第9話 ドキドキ

学校で俺は蕾のせいでとんだ、とばっちりを受けて。

そしてクラスメイトに生ゴミ扱いされながら、放課後になった。

って言うか、ちょっと待て。

どういう事だ?俺の家で2日生活って、俺は何も聞いていないぞマジで。

そして一歩も恐らく何も聞いていない。

因みに、一連の騒ぎで悠平は


『裏切り者は知らん』


とヅカヅカ帰って行きやがった。

あの野郎め。

俺はその様に頭に手を添えて思いながら。

北高から帰って来ると思われる、蕾を待つ。

横では居なくても良いのに、一歩が居た。

何やってんだコイツ。


「何でお前が居るんだ?」


「はあ?私が居たら駄目な訳?お弁当のお礼よ」


「別に居ても良いけどよ.....」


いや、良いんだけど、何か嫌な予感しかしないんだが。

どうしたら良いのだ?これ。

俺はその様に思っていると、目の前に蕾が現れた。


「やっはろー」


「はいはい」


やっはろーって何処のビッチ高校生だお前は。

面倒だから八幡を連れてくるぞお前。

俺はその様に思いつつ、蕾を見る。

蕾はニコニコしながら俺を見上げてきた。


「じゃあ、帰ろう。和幸の家に」


「そうだ.....な」


「.....何で家に来るんですか?」


「あ、話して無かったかな?私、2日だけだけど和幸と一歩ちゃんの家に泊まるよ」


いや、ど直球だな。

俺はその様に思いつつ苦笑しながら一歩を見ると。

は?と動きが止まっていた。

正確には氷河期に凍りついたマンモス的な感じで。


「.....あれ?何で動きが止まるの?一歩ちゃん」


「お前.....」


???を浮かべる、蕾。

駄目だこのバーさん。

俺はその様に考えながら頭に手を添えてため息を盛大に吐いた。



午後5時。

帰って来たらあっという間にその時間になった。

俺は時計を見ながら、風呂でも入るかと思い立ち上がる。

言い忘れていたが、俺は帰宅部生だ。

当たり前だけどな。


「.....あ、風呂入るの?和幸。私も一緒に良い?」


「ちょ!?」


「えー駄目?」


俺は思いっきり赤面する。

その時だ、駄目に決まっているですよ!

ツッコミを入れながら、一歩が蕾を止めた。


「男女の若い高校生が一緒に入ってどうするんですか!」


「えー。でも和幸とは昔からの仲.....」


「駄目です!!」


真っ赤になりながら必死に蕾を止める、一歩。

今回は一歩にマジで賛成です。

いや、何処がとは言いませんが何処かがイカれると思うので。


「じゃあ、今回は止めて、明日一緒に入ろうか。和幸」


「明日も駄目ぇ!!」


必死に蕾を止める、一歩。

この状況が2日も続くのかよ。

俺は頭に手を添えて、そして再び盛大にため息を吐く。


「とにかく、俺は風呂に入ってくるぞ!」


「はーい」


「は.....い.....」


疲れた、という感じで一歩は項垂れる。

うん、マジでお疲れ様。

俺は苦笑いを浮かべながら、風呂場に向かった。



「和幸」


「何だ?」


午後6時30分ぐらい。

俺は風呂に入って、蕾が入って。

そして今現在、一歩が風呂に入っている中。

蕾が俺に向いてくる。

な、何だ?

って言うか、カチューシャを外した姿も可愛いなコイツ。


「.....うーん、やっぱり何だか不思議.....」


「何がや」


「和幸を見ていると.....なんだろう?不思議な気持ちになるの」


「.....あ?あぁ?」


アニメ雑誌を置きながら。

俺は蕾に向く。

蕾は首を傾げながら、俺をジッと見てくる。

てーか、あの、すいませんがそんなに見られると小っ恥ずかし。


「うーん?何だろう?」


「知らねぇよ.....」


すると、玄関が開いて。

ただいまと声がした。

どうやら、三宝さんが帰ってきた様だ。

俺は慌てて、三宝さんの所へ向かう。


「お帰りなさい」


「あら、和」


「お世話になってます」


「あらあら。蕾ちゃん」


三宝さんの目がクフフという感じの目をした。

そしてニヤニヤして話してくる。


「.....あらら、お邪魔だったかしら?」


「何も無いっすよ!!!」


「そうですよー」


いやらしい事なんて!無いっすからね!

