2章 神々との遭遇

1話 来客

 陰陽異変から1ヶ月、新たな異変が起こる事はなく平然と毎日を送っていた。何事もなさすぎて私は毎日、日の当たらない部屋でゴロゴロしているだけだった。

 今日もダラダラ血を飲みながら、何もない天井を眺めていた。


「暇ぁ…」

「おいルナ!異変がないからって、ダラダラしすぎだ。しかも飲んでは寝てを繰り返してたら太るぞ」

「1ヶ月続けて太ってないから大丈夫だもーん♪」


 このまま異変が一切起こらずほのぼのとした毎日が来るのなら、それが1番いいと思っていた。その時、部屋の扉を勢いよく開けて、カレンが慌てた表情で入ってきた。


「大変です!異変が起きました!」


 この言葉で私達は急いで外に出る。しかし、どこにも異変らしき事は見当たらない。にしても太陽が照っていて本当に火傷しそう。というより、熱すぎる。


「異変は空です!太陽を見てください!ほら!」

「太陽…?なっ…」


 空を見上げると、太陽が膨張していたのだ。それは、普段見える太陽の比ではない程に。まるで太陽がこの世界を飲み込もうとしているようだった。


「うわぁ……この異変、ルナちゃんには厳しいものになりそうだね…」


 ケルベの言う通り、私にとって太陽は相性が悪すぎる。これはしっかり対策しないと。日除けしたにしても、もつかどうかすら怪しい。


「どうしましょう…。と、とりあえず中に入りません?瑠奈ちゃんが燃えてしまいますし…」

「それも、そうだね。ルナちゃんが戦えない状況になるのが1番危険だ」


 と、中には入り作戦を考え出した。しかし、そう簡単に浮かぶはずもなく、八方塞がりとなってしまっていた。その時、ケルベが不思議な事を言い出した。


「ダメだ、太陽の対策なんて浮かぶ訳…ん?魔界に客…?」

「ケルベ?魔界に客って?」

「あ、あぁ……魔界に時々来るんだよ。異変を止めてくれっていう神がさ」


 ケルベが一瞬言うのを躊躇したように見えた。それよりも、神と聞こえた。その言葉に私は怖くなってしまい、動かなくなった。カレンも私と同じ反応だった。数十秒経って、ようやくカレンが口を開いた。


「と、とりあえず会いに行きません?もしかしたら、異変解決の手助けを得られるかもしれませんし」

「そ、そうだね。ケルベ、案内して?」

「ん、覚悟はできたんだね?大丈夫だと思う

けど、粗相のないように」


 ケルベも緊張しているのが、見てわかった。こんな震えている姿は初めて見た。


 魔界に着くと早速、応接間のようなところに向かわされた。そこには既に、誰かが座っていた。それは女性で和服のようなものを着ていて、とても静かな表情だった。


「こ、こんにちは…。よ、ようこそ、魔界へ…」


 ケルベが深く頭を下げるのを見て、私達もお辞儀をする。


「こんにちは…か…。妾には本来無縁の言葉だがな…よろしくお願いするぞ」

「も、申し訳ございませんが…お名前をお聞きしても…?」


 ケルベの聞いた事のない敬語に笑いを堪えていた。それ程、今の状況のプレッシャーは恐ろしかった。女性はしばらく黙り、ゆっくりと口を開いた。


「妾はヨミ…『月読命』ぞ。夜を統べる神ぞ」


 日本神話のツクヨミ様、どうりで和服が似合う訳だと、納得がいった。そんな事より、ケルベが緊張で固まってしまっていた。それは私も同じだった。緊迫した空気の中で、ただ1人、ツクヨミ様だけが、平然としていた。何でこんなに震えてるんだ、危害を加えようとしてないなら、怖がらなくていいだろう。そう思うと、気が楽になった。すると咄嗟に、頭に浮かんだ言葉を口走っていた。


「あの…ツクヨミ様。太陽の異変について、知ってる事…ありますか?」

「あぁ…というよりも、その異変を止めるのを助けて欲しくて来たのだ。妾の姉妹である、『天照』の暴走を止めて欲しいのだ」


 Episode2 Encounter with the gods

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