第16話 娘
俺が先輩に絡んだ不良にボッコボコにさて病院送りになり、1日経過した。
月曜日に検査して骨が折れて無く、体も回復していたので明日には帰れると思う。
退院日は明日、つまり平日の火曜日だ。
学校を頑張らないといけない。
1日は休んでしまったのではっきり言って時間や単位が勿体無いから。
「.....」
俺が入院している病院の夜の病室。
夜の外を見ながら今日も来てくれた優ちゃんの昨日の言葉を思い返していた。
赤面で俺を見下ろしながら話した言葉を。
『君の事.....好きになっちゃった』
「.....信じられないな」
何だろうか。
こんな俺がモテるなんて有り得ないよな。
義妹に好かれ、幼馴染に告白され、先輩に告白され。
本当に心から幸せだなと思ったりもする。
付き合いたいと思ったりもするのだが、付き合おうと思って考えると耳の奥に高速道路のクラッシュの音がする。
嫌な音で肉が潰れた様な音がして、このせいで俺は多分、暫くは女の子とは付き合えないだろう。
その様な運命なのだろうな。
「.....まぁ.....疲れてんだろうな。PTSDっつーか」
今はとにかく普通で居よう。
その様に思いながら、俺は夜の空を見続ける。
この空の何処かには母さんの星でも有るのだろうか?
「.....うん、寝るか」
間も無く20時だ。
21時には病院の規則で強制的に寝ないといけない。
まだちょっと痛みが有る方向を向かず、寝る。
取り敢えずは明日かな。
☆
病院側に俺は見送られ、午後に退院した。
学校が早く終わった、蕾、一歩、優ちゃん、三宝さん、などが俺を迎えに来て。
俺は複雑な思いを抱きながら車に乗って自宅に帰ってくる。
一歩が玄関を開けてくれ、俺は家の中に入った。
横に居る一歩が目頭に滲んだ涙を拭う。
「でも良かった。おに.....和幸が無事で」
「.....ああ」
またお兄ちゃんと言おうとしたなコイツ。
しかし良く考えてもそうだな。
無事で良かった。
不良の本気のフルボッコだったからな。
傷だらけだったから。
俺はその様に思いながら、ウンウンと思う。
「でも本当に.....和幸。私.....本当に心配したんだからね」
「.....ああ。分かってる」
「.....本当に分かってる?」
「!」
よく見ると振り向いた一歩は泣いていた。
涙を必死に拭う一歩に俺はヨシヨシしながら複雑な顔付きをする。
それから、真剣な顔をした。
「.....分かってる。本当に感謝してるから。もうそんな目に遭わない」
「.....うん」
一歩は涙を必死に拭って俺を見てくる。
これでまた何か迷惑を掛けたら一歩は.....自殺するだろうな。
そんな感じだ。
俺は頭を下げるしか無かった。
「.....すまん.....」
「本当に本当にお願いだから無茶はしないで。私が心配するから.....」
俺達はリビングに入る。
そして俺は椅子に腰掛けた。
一歩は俺の目の前に腰掛ける。
すると財布を持って入って来た三宝さんが俺達を見つつ、和かに話した。
「.....紅茶飲む?」
「はい」
「お願い。お母さん」
俺は三宝さんと一歩を見ながら、複雑な心境を抱く。
そして目を閉じて開いた。
絶対にもう二度と危険な目に遭わない様にしよう、と。
「で、話が変わるけど.....」
「.....ああ。どうした?」
「蕾さんに告白されたんだよね?和幸.....?」
「.....」
ちょ、何でそれを知っているんだ?
俺は冷や汗をブワッとかいて、そして一歩を見る。
ニッコリしている。
背後になんか、見える。
黒いオーラが。
「えっとな、告られてないぞ」
「嘘ばっかり。私に何でそんな嘘を吐くの?蕾さんは私が.....」
メラメラ対抗心を燃やしている、一歩は。
ハッとして赤面した。
一体、何やねん。
俺はその様に思いつつ一歩を見る。
「.....と、とにかく!私は.....蕾さんの告白を知っているの!蕾さんの様子を見たらイチコロだよ。私」
「.....あー.....」
なるほど。
俺はその様に思いつつ、蕾め、と思った。
取り敢えず、弁解しないと。
「.....あと.....もしかして先輩からも告白されたでしょ」
「.....」
「あー!やっぱり!!」
何でだよ。
俺はその様に思いながら、冷や汗を流した。
顔はもう猛烈な汗まみれだ。
勘弁してくれ。
「.....はい」
「.....おに.....和幸の性格だから.....多分と思ったけど!」
「す、すまない」
和幸は優しすぎるんだから!
その様にプンスカ言う、一歩と俺達の前にあったかい紅茶が。
俺は会釈をする。
すると、横に三宝さんが腰掛けて俺にニヤニヤした。
「恋物語?」
「いや、違います」
「ち、違うから!私が和幸を好きなんだから!.....あ」
それは、一歩のとんでもない告白だった。
三宝さんが驚愕する。
真っ赤の真っ赤に赤面する、一歩。
やっぱコイツ、俺の事が好きだったのね。
「違うから!私、和幸なんか好きじゃないんだから!」
「.....いや、もう無理だと思うぞそれは.....」
「あらあら。青春ねぇ」
収拾がつかないっす。
俺はその様に困惑しながら、赤面した。
と、思っていると。
ピンポーン
「あら?宅配便かしら?」
インターフォンが鳴った。
そんな中で俺達はギャイギャイ騒いでいると。
「和幸ー。貴方にお客さんよ」
「.....あ、マジすか」
その様に言われたので、リビングのドアを開けて表に出る。
そして、目の前を見ると。
「でも、お客さんって言っても.....和.....の娘って言っているんだけど.....」
「.....はい?」
俺は三宝さんの言葉に目をパチクリした。
よく見ると前に、とても可愛い童顔の小学生が立っている。
赤いランドセルに、キャラモノデザインの様なTシャツに、短パン。
小学生女児。
今何つった?三宝さんは。
と、思っていると、その女児が俺を見て目を輝かせた。
「あ!パパ!」
「.....!?!?!」
目の前の女児は俺に抱きついてくる。
ちょ、何?意味が分からない。
ごめん俺の頭が狂ったのか?
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