俺はその様に突っ込みながら三宝さんを見た。



「「「「「頂きます」」」」」


その様に声掛けして俺達は飯を食う。

今日はどうやら、オムレツの様だ。

蕾と一歩が手伝っていた。


「.....このお料理、一歩と蕾ちゃんが手伝ってくれたんですよ。久さん」


「.....そうか」


相変わらず、険しい感じの親父。

俺はその事に少しだけ口角を上げながら観察する。

すると、横に腰掛けていた蕾が俺の肩を叩いた。


「.....和幸。美味しい?」


「.....あ?ああ。美味いぞ」


「うん。たっぷり愛情を込めたからね」


「..........私も居るんだけど.....」


分かってるよ。

よく出来てるからな、マジで。

と俺は必死に話す。


「あらあら。イチャイチャね」


「ちょっとお母さん!!」


「.....うむ」


イチャイチャじゃ無いってばよ。

俺は苦笑いを浮かべながら、みんなを見る。

いや、本当に。


「イチャイチャって何だっけ.....?」


「真面目に考えるなよ。蕾」


「うん?そうなの?」


そうです。

イチャイチャは覚えんで良い。

俺はその様にツッコミながら、飯を食べる。



「全く.....あ。そういやアイツにオタク趣味を教えないと.....」


自室にて俺はその様に呟く。

そして、教科書代わりのラノベを持って立ち上がる。

んで、外に出ようとしたら。

目の前に蕾が居た。


「.....お前、相当にビビったぞ。何やってんだ?」


「でも和幸。ノックしたよ?」


「.....そうか?すまん」


でもマジでビビったわ。

目の前にいきなり蕾って。

思っていると、蕾が俺を見上げてきた。

俺は赤くなる。


「うーん?何だろう?やっぱり和幸を見ていると.....モヤモヤする」


「.....何だそりゃ?」


「うん。胸が締め付けられるっていうか。何だろう?.....そう言えば、何処に行くの?」


「あ?ああ。えっとな、一歩の所だ」


一歩ちゃんの所?じゃあ私も、相談したい事が有るから。

と話す、蕾。

俺は、一緒に来るか?と言って親指を横にして示す。


「うん」


「じゃあ行くか」


んで、横の一歩の部屋をノックした。

すると、直ぐに反応が。


「はい」


「俺と.....蕾だ」


「.....何で蕾さんと一緒に居るの?」


「いや、さっき会ったんだよ」


ふーん、と言いながらドアが開いた。

そしてジト目で俺を見てくる。

見据えている。

何だコイツ?


「.....な、何だよ」


「べっつに?ふーん」


「お前な.....」


すると、蕾が穏やかに話し出した。

ニコニコしながら、である。


「.....入っても良い?」


「え?あ、はい」


「相談したい事が有ってね。女の子同士なら分かるかなって」


「.....?.....どんな相談ですか?」


えっとね、と言って俺にソッと寄り添う。

胸板に顔をくっ付けてくる様な。

まさかの事に俺は驚愕して。

目の前の一歩はファ!?と声を上げた。


「こんな事をすると何でか私、ドキドキするの。何でだと思う?」


「.....まさか.....和幸」


「は、はい」


「帰って」


何?帰って?

そして、蕾だけ室内に入って一歩の部屋のドアがバタンと閉められた。

いや、ちょっと待ってくれ、何だよこれ?

俺はその様に思いながらラノベを持って立ち尽くしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る