2話 通告
一瞬、自分の耳を疑った。そこには誰の姿もなかったのだ。辺りを見渡しても誰もいない。
「違う違う。こっちこっち~♪」
今度は上から声がする。だが、見上げても
何もいない。見えた物は無数に広がる宝石と赤く染った満月だけだった。その月はまるで私を歓迎しているかのように真っ赤に輝いていた。暫く眺め目線を戻すと声の主だろうか、その小さな姿が私の瞳に映った。子犬だろうか、それにしても小さく何というか、
「可愛い…」
思わず私は呟いていた。
「誰が可愛いだ!まぁいいや、そんな事より吸血鬼になった気分はどうだい?」
「もう最高!今まで以上に『生きてる』って感じ!」
「そう…ルナちゃんはもう…『死んでる』のに」
私にはこの言葉の意味が理解できなかった。死んでいる、けど陽の光に触れた時の燃えるような痛みは本物だったし、熱いとか冷たいとかの感覚もあった。理解できないというよりも信じられなかったのだ。周囲を凍えるような静寂が包み込む。
「私が…死んでる…?嘘だ、私を騙そうとしてる!」
無意識だった。気が動転したのだろうか、牙を剥き爪を立て目の前の生き物に飛びかかろうとしている私がいる。それを冷静に見つめる瞳は、真っ直ぐで暖かかった。
「落ち着いてよ♪話を最後まで聞いてから襲ってよ。まぁ、大人しくは襲われないけど♪」
そんな事を言われても抑える力なんかは私にはなく、鋭い爪を向け襲いかかった。
「全く、元気な蝙蝠ちゃんだな。手荒な事はしたくないけど」
子犬は黒いオーラを放ち、姿を変えた。その姿は禍々しく荒々しい、猛獣のそのものだった。何より恐ろしいのは、その獣には首が3つあったのだ。獣は襲いかかる私を避け左手に噛み付いた。するとたちまち睡魔に見舞われ、深い眠りの底に落とされた。
意識が戻り目を開けると、部屋のベッドにいた。部屋は薄暗いが豪華な部屋だった。膝には子犬がいた。
「目を覚ましたんだね、早速だけど黙って聞いて欲しい。君は正確には半分『死んでる』んだよ。半分は『生きてる』吸血鬼。ルナちゃん、君が全部生きてられるのは、人間の血を取り込んでから一時的になんだ。そこで…」
子犬がまた獣に変わりこう続けた。
「ボクを使い魔にして、この世界で度々起きる異変を解決しよう」
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