1章 異世界にて吸血鬼デビュー
1話 異界
目を開けるとそこは暗い森の中だった。偶然にも助かったのだろうか。私は起き上がり明るい方へと向かった。
「熱っ!痛い!」
陽の光に照らされた瞬間、触れた部分が火傷のような痛みに襲われた。起き上がって気づいたが、背中辺りが奇妙に重い。恐る恐る手を伸ばしてみると、何やら固い物に手が触れた。それどころか、その物にも触られた感覚がある。背中に力を込めるとバザバサと音を立て、風が吹いた。森の音が静まり返る、そんな雰囲気に押し潰されそうになる。ふと、気を失う前に見た蝙蝠を思い出し私は悟った。
「私…吸血鬼になったんだ」
そう考えると、陽に照らされた時の痛みにも説明が着いた。あの蝙蝠は少し先の私を見ていたんだ。何故私はこんなに落ち着いていられるのだろうか、理由は単純だった。そんな事よりも1つの感情が強かったからだ。
「眠たい」
蝙蝠だからだろうか、地面に寝転がるとすぐに眠りに着いた。この時頬を撫でる風は、どこか渇いていた。
目が覚めると、辺りは更に暗くなっていた。痛みを感じず、寧ろ力が湧いてくる。そうだ、折角だ。私は背中に力を入れ夜空に溶けていった。最初は何度も木にぶつかりそうになったが、暫くすると、夜を生きる蝙蝠そのものになれていた。夜の風は冷たくどこか優しい。そんな事を考えていると正面から声がした。
「ルーナちゃん。お迎えに来たよ♪」
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