3話 天照

 そこには、光と着物で身を包んだアマテラス様がいた。姿こそツクヨミ様とそっくりだが、雰囲気や表情は完全に真逆のものだった。にしても熱苦しい。このままだと、燃え溶けてしまいそうだ。


「其方、妾と遊んでくれるのか?それとも、遊んでくれないのか?どちらにしても…モヤシコロシチャウヨ?」

「っ!?何……今の殺気…」


 恐怖のあまり震え上がってしまった。今すぐにでも逃げだしたい気分だ。だが、相手は神。そう容易く逃げれる訳がない。それに、私は異変を止めると決心した。ようやく神と戦う覚悟を決めた。


「いいですよ…遊びましょう。ケルベ、カレン離れてて…」

「遊んでくれるんだな!では早速…イクゾ」


 この言葉と同時に、アマテラス様の姿が消え、背後から焼けるような痛みが私を襲った。すぐに後ろを見るが、何もいない。それどころか、辺りを見渡してもアマテラス様の姿はなかった。すると、今度は正面から、さっきと同じ痛みを受けた。


「フハハ!オソイオソイ!」


 今、攻撃を受ける直前に一瞬だけ姿が見えた。姿が見えない理由は単純だった。


「光の速さで動いてる…そういう事ね…なら、答えは1つ!」

「気づいてもムダダヨ!ジャアネ!」

ブラッドチェーン……」


 私を中心に、周囲に血の鎖が張り巡った。その鎖は血を求めるかのように、アマテラス様を縛り上げた。ケルベに隠れて練習していた技が早くも役に立った。しかし、不慣れだからだろうか。疲労が酷く、血の消耗も激しい。


「マダ…遊びはオワッテナイ…!」


 神々しい光を放ち、鎖を振りほどいた。更にその鎖は光に変えられ、私を全方位から囲んでいた。私は避ける力など残っていなく、死ぬのを覚悟した。


「ピンチの時に開けるがよい」


 ふと、ツクヨミ様の言葉が頭を過ぎった。渡された小瓶を私は急いで開けて、中を確認する。


「血……」


 鮮やかで真っ赤な血が入っていた。透き通っていて、不思議な感じがした。


「一体誰の…」


 迷っている暇なんてない。私は血を瓶を噛み砕く勢いで飲み込んだ。光は容赦なく私を飲み込んだ。


「瑠奈ちゃぁぁーん!」

「何やってんだよ!ルナちゃん!」


 カレンとケルベの私を呼ぶ声が聞こえる。


(そうだ、私はまだ止まれない。止まったらいけないんだ…)

「遊び…モウオワリ?」


 力が溢れてくる。私の止まれないという気持ちに血が答えてくれている。そんな気がした。


「そうか……ツクヨミ様…私のために……ありがとうございます」

「ヨカッタ…マダ遊べる」

「遊んであげますよ……少しだけね!」


 溢れる力は強く、深い夜の力だった。ツクヨミ様の肌で感じたあの強さだった。私から、冷たい夜が広がっていく。


「瑠奈ちゃん……」


 カレンが思わず泣いてるのが見えた。私の事を、そんなに心配してくれている仲間がいる。


「なんて声…出してるの。私は吸血姫、ルナ・ブラッドローズよ!そんな簡単に負けたりしないっ!」


 気づけば夜が周りの光を覆っていた。これなら、いける。


「ムダッ!ムダナノ!」

「仕返し…いきます!」


 光の攻撃がはっきり見える。私は、アマテラス様のふところに入り込み、力を振り絞った。


蝙蝠ヴァンパイア弾丸ショット月読魂ツクヨミソウル……」

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