トラ柄ビキニブラは良い水着?
そもそもの発端は、一年C組の面々がフラストレーションを溜めていることらしい。
理由の一つは遅々として上がらないレベル。
経験値を稼ぎレベルを上げることは、RPGを始めバトル要素のあるゲームには定番の楽しみだ。できるだけ効率よく強くなりたいと稼ぎステージや高経験値モンスター探しに躍起になりつつも、徐々に強くなっていく過程がプレイヤーに充足感を与える。
しかし、アンダーヘイムのスキルレベルは十段階。
レベルアップは一生に何度あるかというくらいの大事だ。特にレベルⅣ以降は、一回ごとに人間としての限界の壁を一つ超えることに等しい。
浩介たち地球人は異世界召喚により、最初から高レベルのスキルを与えられている。そのためこれ以上、レベルが上がる見込みがないのだ。
最初こそ俺ツエーイと無双プレイを楽しんでいたクラスメイトたちも、この四ヶ月間全く変動しないステータスに苛立ち始めているらしい。思えば先日の三人組も、あの周囲を顧みない暴れようは刺激欲しさ、ストレスからの反動だったのかもしれない。
もう一つの理由は、ダンジョンの手痛い『洗礼』を受けたこと。
ダンジョンは基本的に深く潜るほど魔物も強さを増す。深層ほど空間に満ちる幻素が濃くなり、常識を超えた力の持ち主が生まれやすいからだ。裏を返せば深入りさえしなければ、一定の安全マージンが取れる。
が、何事にも例外はあるもので、その一つが《リベンジャー》と呼ばれる変異種だ。
倒された魔物の幻素がダンジョンに還元されないまま沈殿し、寄り集まって肉体を再構成。そうして復活した魔物はその階層に見合わない強大な力を発揮する。冒険者に復讐するべく生まれた怨念の化身、故にリベンジャーだ。
一年C組は数日前、ヘビとサソリを合体させたような姿のリベンジャーに遭遇し、大きな被害を受けたらしい。
辛うじて撃退には成功。京太たち戦闘職トップに大きな怪我はなかったものの、ヒーラーや非戦闘職のクラスメイトに重傷者が出た。
この被害でゲーム気分が吹き飛び、ここは死と隣り合わせの現実だと今更ながら痛感したようだ。クラスメイトたちは酷く落ち込んだり、逆に攻撃的になって周囲に当たり散らしたりと大分荒れているとのこと。
そんな陰鬱な空気を払拭するべく、京太はプールでの息抜きを企画し、立夏を……浩介はガン無視で立夏だけを誘いに来たわけだが――
「つーか、こっちの世界にもプールなんてあったんだな」
「プールの知識自体はチキュー人からもたらされたものデスけどね。ダンジョンからは水が湧き出る《水霊石》も採掘できるので、建造するのはそう難しくなかったんデスよ。水の管理も水道の整備に使われている擬似回路がそのまま転用できたデスしね」
「じゃあ、ここの設備にもブラッドパール家の技術が関わってるのか。知ってたつもりだったが、ローザの家ってスゲーんだな」
「どーデスかね。ブラッドパール家が偉大なのは事実デスが、魔導学者というのは基本自分の知識欲の探究しか頭になくて、他人や世間には無関心なんデスよ。こうした技術提供は大抵、研究資金を得るために重要度の低いものを売り払っただけデスし……」
「って、なんで八代まで来てやがるんだよ!?」
二時間後、浩介とローザも当然のごとくプールに来ていた。
ちなみに浩介は地球でも普通にありそうな、緑で風っぽい柄の入った海パン。ローザはフリルがたくさんついた黒いワンピースタイプの水着だ。
ついでに京太は太陽のマークが入ったオレンジの海パンである。
「これは日夜ダンジョン攻略を頑張ってきた一年C組の息抜きプールなんだぞ! なにも協力してない、なんの役にも立ってない引きニート野郎が来ていいわけないだろ!」
