第15話 えっと、私、君の事が
「何処に行くの?」
俺が抜き足差し足で玄関まで歩いていると突然背後から声を掛けられた。
驚愕しながら背後を見ると目をパチクリしている一歩が。
俺は顔を引き攣らせながら、一歩に向く。
「.....えっとな、ちょっと遊びに行って来る。悠平とな」
「.....ふーん。でも何だろう。和幸からかなり女の匂いがする.....」
何ちゅう感の鋭さや。
俺はその様に思いながら、冷や汗を流す。
ジト目の一歩。
「.....でも、大丈夫かな。うん」
「.....お、おう」
「.....何?私も付いて行った方が良いの?」
いや、困る。
それはデートになら.....じゃ無くて。
デートじゃねぇけど。
いや、デートか。
デッドアライブ?的な。
「.....じゃあ行って来るからな。少し遅れるかも知れん。帰るの」
「ふーん。行ってらっしゃい」
怪しいという目をしながら俺は見送られながら、外に出る。
て言うか、マジで心臓が止まるか思った。
☆
「.....」
約束の時間まであと1時間は有る。
少し早く来すぎたかな。
先輩とデートとかマジで楽しみで仕方が無くて、だ。
俺は心臓を整える。
「.....落ち着け」
「あれ?山本くん?」
「.....あ!」
先輩がやって来た。
その服装は帽子に、メガネ、Tシャツの様な服に、パンツ、上着。
俺は驚愕して、見開く。
まさかだ、約束の1時間前なのにか!?
メガネを外す、先輩。
「.....やけに早いね?もしかして私.....遅れちゃった?」
「いや!そんな事は.....!」
「あ、もしかして楽しみだったり?」
「いや、そんな事は!」
いやいやいや。
俺はそれしか言えねぇのかよ。
その様に俺自身にツッコミながら涙を流す。
すると、先輩は?を浮かべながらも。
優しく笑んだ。
「じゃあ、行こうか」
「はい.....」
いや、まさかこんな事になるとは。
俺が好きな、とても可愛い人気グラビアアイドルとデートなんて。
マジでデッドアライブだな。
☆
「手を繋ぐ?」
「いえ!恐れ入ります!」
街中で俺は首を振る。
すると、困惑した様子を見せる先輩。
そして首を横に振る。
「えー?でもデートにならないよ?君を大切にする女の子と付き合い出したら.....女の子の望みは叶えてあげて」
「.....クゥ」
「?」
先輩の目がパチパチとなる。
クゥ!俺とした事が!先輩を困らせるなんて.....駄目だ!
くそう!上手くいかねぇ!
クソッタレ!
「じゃあ、恋人繋ぎは?」
「.....は、はい!」
胸が幸せです。
俺はその様に思いながら、ノホホンとした。
そして、歩いていると。
「きゃ!」
「.....!?」
帽子が飛んで行った。
漫画みたいな感じで俺はビックリしながら、追い掛ける。
まさかの側の木の上の方に引っかかり。
俺は走る。
「あ、危ないよ!」
先輩が叫ぶ。
俺はそれを無視して、人目も気にせず木に登る。
そして帽子を必死に取って。
下に飛び降りた。
「.....先輩の帽子なんですから。大切な帽子なんですからね」
「.....あ、有難う.....」
フッ、格好イイ所を見せれたかな?
俺はその様に思いながら、少しだけ赤くなっている先輩に向いた。
先輩は本当に嬉しそうだ。
「.....本当に有難う。これ、おばあちゃんから貰った帽子だから.....」
「.....そうだったんですね」
俺はその様に相槌を打つ。
先輩は懐かしいなぁ、なんて呟きながら涙を浮かべていた。
亡くなってしまったのだろうな。
「.....先輩。大丈夫ですか?」
「.....うん。大丈夫だよ。心配有難う」
「.....」
「うふふ。そんなに必死に優しくしてくれているのは.....君が初めてだね」
先輩は、はにかんだ。
俺はその姿に少しだけ笑みながら。
暫く立っていた。
☆
「あの茶色の子、ミニチュアピンシャーって言うんだね。可愛かったな」
「.....先輩は可愛いもの好きですか?」
「.....そうだね。ぬいぐるみとか好きだね」
俺達はペットショップに立ち寄ってから。
ショッピングモールに向かおうとしていた。
まぁ、小さいけど。
「.....」
思いながら、歩いていると。
先輩が横に居なかった。
俺は驚愕して、背後を見る。
先輩が何か、男達に囲まれていた。
「お前さ、さっきから見ていたけど、グラビアアイドルの優じゃね?」
「そーそー。可愛いよね。ホテル行かね?」
「えっと.....」
俺を見てくる、先輩。
直ぐに俺は眉を寄せて、歩いて行く。
この側に彼氏が居るってのにコイツら。
「オイ!」
すると、目線がこっちに向いてきた。
俺はビクッとする。
「あぁ?」
「ああ、そういや忘れていたけど、コイツ、さっきから居たけど、この女の彼氏かな?」
「マジで?.....〆るか?」
何だコイツら!
