを止めてはならない。
目を見開く。状況と現実から目を背けるな。
時は2秒後、立ちすくみながら。
時は4秒後、数歩前に進み扉があった位置に立つ。
朝に白米は食べたっけ。今頃デンプンがブドウ糖になる頃か。
ブドウ糖を燃料に前頭葉を全力で動かす。
人は本来、習慣化することで、前頭葉での集中を必要とすることなく、無意識に
小脳を使う。よって余った前頭葉を新たな集中に使用出来る。
だが、今回ばかりはそんなこと言っていられない。
意識して前頭葉の動きに拍車をかける。
二人を探す手がかりはどこにある?
どうすれば見つけられる?
ピースはどこにある、どこへ嵌めればいい、全体像はどうなっている?
思考を巻き戻す。僕が犯人を高速で制圧するとき、その前は?
頭の中をジクソーパズルのピースが嵐のように吹き荒れる。
グルグルと廻る手がかりを1つずつ確認する。思考回路が焼き切れそうになりながら。
そんな中、光ったピースを見つける、1つだけ。
嵐の中で手を伸ばす。他のピースに邪魔されながら、確実に手を伸ばす。
掴んだ
そうだ、僕は最後に聞いたんだ。数多の声を。
だから犯人は他にいると思った。やるべきことは単純明快。
やはり僕は欲するべきだ。
力じゃない。いや、力だが。今ばっかりは自分のための力じゃない。
僕は二人を―――数多と美香を欲したんだ。
僕の欲望のために僕は二人を欲した。今までならばそうだった。
もう違う。今は違う。
僕ではなく、他ならぬ二人のために力を使うべきだ。
目を閉じ、覚悟し決心した。
そして再び目を開く時、廊下の窓に写った僕の目は紅かった。
深紅の瞳をした少年は叫ぶ。
『
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