「別にお前らの息抜きに参加する気はねえよ。個人的に遊びに来ただけだから、文句言われる筋合いもない。あと誰が引きニートだ。引きこもってはいるが、魔導学者の助手として立派に働いてるっつーの」
「キヒヒッ。馬車馬というか馬車の車輪のごとく、ギュルギュル働いているのデスよ」
「は? なにそのがきんちょ。お前、子守りのバイトでもしてんの?」
「……こいつ、ローザの魔法で消し炭にしてもいいデスかね」
「よしなさいよ。こんなところで暴れたら、他のお客さんの迷惑になるでしょ」
「あっ、立夏。ようやく着替えがおわ……」
ピキピキ額に青筋が浮かんだローザを止めたのは、着替えがローザより遅れていた立夏の声だった。
浩介は声の方に振り向き――絶句。
立夏の水着はスタンダードなタイプの黒ビキニだ。ブラの真ん中にリボンがあしらわれており、色気だけでなく可愛らしさもあるデザイン。露出面積はそれほど大きくなく、周囲の視線が気になるのだろう、プールやビーチで使える仕様の上着を羽織っている。
しかしそれが却って綺麗な肌を強調し、そもそもスタイルが良いので過度な露出などなくても十二分に人目を惹きつけていた。
すれ違う男たちが十人中十人振り返り、同伴する女性がいれば蹴飛ばされている。
中学では授業のスクール水着しか見る機会がなかった浩介も、目を離せずにいた。
「おおおおぉぉぉぉ! 最高! 最高だよ立夏! 綺麗だし! 似合ってるし! エロいし! なんていうか、もう、ビーチの天使って感じだよ! ここプールだけど!」
「あー、ハイハイ。どーもね」
デロンデロンに鼻の下を伸ばしながら捲し立てる京太に、立夏は素っ気ない態度。無遠慮な視線から胸を隠すように、上着の前を手で掴んでいた。
「……どう?」
「いや、なんつーか、上手い言葉が出てこないんだが……その、イイな。凄く」
「~~~~っ。そ、そう」
対して浩介には頬を赤らめつつも上着の前を開いて見せ、語彙力のない感想にまんざらでもなさそうな顔で。その対応の差に浩介は翻弄されてしまう。
なんというか、ズルイ。卑怯だ。この幼馴染は、こうしてちょくちょく思わせぶりな態度を取る。クラスでも人気者のイケメンは冷たくあしらうくせに、浩介には浩介にしか見せない顔を、仕草を、反応を返してくる。
本当にもう、うっかり惚れたらどうしてくれるのか。男子高校生は男子中学生の次に頭が悪く、手を握られただけで二段も三段も飛躍した勘違いをする生き物だというのに。
こんな、期待させるようなことをして。
……曖昧な態度については、こちらも人のことを言えないのだが。
「涼みに来たのにお熱い空気出してるんじゃねーデスよ」
「出してないわよ、そんな空気! ……それじゃ、私たちは私たちで遊ぶから、草薙はC組のところに行ってきなさいよ」
「は!? なんで!? 皆で一緒に遊ぼうぜ! そんなの放っといてさ!」
「クラスの皆とは、それこそ毎日一緒に行動してるじゃない。休みくらい少人数で過ごしたいのよ。考えてみれば、浩介やローザとは地下の研究室ばっかりだったし」
「そもそも八代なんかに付き合ってやる必要ないだろ!? 俺たちに協力もしないで、子守りのバイトなんかで日銭稼いでるようなロクデナシなんて!」
「――学士殿の助手を『子守り』呼ばわりとは、知らぬこととしても無礼が過ぎるな」
荒立つ空気を一刀両断するような、凛とした声が会話に斬り込んできた。
自然と割れる人垣から現れたのは紫紺の髪に金色の瞳、そして褐色の肌をした美女。
王都を守る警備隊の隊長、ダークエルフのファム=セイレーンだ。
