第4話 自分の家だよ

70歳の認知症が少しあるおばあちゃん。

今日はおばあちゃんにとってとてもうれしい日。なぜなら、今日は、おばあちゃんが待ちに待った家屋評価に行く日で、3ヶ月ぶりの家に一時帰宅なのだ。

 朝からとてもそわそわしているおばあちゃん。リハビリなんてそっちのけで、普段はしない、お化粧したりきれいなお洋服を着たりして身支度を整えている。

「行ってくるわね。うふふ。楽しみだわ。」

と、とてもうれしそうな表情でリハビリスタッフと、ご家族と一緒に自宅へ向かった。


病院で待っている私たち看護師は、おばあちゃんは、ずっと家に帰ることを望んでおり、やっと帰れることができるため、

「駄々をこねて病院に戻ってこないかもしれないね、」と話し合っていた。


3時間後・・・


「ただいまあ、うふふ。」

と元気な声がナースステーションに響いた。


「おかえりなさい。どうでしたか?久々のご自宅は?」


「え?私自宅に行ってきたの?あらぁーそうだったの?

なんかやけに懐かしくて、見たことがある家だなあとは思っていたの。

とてもきれいなところだったわよ。私はここがお家だと思っていたわ。いやだわぁ。うふふ。」


とおばあちゃんはゆっくりとシルバーカーを押しながら自分の部屋に入っていった。

その姿を見ながら、私たち看護師、いっしょに自宅に行った家族、リハビリスタッフの開いた口は閉まらなかった。


いやいやいや、おばあちゃん、なにしに家にいったの!?!?!?!?


自宅を忘れてしまう患者さんを私はこの時初めて見た。とてもレアな経験。

のちに同期に話したら大笑いをしていた。こっちは笑い事じゃないよー!!!

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