第2話 私という女
クロノス歴125年──。
私の父である魔王ガルデス・オーディンが死去し、レギオン帝国に蔓延っていた魔女たちは弱体化。各地で魔女狩りが始まり、多くの女性が異端審問にかけられ、拷問されたあげく殺されてきた。
私は宮殿の玉座で紅茶片手に新聞を読んでいた。ふわふわと角砂糖が浮かび、ぽちゃんとカップの中に入る。うん、いい味になった。
「……貴様、ただで済むと思うな、アヅッ!!」
私は紅茶を捕虜の兵士の一人にぶちまけた。この男どもを人だとは思っていない。
捕虜は総勢7名。とるにたらぬ。この宮殿に令状もなしに押し入り、家じゅう漁った。大魔女もここまで落ちぶれるとは、と嘆息する。
「……俺たちをどうする気だ?」
「それを言ったら白けるだろう。しかし敢えて言うなら、政治に利用させてもらう」
「は? 政治だと?」
「そうだ。この馬鹿げた魔女狩りをやめさせるよう、貴様らにはせいぜい働いてもらう」
「なんだと、貴様……」
一人の男がそう口にしたと同時に、私は指を鳴らし、その男を灰に変えた。鋼鉄の鎧も、一瞬で雲散霧消した。
「ひ、ひいぃぃぃぃ!!」
私はもう一杯紅茶をポットから注いで口にし、
「この紅茶が無くなるまでに、この書類にサインしろ。死にたくなければな」
私はまた指を鳴らし、彼らの拘束を解いた。すると全員、堰を切ったように、私が投げた書類とペンにたかった。
そして6人の兵士を盾に、魔女狩りの停止協定を政府に結ばせた。
私は6人を“生贄にし、脅威を与うることもできる”とでたらめを綴っただけなのに、ひどい掌返しようだ。まぁ、同時期に政府のスキャンダルが起こったため魔女狩りがやめになったというのも相まって、というのが私なりの謙遜ではある。
そしてそれから150年ほどの月日が経った。
一枚の手紙が私宛に届いた。
『敬愛なる魔女 ララ・オーディン殿 挨拶は簡素化して要件のみを伝えさせていただきます。ご無礼をどうかお許しください』
『あなた様の資金提供していた禁書庫で粉飾決算の内部告発がされ、所長のダイナモ氏が税務局の監査事務所が発起人となり検察によって起訴されました。この失態、命を賭してお詫びもうしたもうございます。今度使いの者をそちらにお回しいたしますので、どうか貴女様の寛容な心でこの問題の解決のお知恵を拝借しとうございます』
やれやれ。また厄介事か。
しかしこの事件を通して、私は恋というものを知るのであった。
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