「「Oh……」」
「「Jesus……」」
当然ながら水着姿のファムに、男二人の口から感嘆、少女二人から驚嘆の声が漏れる。
ファムの水着は白いビキニで、ブラの紐を前で交差させてから首の後ろで結んだ、クロスホルターと呼ばれるタイプ。布面積は立夏とそう変わらないのだが、何分中身のサイズの関係で露出度は高めだ。
それに褐色の肌に白いビキニという組み合わせが、なんだかとってもイケナイ感じがする。すれ違った者は男も女も振り返って言葉を失うほどの破壊力である。
一足早く我に返った京太が、もう鼻から下が地面にくっつきそうな勢いでにやけた。
「いやー! これはこれはセイレーンさん! あのおっぱいアーマーの上からでも凄いのは伝わってたけど、実際に見るとなんていうか、本当に見事ですね! あんな硬くて野暮ったい鎧ばっかじゃなくて、普段からもっと女らしい格好すればいいのに!」
「先日はどうも。一応、褒め言葉として受け取らせてもらう。それと私は騎士として、警備隊長としての正装に誇りを持っているので女らしくなくて結構」
「……なんか警備隊長さん、草薙に対してやけに態度が冷たくねえか? 下半身に血を持っていかれたのかって感じの、大分頭の悪いセクハラ発言を差し引いても」
「ほら、この前の三人組が馬鹿やった件。三人組が捕まったことに草薙が警備隊に猛抗議してね。仲間を庇ったと言えば聞こえはいいけど、街の人たちに迷惑かけたことについては反省の色一つ見せなかったから……」
なんでも「道路は直したんだから済んだ話だろ」だの「不審者を捕まえるために協力した結果なんだから無罪」などと主張したそうで。
それでファムの不興を大いに買ってしまったらしい。
京太は決して悪人ではないし、現に一年C組では男子女子問わず人気も高い。しかし立夏といいファムといい、なんというか肝心な相手に限って言動の選択肢を致命的に誤っているような節があった。自業自得なので同情はしないが。むしろザマア。
ファムは早々に京太の相手を切り上げるとローザに歩み寄り、打って変わって礼儀正しい態度で挨拶する。
「お久しぶりです、学士殿。今日はお休みで?」
「たまには我が下僕にも労いが必要デスからね。ローザは飴と鞭を巧みに使い分けられるできたレディなのデスよ。そういうファムも休暇デスか?」
「はい。ゴブリンナイトや《羊飼いの猟犬》の捜査で警備隊は今も忙しいのですが、一日くらい休めと部下に追い出されてしまいまして。王都に怪しげな影が差している今、本来なら休んでいる場合ではないのですが……」
「ファムはいつも真面目すぎで根を詰めすぎデスからね。部下の配慮を無碍にせず、大人しく休暇を楽しむが良いのデスよ」
「あの、ローザと警備隊さんはお知り合いで?」
気安い雰囲気を交わす二人に、浩介がおそるおそる手を上げて尋ねると、二人はなんでもない顔で答えた。
「警備隊にはローザが簡易型通信機を提供して、そのメンテナンスなどでちょくちょく顔を合わせている仲なのデスよ。元々は学者同士が研究の意見交換に使っていた通信装置を簡略化したものデスがね」
「それでも私たちには十分すぎる性能です。おかげで隊員同士が離れていても連携が取れるようになって、犯罪者の確保にも大いに役立っています。他にも学士殿の発明には助けられていますから、学士殿は我々警備隊の恩人ですよ」
「はへー」
まさかこの二人にそんな繋がりがあったとは。話さないローザも人が悪い。
世間って狭いなー……などと感心していた浩介の目つきが、突如として鋭くなる。
そしてファムの顔に目がけ、大きく右足を振り上げた。
――パシン!
「なっ」
「八代!? てめえなに……を?」
浩介の蹴り足が捉えたのは、ファムの顔ではなく、ファムの顔に直撃コースで飛んできたビーチボールだった。
足の甲と脛で器用に挟んだボールを、そのまま上に放りつつ浩介は叫ぶ。
「立夏! スライダー横を走る、青い海パンでツンツン茶髪の男だ!」
「オッケー」
片足立ちしたままの浩介の肩を踏み台に、立夏が高く跳躍。
ドンピシャの位置に来たボールを、空中からミドルシュートで撃ち放った。
弾丸のごとき速度で急降下したボールは群衆の向こう、浩介が述べた通りの特徴を持つ男に命中。妙に焦った様子で走っていた男を一発でひっくり返らせた。
「ぶげっふ!?」
「なんだぁ!?」
「そいつ水着ドロボーよ! 捕まえて!」
「うわっ、本当だ! 水着のブラ掴んだまま失神してやがる!」
ワーキャーと騒ぎ声がこちらまで届いてくる。
危なげもなく着地した立夏と浩介は軽くハイタッチを交わした。
「サンキュ」
「別に礼を言うほどのことじゃないでしょ」
「そうだな。礼を言うべきなのは私だ」
「うひ!?」
横から伸びた褐色肌の、言うまでもないファムの両手が、浩介の手を包んだ。
手だけでも艶めかしい感触に加え、両腕に挟まれてムギュッと強調されたたわわな胸の谷間が眼前に飛び込んで、浩介は思わず声が裏返ってしまう。
そこへ追い打ちをかけるかのごとく、ファムが下手な男よりかっこよくキリッとした表情を寄せてきた。
「ありがとう。おかげで助かったよ」
「い、いえっ、俺が手出しなんてしなくても、あんなの余裕で避けられたでしょうし」
「そうわかっていても身体が勝手に動いていた。違うかな?」
「あぐ」
思い切り図星を突かれて浩介は口ごもる。
あんなボールごときかすりもしないことは、ゴブリンナイトとして彼女と幾度も拳と剣を交わした浩介にはわかり切っていた。それでも反射的に動いていたのは、《ヒーロー》で在ろうと常日頃から心がけてきた習慣故か。
浩介の反応に、ファムはさらに顔の距離を縮めてくる。
「これは受け売りの言葉なのだがな。咄嗟の反応で誰かを助けるために動ける者は、信頼に値する。特に人を守り、人を助けることを使命とする職務にはなにより重要な資質だ。どうだろう? 警備隊に興味はないかな? 君のような人材を私は探していたんだ」
「あば、あばばばば」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください! そんな急な話、っていうかまず近すぎ! 浩介もデレデレしてないで離れなさいよ!」
「無理をおっしゃらんでくれぇぇ……」
目尻をつり上げて叫ぶ立夏に、若干涙目で情けない声を上げる浩介。
画面越しにもお目にかかったことがないレベルの美女に至近距離から、それも好意的な目で見つめられて動じるなという方が無茶振りだ。いくら美少女の幼馴染と十数年一緒に過ごして多少免疫のある浩介といえど、ファムの美貌と色香は刺激が強すぎる。
業を煮やした立夏は、力ずくで引き離そうと手を伸ばす。――が、その手を掴んだファムが、続いて立夏に詰め寄ってきた。
「ふひゃ!?」
「君も素晴らしい運動神経だった。不埒な窃盗犯を見逃さなかった彼の判断力もそうだが、彼の言葉に即座に反応しての連携は見事の一言だ。その阿吽の呼吸といい、是非とも二人一緒に勧誘したいものだ」
「いえ、そ、そんな、私なんて。がさつで乱暴なだけで」
「それに、こうして手に触れるだけでもわかる。スキルに依存することなく、己を高めようと鍛え抜かれた身体……君の真っ直ぐな心根を表した美しい身体だ。なにも卑屈になることはない。もっと自分に自信を持つといい」
「ひゃ、ひゃい」
「オイコラ、立夏の方がよっぽどメロメロになってんじゃねえか!」
百合の花でも咲きそうな空気に、今度は浩介が眉をひくつかせて待ったをかける。
