3話 異変

 意味がわからない。私がこの世界の異変を解決する。そもそも異変を解決して私が血を取り込める事に繋がるとは思えず呆然としていた。


「あっ、言葉不足だったかな?ボクを使い魔にするって事は、魔界と協力関係を持ってって事になるんだよ♪」


 更に意味がわからない。どうして魔界がこの世界の異変を解決したがるのか、第1に私はこの世界の事をまだほとんどわかっていない。狭い部屋に静けさが走る。私は色んな事がわからないまま、口を開いた。


「これからよろしく、知ってると思うけど私は紅月瑠奈。瑠奈って呼んでね♪」

「うん、ルナちゃんよろしく♪ボクはケルベ。魔界の番犬さ♪」


 何故、私はよろしくと言ったのだろう。ただ、何もわからないなら行動しよう。そう無意識に思っての行動だったのかもしれない。


「よし、そうと決まれば早速特訓だ!行くよ!」


 こうしていきなり始まった特訓。ただでさえ体を動かすのが得意ではないのに、あまりのハードさにもう半分の命を死んでしまうのではと思ってしまった。感情の抑制、爪は牙の鍛錬、飛行練習など、これだけならよかった。日が経つとこの練習を太陽の真下でする事になった。毎日死にそうになり、そんな中でもその日の疲れが消えるような癒しがあったから続けられた。それは…


「もふもふぅ~♪」


 ケルベをもふもふできる事だった。ふわふわな毛と温かさが命の支えだった。


 そんな日々は1ヶ月程続いて大事だがくだらない事に気づいた。私はこの世界に来てから何も口にしていない。意識するとお腹が空いてきた。


 そんな時だった。辺りが昼間だというのに、突然薄暗くなったのだ。顔を上げると太陽が陰陽にへと変えられていた。その陰から発せられる力はあまりに強大で、素人の私ですら身構える程の邪気。


「起きたね、異変。にしても初めて体験する異変がここまで強いものだとは…」


 ケルベでさえも怯える闇があっという間に周囲に広がっていく。


「部屋に行ってて、服用意してくる」


 そう言うとケルベは館へと入って行った。部屋に戻り待つ事数分、ケルベは服を背負って来てくれた。服は露出こそ少し多いが、全身動かしやすく、サイズもピッタリで、プロの仕事だと感動した。こうなったらとことんやってやる。館を飛び出し陰陽にへと向かう。ところで、


「ケルベ、この帽子何」

「あ~、それは日除けだよ♪」


 日除けになってないと思ったが、うまく言いくるめられた。


 突然、一筋の光が目の前に降ってきた。その光は森の泉を指し、まるで私に行けと言っているかのようだった。光の先に行くと女の子が眠っていた。人間の女の子が。本能的な何かなのか、よからぬ事を考えている私がいる。


「美味しそう…」


 自分自身が怖かった。泉を指していた光は、私を軽蔑するかのように消えていく。そんな事、今はお構いなしに少女に唾を飲み込みながら近づく。すると少女は目を覚ましこちらを見た。私は固まってしまった。その場の空気が泉の水を凍らせる程、冷たい静寂に包まれる。静かに少女は口を動かした。


「もしかして吸血鬼様ですか?」

(吸血鬼様…様?)


 困惑した。まさか様と言うとは想像できるはずなく唖然としていた。続けて少女は口を動かす。


「あたしの血…吸います?」

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