第3話 欲望による力は正義か罪か
「問題!?」
「もしかして今の音関係すんのか!」
数多には今の音が聞こえていたらしい。
数多の教室は僕のいる教室の真上だ。あれほどの威力で扉を蹴り飛ばせば、真上の教室にくらい音が聞こえて当然だろう。
美香は少し教室が離れていたため、そこまで音がは届かなかったのだろう。
一人だけ困惑している。
「ねえ!音って何!?何も聞こえないよ!?」
しかしそんなことを気にしてる時間はなかった。
事態は一刻を争う。入ってきた二人の男はどちらも銃を持っている。
おそらくあれはTEC-DC9、セールス名はTEC-9だったか。
フルオートに改造するのが簡単だったような気がする。
そしてそのうちの一人が言った言葉。
『この間みたいに一人残らず殺すぞ』
それは先に3人で話していた、全校生徒とその教師が殺された事件に繋がる。
つまり、彼らがその事件の犯人だと予想される。
僕の座席は
他の人が邪魔になってあまり犯人の観察が出来ない。
いくら洞察力があろうとも、目標を見ることが出来なければその力を発揮することもまた出来ない――不可能だ。
しかしそこである思考が脳裏をよぎる。
『一体、彼らの目的は何だ?』
彼らは金銭の要求をしているわけではない。
となると、それ以外に目的があるといことになる。
でなければ、逮捕や命を落とすリスクを犯してまで犯行に及ぶメリットがない。
いや、僕は先ほど美香に説いたはずだ。
『犯罪者の考えることなんて僕らの価値観じゃわからないし、同じ価値観の人間が犯罪を犯してるなんて思うと気分悪いだろ』
ならば僕は―――僕達は彼らの思考、計画、あるいは生き甲斐を決して理解し得ないのだ。
一通りの思考を巡らせてから2秒後、数多が脳に語りかける。
『で、数多。俺たちは何をすればいい?』
思考を光の速度で回転させる。実際の所どうすればいいのか、思考がまとまり、回転は徐々にゆっくりになっていく。
これは能力ではない。
欲して手に入れたものではない。
生まれつき僕には出来たこと。それは『未来予知・危機回避』
しようとしなければ出来ないがしようとすれば出来る。
僕は二人にこう告げる。
「それじゃあまずは―――」
すると、正義感からか満身したのか僕よりも先に行動を起こす者がいた。
それは僕のクラスの担任だった。
彼の担当は体育――つまりは体育教師だ。
よって彼の肉体はそれなりに鍛えられていた。
実際、体育の授業中、彼がお手本を見せることも幾度となくあったが、その度、陸上でも水中でも彼はその身体能力を余すことなく披露した。
武道の心得だってあったかもしれない。
しかしそれらは意味をなさない。
圧倒的な力――銃口の前では。
「君たち!自分のやっていることが分かっているのか!誰が望んだ!人の命を奪うことを。人の気持ちを踏みにじることを!」
先生は自らの演説、説得に拍車をかける。
「君たちのようなゴミクズがいるから!最近の若者は、なんてセリフを真面目な者達が吐かれるのだ!ゴミクズはゴミクズらしく、ゴミ箱に帰ればいい!私の真面目な生徒に汚れを持ち込まないでくれ!」
ここまで言われたのだ。逆によくここまで我慢が出来たと彼らのそれぞれ自分に言い聞かせただろう。
小さな舌打ちの末、銃を担任へと向ける。
そして微笑んだ。ゆっくりと引き金を引く。
そんな殺意も虚しく、弾丸が発射されることはなかった。
今度は僕が微笑む番。
「数多、美香、作戦通りうまくいった。次は僕らのターンだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます