3章 魔力の目覚め

1話 予言

 和神異変から1週間が経った。私達の存在が人々に広まっていった。街に出てぶらぶら歩いていると、声が聞こえてくる。


「あれが、最近現れて異変を解決してるとかいう噂の吸血鬼、瑠奈らしいぜ…」

「あれがか?オレには可愛らしい人間の女の子にしか見えないぞ…?」


 というような、噂話が耳に入り込んでくるのだ。正直、私には何も害はないから気にも止めないのだが、ケルベやカレンはなぜか心配している。それと近頃になってふと不思議に思った事がある。どうして私は、この世界に生まれ変わって、吸血鬼になっていたのだろうと。今更感があって仕方がないが、深く考えれば考える程、周りが見えなくなっていった。私の悪いクセだ。悩む私の心は、まるで底なし沼にハマって抜けられず、沈んでいく。さっきまでいたところに私はいなく、私の周りは水の中のように暗く、重い。


「そこの悩めるヴァンパイアさん。こちらへどうぞ」


 突然、声をかけられ、ハッと意識が街の中へと戻らされた。道の端に黒いフードで顔を覆った、怪しげな人が静かに座っていた。私は不気味に思い、その者を見つめる。フードの者はチラッと私を見て、すぐに目線を正面に戻した。その目線は、まるで私を椅子に座るように促しているようだった。私は怪しむ目線を向けたまま、その椅子に座った。


「そんな怖い目で見ないでくださいな。私はただの占い師ですよ…」

「そんな占い師さんが、私に何の用?」


 私はより強く怪しんだ。敵対心なのかは、わからない。ただ、この占い師から感じる雰囲気は、血管も凍りそうな恐ろしさだったのだ。私の血が危険を知らせていた。


「私、あなたに構う程、暇ではないのだけれど…」

「そんな事言わずに、少しぐらい私の占いを受けてくださいよ。お代はいいですから…」


 断っても無駄そうだと思い、諦めて占いを受ける事にした。早く終わらせて、さっさと帰ろう。そう考えていた。


「それでは早速、始めさせていただきますね……」


 占い師は静かに俯き、何かを唱え始めた。すると、私を中心に青白い光が輝き出し、周囲を包み込んだ。熱さと冷たさが私を締め付ける。占い師は私に何をする気なのか。私の怪しむ目は、戦おうとする目に変わっていた。立ち上がったその時、光が消えた。


「見えました…。予告状、凍る世界、魔女、そして…死」


 言ってる事が理解できない。私は呆れ、その場から去っていく。私は館へと戻っていく途中、少し考えていた。振り返った時、占い師がいた場所には、雨が降った訳でもないのに、水溜まりができ、フードが落ちていた。


 館に戻るなり、ケルベに捕まった。


「おいルナちゃん。何1人で外を出歩いてるんだ」

「まあまあ、無事に帰ってきてるんですから、ね?」


 相変わらず、この2人は元気だった。見ていて自然と安心感が湧いてくる。今日の占い師の事は2人には黙っておこう。そう思った矢先だった。突然、館の明かりが消え、強い冷風が窓を叩いた。窓の外では、封筒のような物を持つ淡く青い鳥が飛んでいた。


「封筒…?一体誰に…」


 窓を開けると、鳥は手紙だけを落とし、飛び去っていった。すると、風が止み、館の明かりがついた。


「一体何だったんでしょう…。瑠奈ちゃん、さっきの封筒は誰宛ですか?」


 私は封筒の文字を見て、思わず固まってしまった。凍るように寒いはずなのに、汗が流れてくる。


「異変が…くる…!」


 Episode3 Awakening of magic

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