5話 血統
かっこよく言ってはみたが、少し恥ずかしくなり顔が熱くなった。
「ル、ルナちゃん。とりあえず飲みなよ♪」
「そ、そうですよ。折角採血したんですから」
このフォローが地味に心に刺さる。でもこの世界に来てから初めての食事。赤く輝く液体がこれからの私の栄養。いざ飲むと考えると不安が混み上がってくる。勇気を出して1瓶、
「ゴクッ…」
美味しい。表すと変かもしれないが、ベリーのような酸味と甘みが口の中に広がっていった。喉を最後の1滴が通るまで、この感動と感謝が心を包んでいた。
「よし、飲んだね。早速異変解決と行こう♪」
「おー♪」
ここからだ。私達ブラッティー・ドリームズの夜はここから始まる。館を飛び出し陰陽へと突き進む。三人寄れば文殊の知恵ではないが、怖いものなんてなかった。
陰陽の近くまで着いた。しかしそこには深い邪気と微かな日光の優しさしかなかった。辺りを見渡しても犯人と思われる者はいない。そんな時だった。胸が苦しくなってきた。呼吸も乱れ、全身が熱い。痛くて今にも地面に落ちそうだ。けど同時に、瞳の奥から凄まじい力が溢れてくる。今、最高に『生きてる』という気がした。
「お目覚めおめでとう、ルナちゃん♪」
「ありがと、今なら何でもできそうな気がする」
とは言っても、手がかりなんてなく行き詰まっていた。
「うっ……」
急に左眼が疼き出した。それと一緒に陰陽から赤い軌跡が見えてきた。
「ケルベ、カレン!犯人の居場所、多分わかった!」
「ほ、本当ですか(かい)?」
「うん、あそこ!」
私は軌跡の先にある黒い古城を指差す。
「あそこは、最近突如現れた古城…」
ケルベが何かを言いかけたところで口を詰まらせた。気になりはしたが、そんな場合じゃない。
「行こう。どうせここにいても何も始まらない」
城は薄暗く、お化けでも出そうだった。2人と1匹に緊張が走る。中に入ると暗く気味が悪かった。すると、私達を歓迎するように奥の部屋から蝙蝠が襲いかかってくる。
「ど、どうにかしてください!」
「蝙蝠達よ…私の眷属となりなさい」
私の呼びかけで蝙蝠は石のように固まった。練習していた技がこんなに上手く使う事ができ、ちょっぴり嬉しくなった。部屋からは霧と闇が流れてくる。
「多分、ここにいる。さぁ、行くよ!」
中には、血のように赤い道と玉座があった。そこに座っている者からは、陰陽から溢れていた邪気が発せられている。それに私と似ている気配もした。
「遅かったな、おかげで待ちくたびれたぜ……」
「アナタがっ、あれを!?」
「あぁ、太陽が邪魔だったんでな。吸血鬼のオレ様にはよぉ!」
(吸血鬼!?)
この異変の犯人は吸血鬼。それを聞いた途端、私は絶句した。自分1人だけ別空間に飛ばされ時が止まったようだった。
「瑠奈さん、落ち着いてください!」
カレンの一言で我に返る。そうだ、相手が誰でも関係ない。私は異変を止めなくては。
「カレン、離れてて。ケルベ行くよ!アナタの悪事は私達が止める!」
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