よく見たらガタイが良すぎんだろ。
周りを見渡したが、人通りの無い場所を狙った様だ。
全く人が通らない。
クソめ。
「何やってんだ?なんか言えコラ!」
容赦無い膝蹴りが飛んできた。
俺はまさかの事に、俺は見開いて唾を吐き出して踞る。
なんだくそう!
「アハハ!ウゼェ!なっさけねぇ!」
勢いに乗ったのか。
ドカドカと俺をゴミの様に思いっきり蹴飛ばしてくる。
鼻血が、口が切れた。
金髪とかイヤリングとかした奴らに。
クソ!なんで俺は弱いんだ!
「お前の様な軟弱な野郎が甘ったれんな!」
「止めて下さい!」
その時だった。
いきなり、ウーッとサイレンの様な音が。
俺は蹴られながら、見開く。
そして一瞬の隙をついて立ち上がった。
それから先輩の手を握る。
青ざめている、先輩の手を。
「何やってんだ君達!」
青い制服を着たガタイが更に良い、男二人が白黒のパトカーから降りてこっちに駆け出して来る。
不良どもは驚愕していた。
「ポリ公じゃねーか!何でだ!」
「くそ!人通りが少ない筈なのに!」
俺は腫れた目で確認する。
誰かが駆け出して行く姿が見えた。
俺は出血を抑えながら、先輩を見る。
先輩はハンカチを取り出して俺を見て来る。
「ごめん!ご.....ごめんなさい.....!何も出来なかった.....!」
そんな先輩を。
俺は抱きしめた。
そしてただ、その一言を呟く。
「先輩が無事なら何でも良いです」
「.....や、山本くん?」
そんな恥ずかしい事をしている癖にその後の記憶が無い。
俺はその場で情けないが、気絶した様だった。
本当にゴミだな、マジで。
☆
「.....」
ゆっくりと目を開けると。
包帯が頭に巻かれ多感じを受けて。
何か白い天井が見えた。
「.....ここは.....」
「病院だよ!和幸!」
一歩が涙目で俺を見ていた。
よく見ると、悠平や蕾、先輩まで居る。
俺は良かったと思った。
先輩が無事だったから、だ。
「良かった!本当に良かった.....!」
「信じていたがな。良かった.....和」
「.....ウンウン!」
俺達に駆け寄って来る、みんな。
三宝さんまで居た。
病院か。
迷惑を掛けてしまった。
「じゃあ、私.....看護師さん呼んでくる!」
「私も.....」
「俺は飲み物を買ってこよう」
その様にして、全員が慌てて去って行く。
そして、三宝さんも電話してきます。優さん宜しくお願いします。
と言って、去って行った。
残されたのは、俺と先輩だ。
「.....すいません。先輩。血液が.....抱きしめた時に付かなかったすか?」
「.....そんな事気にしないで良いのに」
「.....いやいや。大切な先輩の服に血液なんぞ。汚れます」
「何言っているの?」
次の瞬間。
俺の体にフワッと良い香りがした。
気が付くと、俺を先輩が抱きしめて。
そして涙を流していた。
号泣している。
「.....本当に.....良かった!心配していたんだから!」
「.....すいません.....」
そして、俺をジッと見てくる先輩。
本当にジッと見てきている。
えっと、間近で見られるとちょっと恥ずいんですが。
俺はその様に思いながら、目を少し外した。
すると。
「お礼だよ」
「え?」
俺の頬に先輩がキスをして。
そして俺を真っ赤な顔で見てきた。
ゆっくりとその言葉を出してきながら。
「えっと.....私、君の事が.....本当に好きになっちゃったみたい」
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