「だ、だって! 私、周りから頼られるばっかりで、男はそりゃあんたって例外がいたけど……こんなカッコイイ感じの女の人に迫られるのなんて、初めてなんだもの!」
「まあ、確かにこの人めっちゃイケメンっつーかイケ美女っつーか、クレバーに抱かれたくなるオーラあるよな。一生傍に傅いて尽くしたい」
「本当それ。お姉様ってお呼びしたい……」
「いや、なに二人でわかり合っちゃってるのデスか。それにコースケはローザの助手で下僕だってこと、忘れてないデスよね? あげないデスよ?」
わかるわかる、と頷き合う二人に呆れながら、所有権を主張するように浩介の海パンを掴むローザ。わざとではないだろうが、思い切り尻の位置を掴んでいた。彼女が幼女でなければ完全にセクハラである。
傍から見れば冴えない男子が美女、美少女、美幼女を侍らせている図だ。
周囲から嫉妬の視線が突き刺さるも、浩介はまたファムの勧誘という名の口説きにタジタジでそれどころではない。
「くっそお……なんで八代なんかが褐色美女エロフや金髪赤目ロリに囲まれてんだよ! しかも立夏まで! こんなの絶対おかしいぞ! なんかの間違いだろ!」
「――本当にねえ」
「あ、実彦! お前、今までどこにいたんだ? 俺より先に着替え済まして出て行ったはずだろ?」
「んー。ちょっと野暮用でね。それより、霧島さんを助けに行かなくていいのかい?」
「あ、ああ! そうだな! 立夏をあの節操なし野郎から助けてやらなくちゃな!」
いつの間にかいた実彦に背中を押され、京太が浩介たちの輪に割って入ろうとした――そのときだった。
グラ、リ。
地面が。空が。人が。建物が。否、空間そのものが揺れる。
視界のあらゆるものが二重三重にブレる異常な震動に、しかしアンダーヘイムの住人たちは動揺しつつも慣れた様子だった。
「《次震》か。最近やけに多いな」
「小さいものを含めれば、今週だけで四度目になるのデスよ」
《次元震動》――略して次震とも称されるこの現象は、アンダーヘイムにとって日本の地震と同じくらいの頻度で訪れる自然災害の一種だ。
空間が丸ごと震えるため、それ自体で物理的な被害は発生しない。
問題は二次災害として発生する次元の裂け目。《
「ちょっと! こんなところに魔物が出てきたら大変なんじゃ……!」
「その心配は無用デスよ、リッカ。こういう人が集まる施設には王宮と同様、《亀裂》を発生させないための誘導装置が――」
ピシッ。ピキ。ビキキキキ!
湖に張った氷がひび割れるかのような音に、余裕だったローザの笑みも凍りつく。
そこかしこで《亀裂》が発生し始めて、たちまちプールは大混乱となった。
「そんな、馬鹿なデス! これは一体……!?」
「管理室! 私は警備隊のファム=セイレーンだ! 今、プールでそこら中に《亀裂》が発生している! 一体なにが……誘導装置が何者かに破壊された!?」
通信機はイヤホン型で、今も身につけていたらしい。管理室と連絡を取ったファムは思わぬ事態に声を荒げるが、すぐに冷静さを取り戻して客の避難誘導を始めた。
浩介も立夏とその手伝いをしようとするが、足元で異音。
「立夏、下だ!」
獲物を呑み込まんとする顎のように開いた亀裂。
しかし呼びかけが間に合い、立夏はローザを抱えて安全な距離に飛び退いた。
浩介も亀裂から逃れるべくジャンプした、が。
突如、あらぬ方向から飛んできた雷の刃が浩介に直撃する。
「が……!?」
「浩介!」
骨にヒビが入る衝撃が、浩介の体を亀裂に押し戻す。その上、斬撃に付与された雷のせいで、痺れて身動きが取れない。如何にゴブリンナイトが英雄級の強者でも、生身の八代浩介は戦闘スキルも持たない一般人なのだ。
成す術なく亀裂に落ちる浩介。玉虫色の空間に放り出され、五感が地下深くへと引きずり込まれていく。
浩介が最後に見たのは、実彦の制止も振り切って亀裂に飛び込み、こちらに手を伸ばす立夏の必死な表情だった。
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