4話 結成

 血を吸うかと聞かれた?自分の耳を疑った。目の前に吸血鬼がいて取る言動とは思えない。少女は恐ろしい程冷静で、何故か私が恐怖していた。


「血、吸わないんですか?」


 少女は立ち上がり首筋を見せながらこちらに近づいてくる。その瞳は輝いており、狂気的だった。私は震え思わず空に逃げてしまった。振り返ると少女はじっとこちらを見つめている。


「あの子、あそこにいたら危ないかもよ」


 そうだ、あの子は人間、こんな異変の真っ只中に1人でいたら。ケルベの一言に気付かされ私は少女の元に戻る。そもそも恐怖は私が感じる物ではないとも気付かされた。


「あー、さっきは逃げてごめんね。私は瑠奈。アナタは?」

「瑠奈さん?吸血鬼なのに人っぽい名前なんですね。あたしは光城可憐って言います。気安く、可憐とでも呼んでください」

(やばい、理性保つの辛くなる…)


 少女の血を飲みたくて仕方ない、私は飢えていた。


「ルーナちゃん♪いい事思いついた♪」

「その子、凄く可愛い~♪ペットですか?」

「誰が可愛いだ!このやり取り前にもやった気がするけど、ボクはケルベ。ルナちゃんの使い魔さ♪」


 2人の会話のスムーズさについて行けずただ聞いていた。いい事思いついたと言っていたが、その話に全く入る気配がない。


「ケルベ、いい事って何?」

「あぁ、そうそう。いや、この子ともチームを組めばいいんじゃ?ってさ♪」


 人間の子とチームを組む。どういう事かは私には理解出来なかった。


「だってさ、チーム組めばいつでも本当の力を出せるんだよ?」

「本当の力?あっ、人間の血を飲むって事ですねっ!なりましょう!是非!」


 少女は食い気味に賛成している。やっぱり狂気的で怖い。でも、この案は私にとっても都合がいい。


「よし、組もう。私が全力で可憐を守る。ケルベもね!」

「ありがとうございますっ!では早速…」

「待て待て、それだとストック出来んだろ。1回館に戻るぞ」


 その後、2人と1匹で喋りながら館へ戻った。久しぶりの女の子との会話は凄く楽しかった。


 館に戻りケルベが用意してくれた物は、採血キットと小瓶だった。


(ストックってそういう…)

「さ、2人共。早くして、異変は待ってくれないよ♪」


 とは言われても私は採血の仕方なんて知らない。適当に手に刺せばいいのか、それとも決まったところに刺すのか。


「あ、ここら辺を押さえながら刺してください。これでもあたし、看護系なんですよ♪」


 可憐に言われた通りに血管を押さえ血を取り、小瓶に小分けにして入れた。


「ルナちゃん、その服の腰回りに小瓶を入れとけるように作ってあるから、いつでも飲めるようにしといてよ♪」


 考えてみたら変だが、そんな事は気にせず小瓶を入れた。よし、これで今度こそ異変解決スタートだ。


「あっ、折角だしチーム名考えません?モチベーションも上がるかもしれませんし」

「おー、カレンちゃんいいね~。考えよ~♪よし…ここはビシッとルナちゃん、カッコイイの言ってみよ~♪」


 急な無茶振り、ケルベはいつもそうだった。私が悩んでる間、2人は息を止めてると思うぐらい静かだった。


「決めた…私達は…『ブラッティー・ドリームズ』さっ、ユカイに踊るよ!」

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