第7話 蕾&一歩

こうして。

親父に言ったら多分ぶっ飛ばされると思われる、極秘の学習が始まった。

俺のオタク趣味を義妹の一歩に教える。

女の子にアニメを教えるってそんな事はよく考えてみろ、お前、大変な事になるぞ。

何だか胃が痛いぞ。

どうしたら良いのやら。

俺達は俺の部屋に集まっていた。


「で、何からお前は学ぶんだ」


「.....何でも良いよ。私、大抵の事は知ってる。ラノベ、アニメ、漫画、グッズ、ゲーム。そんな感じでね」


「.....お前.....」


コイツマジか?

生徒会の成績優等生だった筈の一歩がこの有様って。

俺は頬を抓るが、現実の様ですね。


「何やってんの?アンタ。キモい」


「お前、そんな事言って.....お兄ちゃん大好きっ子なんだよな?それでオタク趣味を知りたいんだろ?」


「なっっっ!!?」


違うし!と言って。

一気に耳まで赤く染める、一歩。

俺は、これはしばらく使える、と思いながら。

座布団に座っている一歩にラノベを取り出した。

エッチじゃ無い、ラノベだ。


「これはな、俺のお気に入りのライトノベルだ。戦記物だけどな、気に入っている。灰と幻想のってヤツだ」


「確か、内容って.....あれだよね?何でこの場所で生きているのか分からないけど.....生きているってやつ」


「そうだな。.....お前本当に詳しいな」


「勉強したから」


やれやれ、これはあまり世話は必要無いかなと、俺はその様に思いながら一応に次々にラノベを取り出す。

エロ○ンガ先生、とある、S○Oとか。

あまり幅広いジャンルを読まないんだよな、俺。

高校生だから金が無いしよ。

だからカクヨムで無料のやつをよく読んでいる。


「.....とまあ、これらは俺が気に入っている作品だ。カクヨムで気に入っているのは.....最近、更新が無いけど、そらき、先生の作品だ」


「うん」


「恋愛物だけど、オススメするぞ」


「へー.....」


マジマジと作品を見つめる。

俺はそれを苦笑しながら見る。

すると一歩が、とある、を手に取った。


「面白いよね、これ。私はこれが好きかな」


「アク○ラレータとかヒーローの上条さんとかな」


「暗部編が私は好き」


「へぇ。俺もだよ」


え、そうなの?

と少しだけ嬉しそうに反応する、一歩。

俺も笑みを浮かべた。


「キ○ト君もカッコイイよね」


「そうだな。ヒーローって感じだ。上条が現代のヒーローで、キ○トは仮想世界のヒーローだ。でも現代でもヒーローだけどな」


「.....ふふっ。詳しいね。お兄ちゃん」


「.....あ!?」


お兄ちゃん!?

あ、と口を思いっきりに塞ぐ一歩。

そして真っ赤になった。


「和幸!変な妄想はしないで!」


「してねぇよ!!」


「全く。.....最低」


お前だ。

俺はその様に思いながら、一歩を見据える。

全く良く分からんコイツは。

その様に思って、時計を見る。

時刻は23時になっていた。


「あ、早く寝ないと.....」


「そうだな。早く寝よう」


その様にお互いに思ってから、一歩は立ち上がる。

そして俺に向いてきた。


「.....ね、お気に入りの小説を貸して」


「勝手に持って行け。俺は読んだからな」


「うん」


一歩は嬉しそうに灰と幻想の、の小説を持って行く。

俺はそれを見ながら、出て行く一歩に手を上げる。

そしてベッドに倒れる。


「ブラコンってのは分からんなぁ」


その様に呟いて、俺は瞼を閉じた。

そして遂には寝てしま.....



「和幸」


「.....」


「和幸。起きて」


「.....?」


朝の日差しが差し込む様な、俺の自室。

そういや、アニメグッズを片すの忘れてたわ。

と思いながら、目の前を見る。

ボーッとする視界には一歩が居る様な、と思ったが、そこに居たのは。

黄色のカチューシャを頭に着けた、ボブの制服姿の女の子が居た。

鞄を持って、ニコッと笑みを浮かべている。


「.....な、ちょ、蕾!?」


「そうだよー。おはよう和幸。起こしに来たよ」


「何やって.....こんな朝から!?お前、貧血とか有っただろ!大丈夫なのか?」


「優しいね。和幸。そういう所も」


ほらほら、起きて。

学校遅刻するよ?と蕾は言う。

俺は背中を押されながら、驚愕しつつ、自室のドアを開けた。

そこには。


「.....何やってんだ?一歩」


「べ、別に!?私が起こし.....いや!別に!?」


一歩はさっさと去って行った。

俺は?を浮かべつつ、蕾を見る。

蕾は昔と変わらず、にへー。

という様な、おばあちゃんの様な優しげな笑みを浮かべている。


「.....和幸。早く、ほらほら。もう7時20分だよ?」


「何!?7時20分!?」


「そ。ギリギリまで寝せてたけどね」


俺は背中を押されながら、階段を降りてそして準備を始めた。

制服を渡して来たりして蕾は優しさMAXだ。

俺は懐かしみながら、準備をする。



「.....山本さん。お久しぶりです」


「うむ」


蕾は厳つい親父にご飯をご馳走になりながら挨拶をする。

その光景を見ながら、俺も飯を.....って。

何か視線を感じる。


「.....何だよ。一歩」


「別に!?」


「.....」


怒り気味の一歩。

俺は盛大にため息を吐いてそして飯をかきこむ。

面倒臭い事になりそうだな、マジで。

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